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『世界の果てのこどもたち』 中脇初枝 (講談社)
再々読。本屋大賞3位作品。惜しくも本屋大賞は受賞出来なかったけれど、後年読み継がれてゆくべき作品であると感じる。昨年戦後70年ということで戦争を題材とした作品が数多く上梓されたことは記憶に新しく、何冊か手に取ったけれどいずれも素晴らしい作品であった。その中にはタイムスリップものなどエンタメ性を駆使された作品もあり、それはそれで大いに読書が捗る要素ではあったのであるが、心を抉られるような読書体験は出来なかったのも事実である。

本作は他の戦争を題材とした作品とは一線を画し、真っ向から取り組んだ正統派作品であり、それゆえに本屋大賞にノミネートされた意義は大きかったと感じる。その理由はやはりフィクションなれど圧倒的にリアルな作品であり、教科書では教えてくれないことが詰まっているからだと感じる。作者の圧倒的な筆力に読者も情景を目に浮かべながら読むことを余儀なくされ、他の作品では味わえない読書体験ができるのは圧巻である。

本作の素晴らしい点は、戦争を側面的だけでなく大きく捉えている点であると感じる。子供に罪をないのはわかりきったことであるが、それにしてもおむすびを分け合うシーンが印象的というか非常に強烈で、まるで映画のワンシーンのようにいつまでも脳裡に焼き付いて離れないことであろう。
満州で知り合った3人の女の子たち、それぞれの人生は中国残留孤児となった珠子、人種差別を受ける美子、空襲で家族を失った茉梨と波乱万丈な人生を進んで行くのであるが、苦しいことがあっても友情に結ばれ、それを糧にして生きてゆく儚げな女の子たちに感動は禁じえない。

歴史を知ることは本当に難しいと感じる。本作は戦争の惨さだけでなく儚さを強調したところが素晴らしいと感じる。友情を育み、懸命に人生を生き抜いた人たちがメインとして描かれているけれど、生きながらえなかった人たちの印象も強く忍ばせている。
先日オバマ大統領が広島を訪問されたことが、再々読のきっかけとなった。本作は戦争の悲惨さと人を思いやるべきことの大切さの両方を謳っている。私たち現代に生きる人間は、今の幸せを噛み締めながら1日1日を大切に生きなければならない。

評価10点。
posted by: トラキチ | 中脇初枝 | 06:32 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『わたしをみつけて』 中脇初枝 (ポプラ社)
評価:
中脇初枝
ポプラ社
¥ 1,470
(2013-07-11)

再読。書き下ろし作品。本屋大賞第4位でいじめや虐待をモチーフとした『きみはいい子』も素晴らしい作品でしたが、本作は自分自身の居場所探しと医療現場の問題をクローズアップした長編作品として負けず劣らずの内容となっています。

舞台は前作同様横浜の桜ケ丘、主人公は生まれてすぐ産院前に捨てられた弥生、名前の由来は捨てられた月が三月だったからという悲惨な境遇ですが准看護師として一生懸命生きてきています。
児童養護施設についてはさほど描写はありませんが、他作家の作品よりはシビアで現実的なのがピリリと引き締まった緊張感を持った読書を余儀なくされます。
作中で2人のキーパーソンが登場、彼らの親身あふれる接し方、前向きな生き方が主人公に多大な影響を与えます、看護師長の藤堂さんと入院患者の菊地さんですね。主人公だけでなく2人の幸せをも願わずにはいられません。

作中での正看護師と准看護士との違いへのこだわりなどへの描写はリアルであり、医者と看護師との権限問題などは社会の象徴的な事柄だと感じました。
印象的なのは『きみはいい子』にて描かれた神田さんの再登場ですね。本作中においては脇役的存在ですが、主人公同様少し前を向いて生きて行くということを学んだようで胸をなで下ろした次第。
前作はいわば読者に問題提起をし何かを考えさせる作品でしたが、本作は“いい子”だった主人公の弥生や神田さんが、成長しひとつの方向性を示した作品であって感動度では前作以上のものを感じました。
これからも人生に向き合う作者の作品を愛読して行きたいなと思っています。

評価9点。
posted by: トラキチ | 中脇初枝 | 15:54 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『きみはいい子』 中脇初枝 (ポプラ社)
評価:
中脇 初枝
ポプラ社
¥ 1,470
(2012-05-17)

書き下ろし&本屋大賞ノミネート作品。児童虐待をテーマとした五編からなる連作短編集で舞台は横浜近くの桜が丘という町。
それぞれの物語の視点が変わって行くところが斬新であり、重いテーマながらもラストでは前向きな光を読者に届けてくれるので読後感が頗る良い作品だと言える。
虐待されている年代のお子さんを育児されている読者がいれば、身につまされて辛い描写もあるのであろうが、男性読者の私は社会問題的な作品と捉えて読み進めました、でも最終編はちょっと毛色が違っていました(続く)

ラストは老人介護にも言及した作品で、昔母に虐待された娘が中年となり、施設に入れられる直前に二日間ほど預かることとなる話。
今の認知症となった母と昔の虐待をしていた頃の母が交互に語られます。
他の編が親や第三者による描写だったのに対して、あんなに虐待されたのにと思いつつも自分の母親であることに変わりなく、放っておけないジレンマが伝わってきます。
私的にはやはり母親に対する愛情が希薄に感じたのですが、他の話が一貫して一筋の希望が描かれているのに対して何か宿題を突きつけられた気がしました。
そこに作者の凄さを感じたのだけど読み違えかな。子供を育てた女性の方の方が読解力に長けてるのでしょうね(笑)

本作は先月に坪田譲治文学賞を受賞している、個人的にはもっと大きな賞(本屋大賞)を取ってひとりでも多くの人に読んでもらいたい作品であると願っています。
そしてポプラ社の作品、本当に素晴らしい佳作が多くて、有意義な読書を約束してくれますよね。
そうそう、作者は高校生の時に坊ちゃん文学賞も受賞しています、受賞歴を見れば瀬尾まいこさんと同じ道を辿っています。
どちらも読みやすい文章と読者に心に響く作品を書きはる点で共通していますよね、中脇初枝さん追いかけて行きたいと思っています。

(読了日3月6日)

評価9点
posted by: トラキチ | 中脇初枝 | 12:22 | comments(0) | trackbacks(0) |-