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『妻が椎茸だったころ』 中島京子 (講談社)2014.04.28 Monday
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個人的には『のろのろ歩け』テイスト(直球的と言ったらよいのでしょう)のほうが好みですが、作家も書き分けが必要なのでしょう。
一番ゾッとさせられたのは冒頭の海外留学していたリデル通りの話、エンディングの締め方は素晴らしいですね。あとは表題作でしょうか、読み終えて亡くなった妻に対する愛情がじわっと伝わる部分はうまく書けていると思います。
実は本作「日本タイトルだけ大賞」を受賞しているのであるが、タイトル名ほど奇抜には感じなかったのである。原因として直前に本谷有希子さんの『嵐のピクニック』を読んだことと、あとは中島さんの文体自体が至って普通に読みやすくって美しいことがあげられる。
本谷さん→ぶっ飛んでいる(いい意味で)、中島さん、→大人のおとぎ話的だと捉えるべきなのでしょう。
普通の人が不思議な話に出くわしているので、読者との距離感が近いのでしょうね。好みの分かれる作品で個人的には「小さいおうち」を未読の人には勧めようとは思いませんが、中島作品は一貫して丹念に書かれているなとは再認識しました。機会があれば未読の作品を手にしたいと思っている。
評価7点。
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『のろのろ歩け』 中島京子 (文芸春秋)2013.02.02 Saturday
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主人公はすべて日本人女性でそれぞれ、雑誌編集者、駐在員の妻、失恋したOLという立場で現地を訪れます。
やはり最初の北京が舞台の「北京の春の白い服」がもっとも印象的ですね。恋人のアメリカ人とのやりとりも含めて北京の都市としての年月を経た移り変わりが見事に描かれています。
二〜三編目はいずれも現地の若い男とめぐり会うのだけど、彼らの実態というか人となりが上海と台北という都市のイメージを表しているといったら深読みしすぎでしょうか。
全体的にそんなに重苦しいこともないんだけど、各編の女性主人公が人生の分岐点と言ったらちょっと大げさなんでしょうが不安な気持ちを抱えて三つの都市を訪れます。
作者は本当に無駄のない見事な文章を書きますよね、国内旅行にはない緊張感がひしひしと伝わってきます。
本作がもっとも成功している点はやはりタイトルのネーミングだと思われます。
『のろのろ歩け』、最初の北京の物語で登場する言葉ですが、中国語題で慢慢走(マン・マン・ゾウ)と言います。
英語で言えばtake careのような意味合いみたいです。
これは作者の作家としての執筆に対するスタンスを象徴するような言葉であると受け取っています。
余裕すら感じられ、一読者として見習いたいと思います。
男性読者の私は満足できたかどうか言えば返答に少し困りますが、三都市の大まかな特徴というものは理解したつもりです(笑)
逆に感受性豊かな女性読者に対してはメッセージ的作品だと言えます。
きっと本文では描かれていない行間を読み、奥深い繊細さを味わえるからですね。
(読了日1月14日)
評価8点。
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『ハブテトル ハブテトラン』 中島京子 (ポプラ社)2009.03.24 Tuesday
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<小学5年生の少年の心の溝を軽妙なタッチで描いた秀作。>
中島京子さんの2冊目は少年少女小説。
一応、一般書の分類であろうが実際は小学高学年ぐらいから読める。
ちょうど主人公の大輔ぐらいの年齢からかな。
版元のポプラ社らしい作品だと言えそうですね。
でも一筋縄ではいかないのが本作。
主人公で小学5年生の大輔が東京を離れて広島に来たいきさつが泣けるというか重要となっているのですね。
学級崩壊の状態のクラス委員を押しつけられ、その結果喋れなくなり、登校拒否となった大輔。両親の配慮から2学期だけ母親の故郷である広島県福山市の学校に転入するべく、夏休みの間に先にひとりで飛行機に乗って広島に向かうところから物語は始まる。
そう始まりは重いテーマを包括しているのである。
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中島京子著作リスト。2009.03.17 Tuesday
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これからコンプリートを目指したい中島京子さんの著作リストです。
実はまだ一冊しか読んでないのですが(汗)、文章の上手さとストーリーテラーに長けた要素はかなりのものだと思っております。
今で小説ちょうど10冊ですね。
小説
『エ/ン/ジ/ン』 (角川書店) 2009/02
『ハブテトルハブテトラン』 (ポプラ社) 2008/12 <既読>
『平成大家族』 (集英社) 2008/02 <既読>
『冠・婚・葬・祭 』 (筑摩書房) 2007/09
『桐畑家の縁談』 (マガジンハウス) 2007/03
『均ちゃんの失踪』 (講談社) 2006/11
『ツアー1989』 (集英社) 2006/05
『さようならコタツ』 (マガジンハウス) 2005/05 文庫化(集英社2007/10)
『イトウの恋』 (講談社) 2005/03 文庫化(2008/03)
『FUTON』 (講談社) 2003/05 文庫化(2007/04)
エッセイ
『ココ・マッカリーナの机』 (集英社文庫)2006/04
〔「だいじなことはみんなアメリカの小学校に教わった。」(主婦の友社 1999年刊)の改題〕
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