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『若葉の宿』 中村理聖 (集英社)
評価:
価格: ¥ 1,728
ショップ: 楽天ブックス

作者は小説すばる新人賞を受賞されており、本作が受賞後の二作目の作品となる。

京都の町家旅館の娘として生まれた主人公の若葉の成長物語であるが、父親を知らず祖父母に育てられいつか自分を置いて失踪した母親に会えるかどうかという希望を捨てずに現実にもがきながら生きてゆく様が読者に伝わってきますが、シャキシャキした女性読者が読まれたら多少イライラするかもしれませんが、男性読者は可愛く思えそうなキャラとも言えます。

京都特有の町家旅館で生まれ育った女の子の成長物語ですが、古い伝統を重んじつつも新しいものに徐々に変更していかなければならない葛藤が描かれています。伝わるのはやはり、祖父母の孫に対する愛情であり挫けそうになりながらも立ち向かって行く姿が儚げで胸を打たれます。

京都の宿泊施設の実態がわかる内容であり、祖父の口利きで入った老舗旅館に勉強として働きに出る若葉ですが苦労が絶えません。友達である舞妓や板前見習いの慎太郎に背中を押されて一皮むける姿が清々しい読書となった。母親との再会ができたかどうか、凄く巧みなエンディングにやられた気持ちになった。

評価8点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 21:04 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『夜空に夜空に泳ぐチョコレートグラミー』 町田そのこ (新潮社)
新潮社の「女による女のためのR-18文学賞」受賞作家は過去にも人気作家を輩出しているけれど、本作を読んでとてつもない強力な新人が表れたと感じた。
繊細さと力強さは余程の筆力がなければ相伴わないものであるというのが私の持論であるけれど、自分の作品の世界を構築し終えているレベルに達していると思わざるを得ないのだ。
全5編からなる連作短編集であるけれど、それぞれの編にドラマが満ちています。どの編の人物もまさに崖っぷち状態であってそれをどのように打開していくのかが楽しみでもありますが、何よりも主要人物であるサチコと啓太の生きざまには肩入れしてしまいます。彼女たちの壮絶な人生を堪能するのが本作を読む行為イコールということであります。

冒頭の差し歯が外れたエピソードが秀逸で物語全体に深みを与えています。私はサチコと啓太は恋人同志かなと思いましたが実は親子でした。彼らは一見愛に飢えているように見受けられますが、実は愛に満ち溢れています。それを理解できるのは読み終えたからでありますが、。どのように繋がって行くのかを体感出来るのが読み進めて行く上での楽しみであると感じます。

とりわけ人と接するのが苦手で不器用な人生を歩んでいる自覚している読者が読めば、自分と同様あるいはそれ以上に不器用な人に邂逅し、少しずつですが自分の人生を切り開いて行こうと感じるのでしょう。感動的でもあり実益的でもある本作、是非手に取って欲しいですし、次作以降の作者の期待はとっても大きいものとなりました。

評価9点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 18:09 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ニュータウンクロニクル』 中澤日菜子 (ポプラ社)
初出「小説宝石」。作者の作品は二冊目となりますが、タイトルから醸し出される雰囲気は、まるで重松清さんが書きはるようなほのぼのした話というよりもどちらかと言えば問題点を提起するお話を想像するのであるけれど、作者はそこにマイルドさを交えているところが特徴であると言える。

作者は人生というよりも人間の一生における変化を高度成長時代の象徴のひとつであるニュータウンを取り上げて、登場する人たちの人生に彩を添えている。

この物語は全6章からなり、最初は1971年から最後は未来にあたる2021年で終わるのであるが、子供や高校生だった頃の人物が変化を遂げてゆく様が読者にとって心地よい。
いずれもが幸せな人生であったとは言い難いけれど、各時代の世相を反映したシーンを織り交ぜつつ読ませてくれる。
二章目で出てくる風変わりな転校生の正江、三章目のバブルの時代に若い男に貢ぐ陽子などが印象的であるが、主人公格である公務員の健児がニュータウンの栄枯盛衰を理解しつつも誇りを持っている姿が終盤貫かれているところが良く、本を閉じた時にじーんとくるのが心地よい。

重松氏のように踏み込みが深くなく泣けるような話ではないけれど、サラッとリアリティのある話は読者の背中を押してくれ懐かしい気持ちに浸れる。是非コンプリートしたい作家のひとりとなった。

