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『紺碧の果てを見よ』 須賀しのぶ(新潮社)
評価:
須賀 しのぶ
新潮社
¥ 2,484
(2014-12-18)

初出「新潮ケータイDX」加筆修正あり。作者の作品は初めて読みますが凄く可能性を感じさせる作品でした。
本作が刊行されたのは昨年の12月ということで、今年戦後70年ということでラッシュのように上梓された戦争物がいわば、戦争の悍ましさを描き戦争の知らない大多数の読者たちに二度と繰り返してはいけないということと、今の日本の平和はお国のために命を捧げてくれた人たちのおかげであるということを強く知らしめてくれた作品群が私の知るところではほとんどであった。本作はこれらの作品とは趣が違っていて、戦争を舞台としたドラマという感じで描かれていてそこが斬新に感じたのである。

舞台が戦争時であるが主人公を中心と群像劇的な作品に仕上がっており、現代との対比やタイムスリップものでもなく、直球的な作品で勝負しているところがなんとも清々しく感じる。
海軍に入った兄鷹志とと彫刻家を目指した妹雪子の2人の兄妹の愛情が全編を通して貫かれ描かれていて、読み手によっては戦況の部分がやや退屈と感じるかもしれないけれど、他の戦争を題材にした作品は戦争が青春を奪ったというカラーで描かれているものが大半ですが、戦争は悲しいものだけれど戦争を通して愛をより育んだこと、すなわち人間ドラマとして本作を描いていると感じます。

本作では戦争に青春と夢を託した人たちを描き切っていて、もちろん死も多いけど決して悲惨さだけでなく精一杯生き切ったという世界が素敵です。やはり女性作家ならではのキャラクター造詣が素晴らしく、雪子とは対照的な人物の早苗を鷹志の妻として据えたところが当時の健気に待つ立場の人物の描写として的確だったと思います。
読み終えた後に、雪子が兄にあてた手紙を読み返すとなんとも感慨深く、生きながらえた人たちが戦後どのように幸せを構築していったか、それを想像するだけで胸が熱くなる。

作者について少し記すと上智大学文学部史学科卒で、ライトノベル系作品を経て近年近現代史をテーマとした大作だけでなくスポーツ小説などいろんなジャンルの作品を上梓、スケールの大きな作品を今後ますます期待できる作家だと感じます。少しずつですが読み進めていきたいなと思っています。

評価8点。
posted by: トラキチ | 須賀しのぶ | 20:32 | comments(0) | trackbacks(0) |-