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『海の見える理髪店』 荻原浩 (集英社)
評価:
荻原 浩
集英社
¥ 1,512
(2016-03-25)

初出「小説すばる」、直木賞受賞作。6編からなる短編集で貫かれているのは人と人との繋がりの大切さ。
直木賞受賞作ということで期待して読んだんだけれど、『明日の記憶』のようなインパクトは感じず、後年作者の代表作として語り継がれるような作品とまでは言えず、個人的には佳作だという評価であり、どちらかと言えば今までの功績を評価しての受賞のように感じる。

とはいえ、表題作と最後の「成人式」は特筆すべき作品であり、全盛期(と言えば失礼だろうか)の浅田次郎を彷彿とさせる高いレベルの作品であると言え、読者に対して読んで良かったと思わせるのは流石であると言えよう。
表題作は店主が海辺の小さな町にある理髪店にやってきた青年に、自らの人生を語っていきます。予定調和的作品ですが非常にまとまりのある作品であると感じます。

「成人式」は15歳で事故で亡くなった愛娘への悲しみをずっと引きずって生きている夫婦が娘の成人式(生きていたら出たであろうという意味です)に二人で代わりに出ようとします。滑稽にも見えますが、あの時こうしてたら事故が防げたのにと思い続ける父親の気持が身に沁みます。式での娘の友達の協力的な反応が涙物であり、夫婦としての結束がより強固になったと感じられた読者が多かったと容易に想像できます。やられたーと思い本を閉じました。

評価8点
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 13:46 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『この世にたやすい仕事はない』 津村記久子 (日本経済新聞社)
評価:
津村 記久子
日本経済新聞出版社
¥ 1,728
(2015-10-16)

初出 日本経済新聞電子版。日経新聞に津村さんの小説と来れば、まさにお仕事小説の決定版と思われる方が大半だと思われますが、本作は半分当たっていて半分外れているというのが解答のような作品だと言える。
バリバリと働くOLが対象ではありません。燃え尽き症候群によりある職を辞した三十代半ばの女性が、風変わりというか読者がこんな仕事あったのかと思われるような仕事をこなすことによって自分らしさを取り戻して行く過程が読ませどころの作品ですが、それは通常の津村作品の定番ともいえる、個性的なれど等身大的なキャラの人物を描いているのではなくて、普通よりも悪く言えば精神的に弱いキャラの人物を描いている点が目新しく感じる。

それによりタイトル名ともなっている、“この世にたやすい仕事はない”という言葉がじーんと読者に伝わてくるような気がして、読者の常日頃持っている“労働観”が覆ったり、あるいは大きく変わったりするところが本作の一番魅力とも言えそうです。
基本的には、主人公が少なくとも全力かつ真面目にそれぞれの仕事に取り組んでいく姿を少しでも吸収して読むべき作品のように決定づけたいと思っている。

相談員でもある正門さんがとってもユニークであり、本作を読むきっかけともなったNHKでのドラマ化でどのように描かれているか楽しみである。

評価7点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 19:30 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『美しい距離』 山崎ナオコーラ (文藝春秋)
評価:
山崎 ナオコーラ
文藝春秋
¥ 1,458
(2016-07-11)

初出「文學界」。島静恋愛文学賞受賞作品であるが、恋愛小説というよりも夫婦小説と言った方が良さそうでいろいろなことを考えさせてくれるという作品であると言える。
老年期に入ってどちらかが癌に侵される夫婦は数多いであろうけれど、本作では侵されるのが40代の妻である点と夫婦の間に子供がいないという点が少し変わったシチュエーションだと言えます。
タイトル名となっている″距離”という言葉を念頭に置いて読むと色んな事を考えさせられ、読者自身の身の回りのことも想像された方も多いであろう。