評価8点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 16:44 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『カンパニー』 伊吹有喜 (新潮社)
評価:
伊吹 有喜
新潮社
¥ 1,836
(2017-05-22)

初出「小説新潮」。作者の作品は三冊目でありどうしても「四十九日のレシピ」の良い意味での地味なイメージが強かったのであるが、本作を読み終えて新たな代表作に邂逅できた喜びに浸れた気持ちで一杯である。
私は本作を読んで、この作者はエンターテイメントの舞台で勝負できると確信しました。個人的には本屋大賞ノミネート希望します。

老舗製薬会社の総務部で永い間勤め上げたものの妻子に逃げられた47歳の青柳、そしてオリンピックを目指していた選手に電撃引退されたトレーナーの由衣。彼らに新たな使命(舞台「白鳥の湖」を成功させること)が与えられるのですが、主役に男女二人を配置することが読者の共感を大いに呼び込むことになったと感じる。
男性読者は青柳に、女性読者は由衣に自分自身の日頃の苦しみや悩みを投影し、そして逆に男性読者は由衣に、女性読者は青柳に心をときめかせる。

作者がいかに二人に道を拓かせるのか、予想通り順風満帆とは行きません。高野という世界的なバレリーナが彼らに試練を与えるのですが、高野自身もバレリーナとしてのキャリア終盤に来ており自分自身の最後の居場所を探します。
彼のような天才にも悩みがあるのだと、読者は否応なく知らしめられることにより肩の荷がおれる気分に
浸れ、より青柳や由衣に対して励ましながらページをめくります。

本作は青柳と美波、由衣と高野との淡い恋も描かれていて清々しい気持ちで読めるのも特徴であるが、やはりバレエ団に出向してからいかに誠意を持って取り組んだ様が男性読者の私に突き刺さったことは書き留めておきたい。
彼にとって、徐々に娘が自分の方に寄り添ってきてくれたことが彼の成功に大きく繋がったことだと感じる。
そしてこの物語は脇役陣の充実が凄まじいです。青柳の元妻、社長の娘紗良、那由多など、彼らのサイドストーリーも読んでみたい気がしますが、やはり本作の魅力はタイトル名に集結されると思います。
会社、そしてバレエ団のこともカンパニーと呼び、作者も掛け合わせてネーミングしているのかもしれませんが、私は“仲間”という意味合いで捉えています。

というのは本作で最も印象的なシーン、それは新宿アルタ前でのそれであり、やはり脳裡に焼き付いて離れません。まあ読ませどころ満載の本作、是非手に取って欲しいですし、続編でまた彼らに会いたいですね。新たな苦難に出会っていたとしてもきっと切り抜けてゆくことでしょう。

評価9点
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 22:05 | comments(0) | trackbacks(0) |-
 『セシルのもくろみ』 唯川恵 (光文社文庫)
連ドラ化ということで約10年ぶりに作者の作品を手に取ったのであるが、思ったよりドロドロ感がなく爽やかな作品であったとも言える。
その要因として二つのことが考えられる。まず、連載が「story」という光文社の40歳ぐらいをターゲットとした月刊誌で、いわば業界内のことを小説化したものでありあまりな内容を書けばイメージダウンを避けることが出来ないであろう点。もう一つは唯川氏以降出てきた女性作家、いわゆるイヤミス系を得意とする面々はもっと人間の弱くて醜い部分の描写に長けていて、読者もそれに慣れていて唯川氏のドロドロ度が低く感じられる点。
ただ本作は文章の読みやすさは他の女性作家よりも一日の長があるように思える。

もちろん、女性の嫌な部分も描写されているが、読み方によってはサクセスストーリーという捉え方も出来爽快感が漂う背中を押してくれる作品であるとも言える。
男性読者の私は、その背中を押してくれる流れとやはり主人公であり専業主婦から雑誌の読者モデル、そしてプロのモデルへと変貌してゆく奈央の人柄と女性的魅力に惹かれて一気に読み切った感が強かったと言える。
それはやはり、少し控えめで容姿的にも飛びぬけていないながらも、現状に満足せず(現状も決して幸せでないことはありません)に前向きに生きて行こうという姿が可愛くもあります。

