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『十字架』 重松清 (講談社文庫)
9吉川英治文学賞受賞作品。数々の名作を輩出している作者だけれど、『その日のまえに』以降少しクオリティが低くなったかに感じていたのだけれど、本作は『とんび』と並び称されるべく完成度の高い作品だと感じる。
『とんび』が究極の親子愛(家族愛)を語った作品であれば、本作は読者に人生に向き合うことの大切さを訴えた究極の作品だと言え、読者の胸にズシリと響くのである。
本作は他の作家が一般的に描きがちなイジメ死に対する社会的な発生原因の考察や、イジメの悲惨な描写やそれに対する家族の苦悩を描くシーンはほとんど皆無であって、イジメ苦により一人の中二の少年が自殺し、遺書が残されるところから物語が始まる。

遺書に親友と書かれたユウが語り手で紡がれてゆくのであるが、彼以外にも迷惑を掛けた(自殺した少年の片思いの相手)と書かれたサユリと、彼ら二人と対峙する自殺した少年の両親と弟との関係が描かれて行く。いわば自殺した当事者の周りの人間がタイトル名ともなっている十字架をいかに背負って生きていくか、それぞれの立場で描かれているのが素晴らしいと感じる。

最も感動的なのは、主人公が“あのひと”と語っている自殺した少年の父親に対する気持ちというかわだかまりが、自分が成長して結婚して子供が出来、年を重ねることによって氷解してゆく過程がじーんと来ます。
当初はユウもサユリも被害者的な見方が出来、同情しながら読み進めた読者も多かったとも思えるのだけれど、そこが重松氏らしいところでもあって、決してイジメの当事者に対してはあまり触れず(ある程度は触れていますが)にユウとサユリが約20年背負った十字架の重さを読者に描くことによって、イジメを見て見ぬふりをしている現状を打破して欲しいという気持ちを強く感じます。
そういった意味合いにおいても、途中で恋人関係にもなるユウとサユリがお互いを意識しつつも別々の人生を選択するところが切なくもあるけれど妥当な着地点のつけかただと感じました。
彼らにとっては苦しい人生だったかもしれませんが、より成長出来た人生だったとも言えると信じたいです。
本作は単館系で2月6日より公開、主演は小出恵介と木村文乃です。

評価9点。
posted by: トラキチ | 重松清 | 10:18 | comments(2) | trackbacks(0) |-
『希望の地図 3・11から始まる物語』 重松清 (幻冬舎文庫)
作者のライター用のペンネームとして著名な田村章氏を主人公として、震災後半年後東日本大震災の被災地を訪れた記録を綴ったものであるが、重松氏らしいと思えるのは東京で不登校に苦しむ中学生を同行者として取り上げられている点である。
イジメや不登校に関する小説ネタは作者の最も得意としているところであるけれど、本作を通してイジメに苦しむ少年の心が緩和されてゆく過程が描かれているのは、これからの日本を背負って立つ子供たちに対する作者の期待の気持が伝わってくるのである。

文庫本には事故直後の写真と三年後(2014年)の写真が掲載されていて、その三年間の間のたゆまぬ努力の結果が画像でも読者に迫ってくるのであるけれど、小説では表現できない作者の心のこもった部分を垣間見ることが出来ます。
最も感動的なのは、やはり絶望的な気持ちで生きてきた少年光司が自分よりもっと絶望的な窮地に立たされた被災地の人々が、ひたむきに希望を捨てずに生きている姿を見て徐々にではありますが変化を遂げてゆく姿だと思います。
そして例えばこの本を読んでいる読者層で言えば、お子さんがイジメにあって苦しんでいる親御さんの世代も多いと思われます。きっと本作を読むことによって痛みや苦しみが緩和されたことだと思います。
印象的なのは石巻日日新聞の壁新聞、そして映画にもなったフラガールの新たなる苦難等々。
今回、仙台旅行の道中に本作を読んだのであるけれど仙台空港の当時の写真が生々しく飾られていて胸が熱くなった。この気持ちを日本人の一人として忘れてはならないと肝に銘じたい。3月11日が近づけば再び手に取りたいなと思う。

