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評価:
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KADOKAWA / 角川書店
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(2012-10-01)
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河合祥一郎訳。氏の訳されたものは舞台を念頭に置いて書かれているので、生き生きとした言葉が使われていて、頗る快適な読み応えを約束してくれるのが嬉しい限りである。
以前読んだ原書も訳本(新潮文庫版)を片手だったけど、良くも悪くももっと重厚で悲劇はともかく喜劇は馴染みにくかった記憶がある。
四大悲劇が有名なシェイクスピアであるが、個人的には本作も含めた喜劇(といっても4〜5作品しか読んだことがないけれど)群の方が楽しく読めると感じる。
ただ本作は喜劇のジャンルに入るのであろうが厳密に言えば喜劇でもあり悲劇でもあってそこが本作の魅力へと繋がっていると感じる。
舞台はイタリアのヴェニス、ラブストーリーを交えた法廷劇が繰り広げられます。
本作が書かれたのは1597年頃、キリスト教中心に回っていたエリザベス朝時代の風潮が如実に表れていて、現代人にとっては受け止め方が違ってくるのは致しかたがないところであろう。本作におけるユダヤ人シャイロックの取り扱われ方というか読者の受け止め方は400年の間、かなり変わったと信じたい。これは現代読者にとっては教訓的な話となっていると感じる。
逆にもうひとりの個性的キャラであるポーシャは本当にシェイクスピアの生み出した素敵な才女と言え、彼女の下した判決は素晴らしいと言えよう。指輪に関するエピソードがいつまでも脳裡に焼き付いて離れないのであるが、シャイロックに対する受け止め方とは対照的に今も昔も男たちとはこんなものであることは認めざるを得ません(笑)
男たちが不甲斐ないとゆうよりも滑稽であるのが本作のもっとも現代にも通じる普遍性を貫いた部分であろう。一度舞台で見たい胸のすく作品でもあります。
評価8点。