作者は、女性読者に対してタイトル名ともなっている“もくろみ”を持つように示唆しています。
このもくろみとはやはり前向きに生きる生き甲斐のようなものだ私には感じます。女性読者の心の内に届きやすい作品であると感じます
ドラマでは真木よう子が主人公を演じますが、脇役陣も豪華で楽しみにしてます。

評価8点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 17:02 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『神様からひと言』 荻原浩 (光文社文庫)
13年ぶりの再読となる。再読のきっかけとなったのがNHKでのドラマ化であったのであるが、ご存知のように放映中止となったことは残念でならない。
昨年、念願が叶って直木賞作家となった作者がユーモア作家として人気を博していた初期の代表作と言って良い本作。
短気で喧嘩っ早い性分が災いして大手広告代理店を辞め、中堅食品メーカーに中途入社した佐倉涼平だが、新しい会社でもトラブルを起こしお客様相談室へ異動させられる・・・

広告制作会社勤務歴のある作者なので、主人公と作者がオーバーラップされた読者も多いはずです。自身の経験をいかんなく発揮した作品といえるでしょう。


単行本の帯にかつて“会社に人質取られてますか?”という言葉があり、それにドキッとした方も多いと思いますが、内容はそんなに深刻なものではありません。現代社会に起こりうる事を軽妙洒脱な文章で綴ってます。
コメディータッチながらもサラリーマンにとっては、結構真剣に読まざるをえない作品ですが、日頃のストレスの解消には恰好の1冊と言えそうです。
なんといってもお客様相談室のメンバーのキャラが素晴らしい。特に、上司のギャンブル(競艇)狂の篠崎さん、いい味出してます。篠崎さんを主人公とした小説も読んでみたい気になりますよ。

登場人物を自分の身の回りの人間に置き換えて読むだけでもストレスの解消となる本作は、現実では出来そうもない事を主人公がやってくれるので、その過程を楽しめるだけでも読む価値があるでしょう。

普段、“忍耐強く勤めてる人”に是非読んで貰いたい作品です。又、カップ麺やギャンブル好きな人、心して読んで下さい(^O^)
本書を読めば会社内における自分の位置づけや立場を再認識できるかもです。

最後にラストの終わり方もよく、“涼平とリンコの幸せを心から祈って本を閉じた”ことを付け加えておきます。

評価7点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 18:47 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『罪の余白』 芦沢央 (角川文庫)
評価:
芦沢 央
KADOKAWA/角川書店
¥ 648
(2015-04-25)

作者初読みです。スクールカースト制と言って良いのでしょう、そのイジメが原因で若き命を絶った女子高生。彼女の父親で娘を溺愛してた心理学者の安藤と彼女を死に追いやった女子高生二人(咲と真帆)とのそれぞれの心の動きが語られて行きます。父親の怒りと苦悩、そして女子高生の自分たちの保身が交互に描かれるのですが、最後まで緊迫感が途切れることがありません。

キーパーソンとなってくるのが安藤の同僚でもあり彼の世話をする早苗でしょうか。コミュニケーション障害がある彼女の視点のパートが本作をより深みのある作品としていることは明白であり、ラストのサプライズにも繫がります。母親が自分の命を捨ててまで生んだという設定は男手ひとつで育てたという加奈に対する愛情の深さと共に、早苗という存在をより際立たせるための計らいであったと感じます。それにしても咲の自分自身を守るために取った陰湿な行動は想像を絶するほどで許しがたいですよね。女性作家ならではの繊細さと力強さを併せ持ったセンセーショナルな作品だと思います。

読者サイドからすると、やはり加奈や真帆が咲からなぜ離れられなかったのだろうかという疑念が残りますが、これは当事者にとっては難しい問題なのでしょう。
本作読了後、映画化されたDVDを鑑賞しましたが楽しめました。咲役の吉本実憂の悪魔ぶりが原作顔負けで印象的でした。次期朝ドラ主役の葵わかなも脇役ですが出ています。

評価7点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 10:52 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『海の見える理髪店』 荻原浩 (集英社)
評価:
荻原 浩
集英社
¥ 1,512
(2016-03-25)

初出「小説すばる」、直木賞受賞作。6編からなる短編集で貫かれているのは人と人との繋がりの大切さ。
直木賞受賞作ということで期待して読んだんだけれど、『明日の記憶』のようなインパクトは感じず、後年作者の代表作として語り継がれるような作品とまでは言えず、個人的には佳作だという評価であり、どちらかと言えば今までの功績を評価しての受賞のように感じる。