語り手である夫は仕事をもセーブし、余命短い妻の介護に献身的になります。ある時は妻の母親や妻の仕事関係の人と距離を保ちながらというか、妻と自分以外の人との距離を調整してあげているようにも感じられます。
その妻を大切に思う気持ちが穏やかに書かれているのですが、その奥底に潜む葛藤している気持ちが読んでいて見え隠れします。妻サイドの痛みや苦しみはほとんど描かれてないだけに、逆にまだ若すぎるという気持ちが強く伝わって来ました。

そして娘に先立たれた義母の悲しみも伝わって来ます。現実はもっと生々しい話になるのでしょうが、落ち着け落ち着けと作者から教えられた気持です。読者にとって自分自身の夫婦関係の根本的な見直しや、自分の身の廻りの近い将来も含めての介護問題を見つめ直す指針となる一冊だと言えそうですね。

評価8点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 22:01 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『松田さんの181日』 平岡陽明 (文藝春秋)
評価:
平岡 陽明
文藝春秋
¥ 1,750
(2016-11-09)

オール讀物新人賞を受賞した表題作を含む6編からなる短編集で初読み作家です。人間というものの奥深さをよく観察し丹念に描いているといった印象で文章も読みやすい作家さんです。
表題作とラストが登場人物も繋がっていて(脚本家の寺ちゃんが出ます)どちらも余命短い人と周囲の人との暖かい繋がりを描いていて感動的な作品となっています。この作家の只者ではないところはそれ以外の4編も読ませるところだと感じます。夢を見ることと現実を見ることの大切さを謳っています。

とりわけレッスンプロゴルファーとゴルフ雑誌記者との交友を描いた「床屋とプロゴルファー」、リストラされる側とする側の悲哀を描いています。とりわけ首切りジョージという人の誠意ある行動には驚かされました。どの編も登場人物がキャラ立ちしていて適度にユーモアがありそして泣かせる話。作者のしっかりとした人生観と人間観察の鋭さが文章に乗り移った感が強く、他の作品も手に取ろうと思わずにいられない作家だと感じました。
  
評価8点
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 21:41 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『テミスの求刑』 大門剛明 (中央公論新社)
評価:
大門 剛明
中央公論新社
¥ 1,944
(2014-08-22)

WOWOWでドラマ化された作品で作者初読みです。警官であった父親が殺害された過去を持つ検察事務官の星利菜が主人公で彼女の目線が多少ふら付いたところがあるのが気になる読書となった。但し重厚感のある話ではないのでスラスラと読めるのも間違いのないところであろう。彼女に対する読者の感じ方が大きく読後感に関わってくるとも言えるのであるが、逆に脇を固める個性的な検事や弁護士たちに対して振り回されているようでにも感じられる。

というのも主人公にはどうしても父親の死という辛い過去があるにも関わらずその悲壮感が漂ってこないのだ。作者には滝川と深町をメインに据えた話があるそうですがやはり本作においては田島の存在感は絶大であろう。ストーリー自体は田島検事の逮捕など現実的にはありえないような話ではあるのだろうけれど、冤罪が深いテーマとなっているところはやはり目を背けてはならないところであり、ラスト近くの法廷シーンはかなり読み応えがあって二転三転するところがとってもスリリングである。主人公が弁護士に接触し過ぎているところも気になり、卒なくまとまっているようであって逆に作者にとって課題の残る作品であると言ったら言い過ぎであろうか。

評価7点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 22:05 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ぼくたちの家族』 早見和真 (幻冬舎文庫)
著者初読みですが思わぬ秀作に邂逅できた喜びに浸れる作品であると感じる。家族の在り方を問う作品であるが読者に訴えかけるのは家族だけじゃなく物事にしっかりと向き合うことの大切さを教えてくれる作品だと言える。
若菜家はほぼ破産状態に近いのですが、母親の病気がきっかけで息子2人と父親が力を合わせて立ち向かってゆきます。著者の実話に基づいた話みたいで、長男と次男の対照的な性格が印象的で思わず作者はどちらに似ているのだろうと考えてしまいましたが、父親が息子たちによって再生してゆく姿が一男性読者としては最も印象的であったとも言える。