評価9点。
posted by: トラキチ | 重松清 | 20:58 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『なきむし姫』 重松清 (新潮文庫)
新潮文庫の100冊2015セレクト作品。タイトル通り普通よりも頼りなげな二児の母親である女性アヤを主人公に据え、夫(哲也)が単身赴任して家を空けた一年間にトラブルに直面することによって成長する姿を描きます。
期間限定のシングルマザーの前に現われるのは夫と同様幼なじみの健で、彼の波乱万丈な人生が物語に彩を添えます。これは読んでのお楽しみでしょう。

本作は文庫オリジナル作品だけれど、その約10年前に女性雑誌(主婦向け)に連載されたものを加筆訂正して仕上げられた作品であって、その背景からしてやはりアヤ目線で読まれることを前提として書かれている。モンスターペアレント役の留美子さんが滑稽で、旦那さん役であり哲也の同僚の朋也の大変さが窺い知れて気の毒なのであるが、やはりアヤを取り巻く2人の男性(夫の哲也とど隊長こと幼馴染の健)の両極性が読んでいてとっても気になり、二人に愛されるアヤは本当に幸せであって、果たしてどっちを愛しているのだろうと勘ぐったりもする読書であったけど、どちらかと言えば他の重松王道作品のような涙腺を刺激するタイプの作品というよりも、生き方を問う作品であったように感じられる。

ハートウォーミングだけれどグッと来るシーンは他作よりも少ない感じです。作者の願いはやはり女性の自立ということなのでしょう。温かいまなざしはどの重松作品であれ味わえますね。
ただ、描かれる子供たちにあんまり個性がなくやはり枚数が足りなかったかな、まあ一年間だけの別居だから別に不幸ではないですよね。健の娘のナッコの行く末が最も気になって本を閉じた人が多かったと想像しています。

評価8点。
posted by: トラキチ | 重松清 | 17:32 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『一人っ子同盟』 重松清 (新潮社)
評価:
重松 清
新潮社
¥ 1,728
(2014-09-22)

初出「yomyom」、加筆修正あり。昭和四十年代、今よりも一人っ子が少ない時代に生きた小学六年生の男女と小学四年生の男の子たちの物語。
今では一人っ子というのも少なくないけれど、当時はクラスに2〜3人以内だったような気がする。重松読者の大半は重松氏に近い年代の世代だと思われるので自分たちの子供時代を懐かしがりながら、当時わからなかった大人の事情を顧みることが出来る。
兄を亡くした主人公ノブ、母親が再婚して揺れているハム子、そして親が亡くなって親戚に引き取られているオサム、三人それぞれ不幸を抱えているのであるが、やはり実の親が2人揃っているノブよりもハム子やオサムの方が大変だなと思いつつ読んでいたのであるが、重松氏らしい着地点を示してくれるのは流石とか言いようがないのであろう。
ただ、平成の世においてもハム子のような家庭のケースがより多くなっているように感じられ、子供たちの事情をより理解し、暮らしやすい社会の実現を切望したいと思う。

本作はフィクションとはいえ、昭和の郷愁感が漂った作品で重松氏と同年代の登場人物がその後いかに成長し、立派な大人となったのであろうかという気持ちにさせられる。それは昭和を知っている読者にとってはかつて身近にいた三人の仲間に似た彼(彼女)を想い起させるとともに、作中の親世代の人物の気持ちがとってもよくわかったのは時の流れというものであろう。
そしてこれから結婚し、子供をもうけて人生を歩んでゆくお若い読者には本作を手に取って是非人生の予習をしてもらいたい。彼らが今後ぶち当たる辛いことは本作を手にすることによって辛さを緩和してくれるであろうと確信しています。

評価9点。
posted by: トラキチ | 重松清 | 21:41 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『あすなろ三三七拍子』(上・下)重松清 (講談社文庫)
ドラマが低視聴率で話題となった作品であるが、ドラマの内容も決して悪くなく(キャストの問題だと思われます)、ましてや重松節を満喫出来る泣き笑い作品なので面白く読めないはずがありません。
45歳の大介は社長命令で廃部寸前のあすなろ大学応援団に出向させられます。まあ現実的にはありえない話なんだけど物語に散りばめられているエピソードと登場人物のキャラ立ちがやはり並の作家ではありません。
上巻ではOBである山下と斎藤の掛け合い漫才のような会話に和ませれ、そして野口親子の確執のエピソードについて考えさせられます。ある一定以上の男性読者が読めば主人公の大介が自分の分身のようにも感じられます。
安心して読めるのは重松氏の貫禄が表れなのでしょう、それでは下巻へと入ります。

