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評価:
奥田 英朗
幻冬舎
¥ 1,836
(2014-11-11)
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分厚さに辟易して後回しにしていたのだけれど、読み終えた後もっと早く読めば良かったと直木賞作家の底力を強く感じた次第である。
第1章が犯行前、第2章が犯行後という斬新な物語の構成自体に趣向が凝らされていて新鮮な気持ちで読書に取り組むことが出来ます。いわば新しいジャンルの犯罪サスペンスと言ったら良いのでしょうか。読者サイドも3人目の共犯者として物語の中に参加しているような気がします。
そこにはやはり殺人というよりも排除という言葉が当てはまるのでしょう。どうしても殺人に至った動機自体が読者サイドにも深い理解というか同情を促すところが心憎いと言ったら言い過ぎでしょうか。
後半に連れて気の弱い方のカナコの方が新しい生命が宿ったということも含めて逞しくなって、逆にナオミの方が気弱になってゆくところが微笑ましく2人の友情の強さを感じとることが出来ました。これは他の犯罪小説では味わえないほのぼの感だと思います。
特筆すべき点は2人の個性的な脇役の存在ですね。ひとりは殺害された夫の妹である陽子で、普通は当たり前のことをしてカナコを追い詰めてくるのですが、読者にとっては煩わしい存在となってきます。もう一人は中国人社長の朱美で最初の印象が最悪だったのですが、最後は2人の味方となって頼もしい存在の象徴となります。
映像化してもとっても面白いと思いますが、文章でこのような緊張感を持続できるのはやはり並の作家ではありません。楽しく読めること請け合いの一冊だと言えそうです。
評価9点。