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『純情エレジー』 豊島ミホ (新潮社)2009.05.15 Friday
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初出小説新潮6編、残り1編書下ろし。
全7編からなる官能的な部分を含んだ短編集。
たとえば他の豊島作品がたとえ男性読者であれ、一時女性の気持ちもわかるような気分にさせられる術でもって書かれていることが最大限の魅力であった、あくまでも個人的なことですが。
それは性別を超えた切なさやほろずっぱさ、そして夢を持つことの大切さ、青春の素晴らしさを体感できることができたからである。
本作はそういった意味合いにおいては、一男性読者の立場で言わせてもらえば、他の作品のように作品の素晴らしさを享受することはできないような気がするのである。
それはもう、逆に言わせていただければ“男子禁制”小説と言えそうである、ただし作者と同年代以下の男性ならまだ許容範囲かもしれませんね。
私的には自分の捉えれる感性を超えた部分を強く感じたのでやはり理解し辛かった作品である。
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『東京・地震・たんぽぽ』 豊島ミホ (集英社)2009.02.18 Wednesday
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東京に起こった地震をモチーフとした書下ろし短編集。
先日読んだ『ぽろぽろドール』と同じく、ちょっと奇妙なテイストの作品集だが、本作の方がひとつひとつの話の中で繋がりがある部分があって、それを見つけることを楽しみにして読める面もあって楽しいかもしれないなと思う。
ただ、そんなに感動的な話はなくどちらかと言えばビターな味わいのするところが予想通りというか予想に反してるというのか。
そこが豊島さんのいいところなんだろうけど。
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『ぽろぽろドール』 豊島ミホ (幻冬舎)2009.02.06 Friday
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パピルスに不定期連載されていた5編に書き下ろし1編を加えた人形をモチーフとした短編集。
ただしそれぞれの話に繋がりはない。
豊島さんの作品を久々に今回手にしたのであるが、やはり“今度はどういった話だろう”という期待感を持って読めるところは売れっ子作家のひとりとして認識されている賜物であろうと強く感じるのである。
ただし、本作に関すればちょっと個人的には人形自体に興味がないので(笑)、そんなに物語に入って行けなかったと言うのが正直なところ。
私自身は普遍性のあるストレートな物語の方が好きなんでしょうね。
それと作品の出来にやはりバラツキが感じられたのも少し残念だったかな。
特に言葉のしゃべれない人形に依存する登場人物には感情移入し辛かった。
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『檸檬のころ』 豊島ミホ (幻冬舎文庫)2009.02.06 Friday
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豊島さんの代表作と言われている本作。
今春に映画化されたが見れずにいて残念な思いをしていたのであるが、このたびDVDが発売。
その前に原作を復習ということで再読してみた。
再読してみて、再び誰かをいとおしく感じさせてくれた作者に感謝したいなと思う。
これからDVDを見られる方も是非原作も読まれて、より感動ひとしおの世界を堪能して欲しいと願ってやまない。
本作は下記の7編からなる連作短編集である。
×「タンポポのわたげみたいだね」
△「金子商店の夏」
○「ルパンとレモン」
×「ジュリエット・スター」
◎「ラブソング」
△「担任稼業」
◎「雪の降る町、春に散る花」
ちなみに印は映画化に際して取り入れられた内容の濃さをあらわしています。
(◎→○→△→×の順。×は全く取り入れられてません)
くしくも、私が初読の時に書いたよかった2編がメインの話となっているところは本当に嬉しいところである。
内容的にはほぼ原作に準じていると言っても差し支えないと思われます。
少なくとも作者の伝えたかったことが見事映像化されたと言えそうですね。
主な登場人物と演じている俳優(女優)名まで先に記させていただきます。
加代子・・・榮倉奈々
佐々木・・・柄本佑
恵・・・・・谷村美月
辻本・・・・林直次郎
西・・・・・石田法嗣
(ここからは単行本初読の再掲です。あしからず)(2006/05/08)
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『エバーグリーン』 豊島ミホ (双葉社)2009.02.06 Friday
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<豊島ミホお得意の普通で地味な若者を熱く描いている青春小説の決定版。>(2006/08/01)
注目している若手作家豊島ミホさんの待望の書き下ろし新刊。
舞台は雪の降り積もる地方の街。
主人公は中学3年生のシンとアヤコ。
第1章では中学校卒業の日に10年後の再会の約束をするまでが描かれている。
第2章以降は、その後別々の道を歩み始めた2人が、10年後に再会する予定の日の2カ月前からの心の動きが描かれる。