下巻の巻末にある重松氏恒例の文庫版のためのあとがきを読んで驚いた、なんと実在のモデル(出版社の営業部員です)がいるとのことで彼とのエピソードが語られていて、それが小説以上に感動的であり今の重松氏があるのは彼(小説では連れという言葉が使われている)のおかげであるという気持ちがより感慨深く伝わってきた。小説の設定がリアルでない部分があるが故に尚更である。
下巻はやはり斎藤と山下の別れ、そして大介と応援団の別れが描かれている。野口親子の話は別として、少し重松氏が最も得意だと思われる親子(大介と美紀)の愛情の描写が少ないように思えるのだが、それは他の小説にてということなのでしょう、そのためのあとがきなのだと解釈しています。

今回読んで感じたのは、重松作品は世代の交流(相互理解)を図る場であるということ。お若い読者が読めば自分の親父世代である‪大介や斎藤そして山下や野口の気持ちも理解できるでしょうし、大介の年齢に近い読者が読めば過ぎ去った自分自身の人生とそれぞれの登場人物とを照らし合わせることを余儀なくされる。
凄く悲しい作品も多い重松作品ですが、本作は前向きに生きるということを作品のモチーフとして書かれているように感じられた。それはやはりモデルである斎藤氏と作者とのずっとこれからも連れであるという熱き強い気持ちが伝わったからであろう。今私たち読者がこうして重松氏の作品を手にとれるのも、駆け出し作家だった頃に世話になった斎藤氏の応援があったからだと思うと斎藤氏に感謝の気持ちがこみ上げて来て本を閉じたことを書き留めておきたい。。

評価9点。
posted by: トラキチ | 重松清 | 12:12 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『せんせい。』 重松清 (新潮文庫)
再読。6編からなる教師と生徒たちの物語。視点が教師であったり生徒であったりするのであるが、いずれも過去を懐かしく振り返りながらも現在の自分たちを真っ直ぐに見つめているところが切なさを通り越して清々しくも感じます。
再会することによって思い出というものが蘇るのですが、そこは人生、あの頃は良かったという物語もありますし、あの頃から凄く成長したなという物語もありますが共通して言えるのはやはり人生において多大な影響を受けているということ。

読者の年齢にもよるのでしょうが、今回読み返して印象に残ったのは先生側の誤ちというか人間らしい部分を描いた「にんじん」、ないがしろに扱った少年が成長して教師になっている姿はハッとさせられました。重松作品としては意外な展開だと言えるのでしょう。あとは「ドロップスは神さまの涙」や「泣くな赤鬼」はやはり完成度が高いと感じます。前者は本作では例外的で過去を振り返るものでなく、保健室に入り浸る5年生の女の子の視点から保健室の先生と重病の少年との交流を描いています。後者は言わば“出来の悪い子ほど、かわいい”という感じの重松さんの王道作品で、高校を中退しその後真っ直ぐに生きている余命短い教え子が描かれているのですが、なんといっても寄り添っている嫁がいい子なのが印象的です。先生側もかつて甲子園を目指していた時期から時間を経て人間が円くなっているところが微笑ましくも感じました。

本作は文庫化時に「気をつけ、礼」から解題されているのであるが、全体を通して教師というものにリスペクトしつつも、教師も普通のというか一人の人間なんだよというところが滲み出ているように感じました。

評価8点。
posted by: トラキチ | 重松清 | 10:37 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ゼツメツ少年』 重松清 (新潮社)
評価:
重松 清
新潮社
¥ 1,680
(2013-09-20)

初出「小説新潮」大幅加筆訂正あり。
ひとことで言えば重松氏の年輪を感じさせられる作品だと思います。いじめを主題とした重松作品は新旧問わず重松氏の最も得意とするジャンルであることは大半の読者は知っているのだけど、本作は作者のそのジャンルの集大成的な作品だと思います。