とはいえ、表題作と最後の「成人式」は特筆すべき作品であり、全盛期(と言えば失礼だろうか)の浅田次郎を彷彿とさせる高いレベルの作品であると言え、読者に対して読んで良かったと思わせるのは流石であると言えよう。
表題作は店主が海辺の小さな町にある理髪店にやってきた青年に、自らの人生を語っていきます。予定調和的作品ですが非常にまとまりのある作品であると感じます。

「成人式」は15歳で事故で亡くなった愛娘への悲しみをずっと引きずって生きている夫婦が娘の成人式(生きていたら出たであろうという意味です)に二人で代わりに出ようとします。滑稽にも見えますが、あの時こうしてたら事故が防げたのにと思い続ける父親の気持が身に沁みます。式での娘の友達の協力的な反応が涙物であり、夫婦としての結束がより強固になったと感じられた読者が多かったと容易に想像できます。やられたーと思い本を閉じました。

評価8点
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 13:46 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『この世にたやすい仕事はない』 津村記久子 (日本経済新聞社)
評価:
津村 記久子
日本経済新聞出版社
¥ 1,728
(2015-10-16)

初出 日本経済新聞電子版。日経新聞に津村さんの小説と来れば、まさにお仕事小説の決定版と思われる方が大半だと思われますが、本作は半分当たっていて半分外れているというのが解答のような作品だと言える。
バリバリと働くOLが対象ではありません。燃え尽き症候群によりある職を辞した三十代半ばの女性が、風変わりというか読者がこんな仕事あったのかと思われるような仕事をこなすことによって自分らしさを取り戻して行く過程が読ませどころの作品ですが、それは通常の津村作品の定番ともいえる、個性的なれど等身大的なキャラの人物を描いているのではなくて、普通よりも悪く言えば精神的に弱いキャラの人物を描いている点が目新しく感じる。

それによりタイトル名ともなっている、“この世にたやすい仕事はない”という言葉がじーんと読者に伝わてくるような気がして、読者の常日頃持っている“労働観”が覆ったり、あるいは大きく変わったりするところが本作の一番魅力とも言えそうです。
基本的には、主人公が少なくとも全力かつ真面目にそれぞれの仕事に取り組んでいく姿を少しでも吸収して読むべき作品のように決定づけたいと思っている。

相談員でもある正門さんがとってもユニークであり、本作を読むきっかけともなったNHKでのドラマ化でどのように描かれているか楽しみである。

評価7点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 19:30 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『美しい距離』 山崎ナオコーラ (文藝春秋)
評価:
山崎 ナオコーラ
文藝春秋
¥ 1,458
(2016-07-11)

初出「文學界」。島静恋愛文学賞受賞作品であるが、恋愛小説というよりも夫婦小説と言った方が良さそうでいろいろなことを考えさせてくれるという作品であると言える。
老年期に入ってどちらかが癌に侵される夫婦は数多いであろうけれど、本作では侵されるのが40代の妻である点と夫婦の間に子供がいないという点が少し変わったシチュエーションだと言えます。
タイトル名となっている″距離”という言葉を念頭に置いて読むと色んな事を考えさせられ、読者自身の身の回りのことも想像された方も多いであろう。

語り手である夫は仕事をもセーブし、余命短い妻の介護に献身的になります。ある時は妻の母親や妻の仕事関係の人と距離を保ちながらというか、妻と自分以外の人との距離を調整してあげているようにも感じられます。
その妻を大切に思う気持ちが穏やかに書かれているのですが、その奥底に潜む葛藤している気持ちが読んでいて見え隠れします。妻サイドの痛みや苦しみはほとんど描かれてないだけに、逆にまだ若すぎるという気持ちが強く伝わって来ました。

そして娘に先立たれた義母の悲しみも伝わって来ます。現実はもっと生々しい話になるのでしょうが、落ち着け落ち着けと作者から教えられた気持です。読者にとって自分自身の夫婦関係の根本的な見直しや、自分の身の廻りの近い将来も含めての介護問題を見つめ直す指針となる一冊だと言えそうですね。

評価8点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 22:01 | comments(0) | trackbacks(0) |-