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『かつては岸』 ポール・ユーン (白水社)
原題“ONCE THE SHORE"、藤井光訳。1980年生まれの韓国系アメリカ人作家による8編からなる済州島をモデルとした架空の島“ソラ”を舞台としている。
架空の島としたのは、本作には歴史的事実には基づくものの幻想的な要素がかなり盛り込まれているからだと思います。
おおまかに第二次世界大戦から朝鮮戦争の頃の言わば日本占領下における過去のソラ島と、観光産業を軸としている現代とがほぼ交互に描かれていて、読者サイドとしては少し忙しいけれどそこが良いアクセントとなって入り込んでくるのですね。

これは推測ですが、おそらく作者は韓国に滞在したことはあっても居住したことはないのではないでしょうか。それが自分の母国ではないけれど故郷ともいえる国の足跡として残しておきたかったのだと思えます。
読み進めて感じたことですが、同じ苦しみでも現在の苦しみよりも過去(第二次大戦〜朝鮮戦争)の苦しみの方が辛く感じられます。それはやはり過去を経験した人たちが苦しみながらも生き延びてきたおかげであって、その過去というものが読み終えた後ほんの少しですが懐かしささえ感じられました。
秀逸なのはOヘンリー賞を受賞した「そしてわたしたちはここに」で孤児となってソラ島に送られ、その後も看護師として住みついた日本人女性美弥が主人公となっています。彼女が孤児院で一緒だった淳平という男の子に似た患者を献身的に看護するシーンは感涙ものであります。

訳者である藤井氏の作品を今回初めて読んでみたが、穏やかで静謐な訳文は作者の特長を見事に日本語化したと思う出来栄えであった。ニュージェネレーションの翻訳家として今後ますますの活躍が期待される思われますし、少しづつですが藤井氏の訳された作品を読破して行きたいと思う。また楽しみが増えました。

評価8点。
posted by: トラキチ | 白水社エクス・リブリス | 02:25 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『青い野を歩く』 クレア・キーガン著 岩本正恵訳 (白水社)
<8編からなるアイルランド人女性作家の短編集、岩本正恵訳。
表題作と「森番の娘」は印象的なのだが、全体を通して同じ訳者でエクス・リブリスシリーズの『ヴァレンタインズ』と比べてしまいどうしても満足感が得られなかった。>


粉々になった心を抱き、静かに生きる人々がいる。荒々しい自然と人間の臭み、神話の融合した小説世界は、洗練とは逆を向きながら、ぞっとするほどの、透明な悲哀を抽出する。放心した。すばらしい小説だ”(詩人の小池昌代さんの言葉:帯より引用)



作品集全体を通して、国境を越えても普遍的なものがあるとわかりながらも理解しづらい点があり、どれだけ訳者が読者に読みやすいように訳しても作者の意図が伝わらないような気がした。
たとえば母国(アイルランド)人が読まれたら、それぞれの孤独な登場人物に自分も置き換えて物語に没頭できるんじゃないかなと思います。
逆を言えば、日本人の読者が読まれ共感できたら、その方は登場人物が語る以上のことを吸収できる方で、すごく研ぎ澄まされた感受性の持ち主だと思われ羨ましく思います。

読書に何を求めるかやあるいはその時の読者の気分によって受け止め方も違ってくるのであろうが、全体を通して絶望的すぎて希望が少ないような気がする。

ただ、日本人が想像でしか体感できないカトリック社会が根底にあり、ほとんどなじみのないアイルランドという国のことや、あるいは同じ英語圏内であるアメリカと言う国への思い(アイルランドから見たアメリカです)も理解できたらきっと作者の思いももっと通じるのでしょうが。
でも私自身は自分の乏しい読解力をフルに活用して読んでみてもそれぞれの物語の着地点があいまいなものも見受けられるのですね。
そしてかすかにわかったことと言えば、アイルランド人って“古い慣習にとらわれてつつましくかつ静かに生きているんだな”ということです。
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posted by: トラキチ | 白水社エクス・リブリス | 11:17 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ヴァレンタインズ』 オラフ・オラフソン著 岩本正恵訳 (白水社)
<アイスランド人作家によるOヘンリー賞受賞作を含む12編からなる恋愛短編集。特筆すべきなのは、いずれも甘い内容じゃなくって身につまされる内容であるということ。 恋愛をモチーフにして“人生を描いている”っていう感じですね。>

