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評価:
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講談社
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(2012-09-28)
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第51回江戸川乱歩賞受賞作
『刑事のまなざし』以来2冊目の薬丸作品を手にしたが、さすが代表作と言える前評判通り素晴らしい作品だと感じ、正直なところもっと早く手に取るべきだったと思っている。
コーヒーショップを営む主人公桧山の妻祥子が4年前に殺されましたが、犯人は中学生の3人組ということで少年法が適用、逮捕ではなく補導ということです。
少年法という難しい題材にチャレンジした社会派ミステリーということですが、内容自体若干重苦しいけれど歯切れの良い文章と練り込まれたプロットに捲るページが止まりません
主人公桧山のシングルファーザーぶり、言い換えれば亡き妻と彼女の生き写しである愛娘への愛情が全編を通して貫き通されているところが感動的で一気に読めます。
どうして妻が殺されたのかという妻の過去を中心として、ミステリー的に楽しめるという要素以外にこの作品の成功した点のひとつの要因として、加害者側にも被害者側にもどちらにもつかないというか、裏返せばどちらの擁護も平等に読者に納得のいくレベルでなされている点があげられると思います。
それは物語の核心にも触れることなのであまる深く触れると興趣をそぐことにもなるので割愛したいけれど、人間にとっていかに辛い過去を断ち切ることが難しいことか、そして正義感を持ってい生きることが理不尽であることの社会への訴えを作者から感じ取りました。誰しも心にナイフを携えているのかもしれません。
本作を読むきっかけとなったWOWOWでの連ドラ化に感謝したい、読んでから観るか、観てから読むか。まるで映画の宣伝文句のようですね(笑)
作者の作品、評判の良い『友罪』や『神の子』あたり早速押さえたいなと思っています。
評価9点。