結局一命はとりとめたものの、そんなに長く生きられなかった玲子であるが、世間一般的に富は得られなかったものの立派な子供二人を世に授けたという点では幸せだったのであろうと強く感じるし、著者の母親に対する愛情が滲み出た一冊であることが強く伝わったことは書き留めておきたい。なお本作は妻夫木聡主演で映画化もされており原作にほぼ忠実に描かれている。

評価8点
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 21:54 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『うたうとは小さないのちひろいあげ』 村上しいこ (講談社)
野間児童文芸賞受賞作。読み終えたあと、凄くいい本を手に取ったという気持ちに浸れる一冊です。いじめを苦にして引きこもりの友達との対応に苦労する新高校一年生の桃子が主人公。一緒の高校に入学するも、不登校になった友達の綾美のことが気になりつつも桃子はひょんなことから短歌部に入部させられます。
そこでの個性的な先輩たちと触れ合うことによって、塞ぎ込みがちだった気持ちが前向きになり、その前向きさが綾美の不登校までもを解決するというテンポも良く感動的な物語です。
ところどころに高校生たちの個性豊かな短歌が披露されていて、同じように定期的に綴られている綾美の引きこもりブログを中和して行ってくれます。最終的に綾美が前向きになるところが読者にとっても幸せいっぱいな気持ちにさせてくれますよね・
もっとも感動的なのは短歌甲子園の舞台でのやりとりでタイトル名となっている言葉の深い意味が読者の心に突き刺さります。
続編があるみたいで、個性豊かな登場人物とまた会えると思うと読まない手はありません。単なるYA小説のくくりでは収めたくない傑作だと思います。

評価8点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 11:24 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『エスカルゴ兄弟』 津原泰水 (角川書店)
評価:
津原 泰水
KADOKAWA/角川書店
¥ 1,782
(2016-08-05)

初出「文芸カドカワ」。作者の作品は青春小説の逸品と言われる『ブラバン』しか読んでなくて、世間一般的に作者得意のジャンルと言われている幻想・怪奇小説は手に取っていないので苦戦を強いられる読書となることを予想したのであるが、良い意味で見事にそれははずれ、痛快なエンタメ作品を堪能させていただいた。そして有意義な読書体験を実感でき、これから前述した作者の本来のジャンルの作品もどんどん読んで行こうという気にさせられたことは大いなる収穫であったと言える。

タイトルともなっているエスカルゴ兄弟の“兄弟”とは実の兄弟ではないところがポイントとなっている。出版社をリストラさせられた実家が香川のうどん屋の次男で調理師資格を持つ尚登が弟役で主人公格、あと変人と言って過言ではないであろう写真家で実家が飲食店の秋彦が兄貴役であります。秋彦や妹役の梓に振り回されながらも生きがいを見出してゆく尚登の姿は他人事とは思えず、意地らしく応援しながらの読書を余儀なくされます。
決して自立心の強いタイプの人間ではないがゆえに、他人からも疎んじられずに生きてゆく様が要領良いのか悪いのか、ただ作者は暖かい手を主人公に差し伸べているように感じられます。
その顕著な例として讃岐うどんのライバルとも言える伊勢うどんを営む店で知り合った桜の存在が素晴らしいと言えます。とりようによっては彼らの関係は淡すぎてじれったいのかも知れませんが、私には微笑ましくかつ清々しくも感じられました。

その背景としてやはり食を徹底的に調べ上げた作者の尽力が、読者の食欲でなく(笑)、読書欲を掻き立てていることに尽きると思います。展開は大体予定調和的でしたが、血の繋がらない二人の男が実の兄弟以上に連帯感を持ち人間的にも成長してゆく姿は作中の食べ物の描写のみならず、読者を満腹にして本を閉じさせてくれます。
世の中の大半のことは為せば成るのでしょう。
それと、物語の背景となっている出版社のリストラ話、出版不況の一面をも描いており深刻でもあります、小説フリークの一人としてこれからも出来るだけ支えて行けたらなと思っています。、