“オラフソンの作品を読んでいると、ひんやりとした希薄な空気と透明な光が行間に広がるのを感じます。それは抑制のきいた文章だけでなく、登場人物たちが感情を胸にしまい、行動を慎みがちなところからも生まれています。(中略)この抑制のきいた端正さは、荒涼とした自然のなかに人間が点々と点在しているアイスランドの風土と深く結びついている印象を受けます。”
(訳者あとがきより)

白水社の《エクス・リブリス》シリーズの一冊、岩本正恵訳。

タイトル名の『ヴァレンタインズ』(Valentines)、日本語に訳すと“恋人たち”ということですが、敢えてカタカナとしているところが作品の内容を如実に表しているのですね。
そう、この作品の内容はそんなに甘酸っぱい恋愛模様を描いたものではありません。
愛の破滅というか破綻、そして終焉を描いてます。
そうですね、辛い話がほとんどです。

でも内容が内容であるだけに郷愁感が漂っています。
女性作家だともう少しドロドロ感があるか、それとも男性を滑稽に描くんでしょうが、本作には緊張感が漂ってます。
だからどちらかと言えば共感できるという意味合いにおいては男性向きの作品なのかもしれません。
抱えているものが多い人ほど共感できると確信しています。

事実、社会的に地位のある職業につく主人公たちがほとんどで、まわりから見たらどこに不満があるのって感じなのでしょうが、やはり隣の芝生は青く見えるのですね。
すべての登場人物に共通して言えるのは、人間の脆弱性を持ち合わせていることですね。だから他人事と思えずに共感できます。 タイトル名が1月から12月までで季節感が端的に表れていて、日本人には受け入れやすいです。
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posted by: トラキチ | 白水社エクス・リブリス | 15:09 | comments(2) | trackbacks(1) |-
『イエメンで鮭釣りを』 ポール・トーディ著 小竹由美子訳 (白水社)
評価:
ポール トーディ
白水社
¥ 2,625
(2009-04)

アルフレッド(フレッド)・ジョーンズ博士は、研究一筋の真面目な学者。水産資源の保護を担当する政府機関、国立水産研究所(NCFE)に勤めている。ある日、イエメン人の富豪シャイフ・ムハンマドから、母国の川に鮭を導入するため力を貸してもらえまいかという依頼がNCFEに届く。フレッドは、およそ不可能とけんもほろろの返事を出すが、この計画になんと首相官邸が興味を示す。次第にプロジェクトに巻き込まれていくフレッドたちを待ち受けていたものは? 手紙、eメール、日記、新聞・雑誌、議事録、未刊行の自伝などさまざまな文書から、奇想天外な計画の顚末が徐々に明らかにされていく。(白水社HPより引用)


<この作品は後年白水社エクス・リブリスの初期の代表作として語り継がれる一冊だと思います。構成・テンポ・視点・すべてにおいて水準の高い作品。面白くてページをめくる手が止まりませんね。ひとりの男の生き方、結婚観なども否応なしに考えさせられます。何が人生において大切なのか、人間らしい生き方を模索されてる方には格好の一冊と言えるでしょうね。小竹さんの滑らかな翻訳も素晴らしく、読みやすい一冊に仕上がっている。>



アリス・マンローの翻訳で有名な小竹由美子翻訳作品。まず、作者の意図を十二分に把握された訳者によってもたらされた、究極のエンターテイメント作品に仕上がった本作を読み終えた充実感をどう語ったらいいのだろう。 本作を読んで学ぶべき点が多いことに気付かれた読者の数はきっとかなりの数であろう。凄く荒唐無稽な設定(もちろんそうですよね、中東のイエメンにて鮭釣りをさせるというプロジェクトですから)に否応なしに引き込まれていくのです。

次に学ぶべき点について私なりに語ってみますね。
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posted by: トラキチ | 白水社エクス・リブリス | 22:25 | comments(0) | trackbacks(0) |-