帯に“切なさにキュッとなる恋愛小説”とあるが、私はこの作品は恋愛小説の要素は極めて薄いと思う。
なぜなら別に恋人だったとかじゃなく、好きだと言い合ったわけでもなくただ単に、お互いが気になる存在だったのだから。
どちらかといえば青春小説のジャンルに分類すべきだと思う。
2人がお互いに持ち続けた10年間の想い、は青春時代しか味わうことが出来ないのである。
逆に言えば、好きなのに好きだと言えないほどシャイで純真な登場人物が眩しく感じるぐらいである。
本作は他の作家の恋愛小説のように、人を好きになる気持ちの大切さに力点を置いて描いたものではない。
それよりも自分のやりたいことや夢に向かってどのように生きているか。
そう、豊島ミホは読者と共に人生を模索できる作家なのである。
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『夜の朝顔』 豊島ミホ (集英社)2009.02.06 Friday
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『陽の子雨の子』に続く豊島さんの最新作は小学生を主人公とした少女の成長小説。
まるで竹内真さんの女性版ともいうべき圧巻の少女小説に仕上がっている。
ほとんどの読者は小学校の頃の思い出って中学・高校の頃のように細かいことは覚えてない方が多いであろう。
私もそうである。
ましてや、男性読者の私であるから本来、本作の世界は浦島太郎状態であるはずである。
事実、本作を読まれてもっとも効果的なのは、やはりセンリちゃんの年代のお子さんを持つ母親世代の方が読まれた場合であろうと想像できる。
だが、そこが豊島ミホ。
誰が読んでも楽しめるように書いているのである・・・
本作に収められている7編は小学校1年生〜6年生まで(4年生のみ2編、それ以外の学年は各1編)の主人公センリの成長振りを十分に楽しめる。
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『日傘のお兄さん』 豊島ミホ (新潮文庫)2009.02.06 Friday
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コミック本を読むような手軽い文章の中に潜む豊島ワールド。
本作は豊島さんの第2作目にあたる。
デビュー作『青空チェリー』は文庫化の際に大幅改稿されたが、本作はそのままの状態で文庫化して欲しいと言うのが私の切実な願いである。
4つの短編と表題作の中編1編との合計5編が収められているが、内容的にはバラエティに富んだ内容となっている。
根底に流れているのは“ピュア”な心。
強引に自分の中でのキーワードとして読んでみました。
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『陽の子雨の子』 豊島ミホ (講談社)2009.02.06 Friday
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豊島さんの作品はまだ全作読破していないのであるが、本作は作者の意欲作→今後の試金石的な作品と呼べそうだ。
作者本人のブログにて「ニート小説」とはしょられているが、そんな狭い括りでは表現できないと思う。
もちろん読む年代によって捉え方が違ってくるであろうが、私的には“自分探しの物語”であると捉えている。
というのは、誰しも登場人物の持っている希望や絶望感を少なからず抱えて生きているからに他ならない。
正直なところ、作者の現在の力量で言えばもっと無難な話を書いてしまえばよかったのでかもしれない。
もちろん『檸檬のころ』のような切なさを本作に求めようとしたらそれは酷であるのも確か。
作者はきっと現状に甘んじたくないのであろう。
試行錯誤を重ねて成長していくと信じ5年後・10年後を見据えたいと思う。
10年後に過去の作者を振り返ってみて、初期の代表作『檸檬のころ』とともに、ターニングポイントとなった作品であると本作は必ず取り上げられそうだ。
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『青空チェリー』 豊島ミホ (新潮文庫)2009.02.06 Friday
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新潮社主催のR-18文学賞の第1回読者賞を受賞しデビューした豊島ミホ。
本作は彼女のデビュー作の文庫版である。
とはいえ、全3編のうち原型をとどめているのは表題作のみ。
実際のところは“デビュー作1編プラス新作2編”。
豊島ミホの“出発点と原点を噛み締めれる”贅沢な作品集と言えるのである。
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豊島ミホさんについて。2009.01.28 Wednesday
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ごく一部の方はご存知かもしれないが、私がネット離れする直前に豊島ミホさんに嵌りだしたことがある。
どこが魅力なの?と問われれば、そうですね、時に瑞々しく時に甘酸っぱい青春小説が大好きだからと答えよう。
小説とドラマや映画との大きな違いは後者が演じる俳優(女優)に置き換えて観るのに対し(当たり前だが)、小説は自分に置き換えることが出来るのが大きな魅力だと言えよう。
それぞれの主人公の青春の1ページを切り取るのがとっても巧みだなと大いに共感した次第であるが、ネット離れして全然読んでなかったのである。
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