評価8点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 19:05 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ファミリー・レス』 奥田亜希子 (角川書店)
評価:
奥田 亜希子
KADOKAWA/角川書店
¥ 1,728
(2016-05-27)

初出「野生時代」&書下ろし。作者の作品はデビュー作以来2冊目ですが、着実に成長の足跡が見えるように感じます。家族について語られる連作短編小説集ですが、各編の関連性はほとんどなくて前編の登場人物が噂話や脇役で登場する程度のものです。ただそれぞれの物語におけるシチュエーションが多様性のある現代において、読者自身の価値観を揺さぶり考えさせられる内容となっていて小憎らしく感じざるをえません。

作者の魅力はやはりそれぞれの物語の続きというかその後が気になる点でしょうか。読者に一任しているということでしょうが、そう感じるのはやはり読者に伝えたいという部分がしっかりとしているからだと感じます。個人的に印象的なのは冒頭のシェアハウスに住む毒舌の葉月さんと姉と絶縁中の希恵との秘密打ち明け話が素晴らしい、タイトルになっているファミリーレスという言葉のモチーフともなっているように感じられます。いわゆる家族でなはい状態であるけれど血の繋がりの捉え方の違いがここまで違うのかと考えさせられます。

男性読者としては働かずに絵を描いて結婚し、肩身の狭い思いをしつつも嫁の実家先にて家族に苦しみながらも触れ合ってゆく話もよかったですね。あと亡き双子の姉の娘を我が子同然に育て上げている話も印象的で、娘が家を出るというところから話が始まるのですが、父親役である叔父さんと母親である妹との接し方の違いが滑稽でもあり、家族以上に深く愛しているんだけれど親子の温度差の違いが露呈されていて、血の繋がりでは推し量れないけれど血の繋がりも重要なんだなと感じたりもします。それは離婚した娘に会いにいく男の話でも如実に表れていて、娘にどうしようもないことを言うのだけれど、何か先の人生において許されてほしいという期待感を読者に持たせます。

少し支離滅裂になりましたが、作者の懐の深さが文章に乗り移ったような短編集ともいえ、凄く斬新で現代的だと感じました。追いかけて行きたい作家さんです。

評価8点。

posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 23:56 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『PTAグランパ!』 中澤日菜子 (角川書店)
評価:
中澤 日菜子
KADOKAWA/角川書店
¥ 1,728
(2016-06-01)

書下ろし作品。作者初読みです。作品を通して読者が自分自身と向き合う内容の小説だと言える。誰もが本音を言えばやりたくないPTA役員であるが、一流企業を定年退職して暇をもてあそばせている祖父勤が代理として副会長を全うしようするところから物語は始まります。

自分は仕事一筋で一切一人娘の都の幼少時代を顧みなかったことを反省していく姿が見ものです。タイトル名からして勤が主人公のように感じますけれど、実際の主人公は3人の男の子を持ちパートしながら同じく副会長として悪戦苦闘する順子であると感じます。彼女と都との対比(働くママ対キャリアウーマン)が本作の読者層(女性が多いと想像します)からして興味深く読めることは請け合いだと感じます。

当初、険悪なムードに陥りますが、お互いがお互いを認め合い寄り添っていく過程が一番爽快感あって心地よいです。あとは劇作家もされている作者ですので会話がスムーズで読みやすく感じますよね。さりげなくですが現代社会の大きな問題点である、認知症(→介護の重要性)などにも言及して出世して働くことの意義をも考えさせられました。

会長役の結真もユニークキャラですが一本筋が通っていて印象的です。本作を読んで何が幸せなのか本当に人によって尺度が違うのだと痛感されたかたも多いんじゃないでしょうか。エンタメしているけれど(読みやすいという意味です)何かを考え掴み取れるような意義のある一冊だと感じました。小説現代長編新人賞を受賞し小説家デビュー、本作が4冊目の上梓ということで遡って挑戦したいと思います。

評価8点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 20:50 | comments(0) | trackbacks(0) |-