過去の作品の人物を登場させ、語り手であり物語内小説の作者でもある作家の「せんせい」は読者に重松氏を想起させる人物を用意していますので、読み方によればファンサービス的な作品とも言えそうですが、過去の大半の作品が救いのある物語だったのに比して本作は手厳しい内容になっています。
“ゼツメツ”を避けるために旅(冒険)に出る3人の小中学生の姿が前半は微笑ましい部分もあるのですが、後半の美由紀登場から重い内容となって行きます。
大半の読者は作中でレモンを置き去りにするシーンがとっても印象的であって、それが人によっては“命”のようにも取れるし“アイデンティティー”のようにも受け取れ、そのあたり読者個々に委ねているように感じたのであるが少し深読みしすぎであろうか。

本作は重松作品を沢山それも集中的に読んでいる人の方が理解しやすいように感じられる。
私的には過去の作品よりもイジメられている親の立場の葛藤の描写が深いように感じました。エミちゃんが登場する『きみの友だ日』など過去の作品を読み返すことによってより本作への理解が深まるように感じます。それによってこの作品を初めて読んだあの時、自分はどうだったか感慨に耽ることも出来るでしょう。人生と同様、重松作品も奥が深いとつくづく考えさせられた作品でした。

評価8点。
posted by: トラキチ | 重松清 | 22:53 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ファミレス』 重松清 (日本経済新聞出版社)
評価:
重松 清
日本経済新聞出版社
¥ 1,785
(2013-07-23)

初出 日本経済新聞夕刊。久々に重松氏の肩の凝らない読み応えのある作品に出合った気がします。
50歳前後の3人の男性が登場しますが、3人とも訳ありというか難題を抱えていまして居場所のない順で言えば一博(雑誌編集者)→陽平(中学教師)→康文(弁当屋)となるのでしょうか。
現状では唯一の再婚者である康文が一番現状幸せなような気がします。
タイトル名となっている「ファミレス」はもちろん“ファミリーレストラン”という意味もありますが本作では“ファミリーレス”という意味合いで使われていてこの物語の主題となっています。

登場人物も個性的な人ばかりで巧みに組み合わせて楽しませてくれますし、家族というくくりだけでなくその人の人生というもっと広くて大きな世界に言及した物語である点が奥行きの深さを感じさせます。
物語の着地点もほぼ読者の納得の行く形であったような気がしますし、離婚という形で収まった人もいますが新たなスタート地点に立ったまでです。
そしてそれぞれの登場人物が少しでも幸せに近づいて行くであろうと予想し、本を閉じれるということはやはり幸せな読書を体験できたということだと思います。

女性読者にとって、本作ほど勇気をもたらせてくれる作品はないように感じられます。
美代子(陽平の妻)や桜子(一博の妻)、そしてエリカ先生やあとは康文の母親など個性的で自立した面々が多いので生きていく上で大きなヒントをくれるというか背中を押してくれる作品だと思います。
それぞれの人のいいところを取り入れて欲しいですね。
もし女性読者で共感出来なかった人はやはりその読者は配偶者が非の打ちどころのない人に恵まれて、本当に幸せなんだと思います。

そして逆に男性陣の物悲しさというか哀愁感の漂いがこれはこれで心地良いのです、男性読者にとって。それはやはり3人の友情が最終的により強固になったからだと感じます。

重松氏の近年の代表作と言われている『とんび』のような圧倒的な感動作品ではありませんが、食べることの素晴らしさを気づくことによって人生がより楽しくなるということがよく理解できたような気がします。
人生に正解はありませんが、常に温かい気持ちを持って生きたいですよね。

余談ですが、作中で陽平の妻が離婚届けをアン・タイラーの「歳月の梯子」という本に隠しています。
重松氏が作中で取り上げているので興味が湧いたのですが、残念ながら文庫版は絶版となっています、図書館で単行本を借りて読んでみようかなと思います。

評価9点。
posted by: トラキチ | 重松清 | 16:41 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ポニーテール』 重松清 (新潮社)
評価:
重松 清
新潮社
¥ 1,575
(2011-07)

初出 小説新潮 大幅に改稿。
両親がお互いに再婚して新たに姉妹となった女の子の物語。
父親方が主人公格の小学4年生のフミで母親と死別、母親方が小学6年生のマキで父親と離別。
この年頃の2歳差って大きいですよね。
フミの新しいお母さんでマキの実のお母さんの言葉を借りれば“マキはちょっとヘンクツで無愛想だけど、フミは、とっても素直で、とっても意地らしいっ”と表現している。

実際二つの家族がひとつの家族になるのは難しいです。
いろんなエピソードを通して、人生に正解はないのかもしれませんが、重松氏は常に暖かいまなざしで良き解答例を導き出して読者に提供してくれます。
そして大変なのは子供たちだけじゃありません。
両親の心の葛藤も十分に描かれ伝わります。
そして読者は気付きます、この両親ならば紆余曲折はあろうがきっと安心であるということを。

読んでみて当たり前ですが、血のつながった親子同志は屈託がありません。
そして血のつながってない親子同志は遠慮をしそして気を使っています。
タイトルとなっているポニーテールは姉妹の絆の印となっているかのようです。
本来は結構深刻な話で描くのが難しい題材ですが、重松氏にかかると微笑ましく感じるから不思議ですね。
たまにみられるマキの優しさも意地らしいのですが何と言ってもフミの健気さには恐れ入ります。
最後の着地点のつけ方が重松氏らしく前向きであり、単に幸せな気分にさせられただけでなく、まるで読者も成長したかのような気分にさせられる読書でした。

(読了日11月2日)
評価8点。
posted by: トラキチ | 重松清 | 17:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『空より高く』 重松清 (中央公論新社)
評価:
重松 清
中央公論新社
¥ 1,575
(2012-09-24)

しかし、社会には、世の中には、ダシが必要なんです。一人ひとりが、たとえ目立つことはなくても、それぞれの人生を一所懸命に生きていくことで、いいダシが出るんです。ダシの利いていない世の中は、ほんとうに薄っぺらで、底の浅いものです
(本文より引用)

初出 讀賣新聞夕刊(2005年3月〜11月)単行本化に際し大幅に加筆。

久々に手にとった重松新刊作品。重松作品、以前は発売日に買って胸を高鳴らせながら読んでいたのが本当に懐かしく思いました。
廃校が半年後に迫ったニュータウンにある東玉川高校、通称トンタマで学ぶ高校生四人組の半年間を綴った物語。
例えば近年の重松作品の傑作と言われている『とんび』のように圧倒的な感動を求めて本作を手に取ると肩すかしを喰らうかもしれない。
重松さんの他作のようにある問題提起(たとえばリストラやいじめ)を読者に投げかけるとか、そういうスタンスで書かれた作品じゃなく、いろんな問題(社会的な問題、家族の問題、恋愛)を重松さんなりに人生の通過点として青春小説として無難にまとめた作品のような気がする。
上記以外の登場人物でもっとも個性的であると言えるジン先生のキャラもそんなに際立ったものだと思えないが敢えてそう書いているのでしょう。
そのあたり新聞連載ということも影響しているのかなと思ったりもする。

紅一点のムクちゃんはネタローにはもったいないような気がすることをつけ加えておきたい、男性読者の方是非確かめてください(笑)
重松さんの作品の中では爽やかな作品だと言えるかもしれないが、多少主人公であるネタローがはっきりしない奴だなと思って読んだ読者も多いだろうと推測する。
ただ、仲間の大切さを謳っている点では読者に伝わることは間違いのないところであり、涙頂戴なしでも筆力の高さを窺い知ることはできますがたとえば重松作品を20冊以上読まれているような方には物足りないと感じるかリラックスして読める作品なのでしょう。
作中で何度も使われる“レッツ・ビギン!”という言葉に集約されるように、どちらかと言えば、中年読者が過去を懐かしく振り返るような作品と言うより、若くて夢のある読者の背中を押してくれる作品だと言えそうですね。
私は少しビターで爽やかな青春小説としてまずまずの評価をしたいと思う。
そして未読の重松作品も手にとりたいなと思っています。

評価7点。
posted by: トラキチ | 重松清 | 16:20 | comments(0) | trackbacks(0) |-