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『朗読者』 ベルンハルト・シュリンク (新潮文庫)
評価:
ベルンハルト シュリンク
新潮社
¥ 1
(2003-05-28)

松永美穂訳。
本作は1995年に刊行されて以来、数多くの国でベストセラーとなっている。
日本においては新潮クレスト・ブックスにて2000年に刊行、そして2003年に文庫化、翌2004年からは日本の文庫本におけるステータスシンボルと言っても過言ではない“新潮文庫の100冊”に都合七回ラインアップされた。

読み終えて、新潮文庫の100冊の威厳を保ってる作品であることを確認できて胸をなでおろした次第である。
この作品は私的には“反戦小説”と“恋愛小説”の融合作品であると思っている。
そしてどちらに重きを置くかは読者に委ねられているのであろうと解釈するのである。
少なくとも年上の女との火遊びを描いた作品ではありません。恐ろしく奥が深い小説です。


2人の年齢差は21歳。恋愛に年齢差がないように読書に国境はないということを痛感した。
なぜなら読み終えて2人の気持ちが本当に切なすぎるほどよくわかるからである。
おそらく再読すればもっともっとわかるであろう、離れていてもお互い心を開いていたことを・・・
何度も読み返したい名作に出会った喜び、それは読書人にとって究極の喜びにほかならないのである。
キーポイントは、21歳差は戦争を経験している世代とそうでない世代の差とも言える点である。

物語は三部構成になっていて、終始主人公であるミヒャエル・ベルクのモノローグ的なもので語られている。

まず第一部、主人公のミヒャエルは15歳。ひょんなことから21歳年上で車掌をしているハンナと恋に落ち官能的関係に陥り逢瀬を重ねる。
ハンナはミヒャエルに頻繁に本を朗読して聞かせて欲しいと求めるのであるが、ある日突然失踪する。

第二部ではなんと法廷で二人は再会する。
ここではナチ問題が取り上げられ、ハンナが戦犯者として取り上げられる。ミヒャエルは法学部の学生として裁判を傍聴します。
ハンナはナチの看守として罪を背負ってゆきます。
結果として重い罪を課せられます。
ここで問題となってくるのはハンナがミヒャエルの存在を知ってこそ、重い罪を背負ってしまったこと。
愛する人に知られたくないこと、それは彼女が文盲であることでした。
ハンナがなぜ、文盲(もんもう)であることを隠したのかこの奥の深さがこの小説を読む醍醐味だと言えそうです。
簡単に言えば、背後にある貧しい生い立ち、さらに無教養を知られたくないプライドであったのでしょう。
そしてもっと言えばミヒャエルに対する切ない愛の証のようにも感じます。

そして第三部、これはもう衝撃的な展開としかいいようがないですね。
ミヒャエルはテープに朗読したものを録音をしてハンナのいる刑務所に送り続けます。
それは世界で唯一の彼女への理解者としての行動に違いありません。
そして念願が叶って、恩赦が下り釈放される運びとなりました。
そのあとの悲しみは他の作品では味わえないレベルのものです。

この小説の最も魅力的な点は多様は解釈ができることで、実は感想も書きにくい。
私は作者も含めて、ドイツ人は戦争に対して自分たちのとった行動を深く反省していると感じます。
ハンナは戦犯者のように語られていますが、実は彼女は戦争の犠牲者なのです。
とりわけ、少なくとも同じ“同盟国”として第二次世界大戦を戦った日本の国民として生まれた読者にとって、忘れつつある過去を思い起こさせる一冊であると言える。
ハンナの切なさや苦しみ、ミヒャエルの一途な気持ち、それが朗読という行為によって読者の胸に突き刺さります。
朗読テープを聴くことによって、ハンナが独房で文字を覚えて行くシーンを頭の中で巡らせる読書、その行為が切なくて
胸が痛いのである。

現代ドイツ文学翻訳の第一人者と言って良い松永氏の端正で簡潔な日本語翻訳も素晴らしいことも付け加えておきたい。
いかに人間って潔白に生きれるかどうか。ハンナが最後にとった行動はその証であったのか。
愛を貫くことも心を打たれるのであるが、潔白に生き抜くということは本当に尊くて難しい。

あと付け加えたいのは、加齢による人間の変化というか成長ですね。
第一部で15歳の時のハンナがミヒャエルに取ったいきなり失踪という行動。
辛かったに違いありません。でも心の糧としてずっとその後踏んばるんですね。
そして第三部での出来事、もっともっと辛いはずなのに年齢を重ねて成長したミヒャエルは、結末を強く受け止めているように感じられるのですね。
これはミヒャエルの確かな成長の軌跡の物語とも言えそうです。


尚、本作は2008年に『愛を読むひと』というタイトルで映画化されたが、原作をほぼ忠実に再現しており感動的な作品に仕上がっているので機会があれば是非ご覧になって欲しいなと思う。
主演のケイト・ウィンスレットはアカデミー主演女優賞を受賞しています。

評価10点。
posted by: トラキチ | 翻訳本感想 | 19:26 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『あたらしい名前』 ノヴァイオレット・ブラワヨ (早川書房)
評価:
ノヴァイオレット ブラワヨ
早川書房
¥ 2,376
(2016-07-22)

原題"We Need New Names"私たち読者の大半はジンバブエという国の名は知っていても、アフリカのどのあ
たりにジンバブエという国があることを知らないでいる。
本作は私にとって、アフリカを題材とした文学の登竜門として凄く響く作品となった。本作はブッカー賞の最終候補ともなっていて、作者のブラワヨは本作において読者に訴えかける内容は祖国への愛情に満ちている。
そして特筆すべきは訳者の谷崎由依さんの少女の気持ちを汲み取った繊細かつ軽妙な語り口の翻訳文。
内容的には前半が祖国ジンバブエでの出来事、そして後半が叔母を頼りにアメリカに旅立った主人公ダーリンが語られます。
大半の読者は、前半の過酷な環境の中での苦しい生活のなかでの主人公の方が生き生きと感じられたはずである。
それはジンバブエというアフリカの一国の貧困という現実もさることながら、アメリカ社会で軽く扱われるアフリカ人たちの貧困以外の苦しみの現実の方がより辛いのかと思わずにいられない。
作者の自伝的要素もあるみたいであるけれど、自分の祖国を捨ててアメリカで生きていけない主人公が健気に感じられ胸が締め付けられました。

評価8点

posted by: トラキチ | 翻訳本感想 | 22:33 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『カステラ』 パク・ミンギュ (クレイン)
評価:
パク ミンギュ
クレイン
¥ 1,836
(2014-04-19)

ヒョン・ジェフン&斎藤真理子共訳、日本翻訳大賞受賞作品。
予想通りという言葉が当てはまるかどうかは疑問ではあるけれど、読書好きの間で話題に上がった日本翻訳大賞の第一回の受賞作品は英語ではない言語で書かれた作品が選ばれた。
これは賛否両論あるだろうが、ある一定の成果を得ることが出来たという見方が出来るのではないだろうかと思える。

韓流ブームという言葉も落ち着いた感は否めないけれど、それはドラマや映画の世界でのブームであって小説まで広がることはなかったけれど、今回本作を手に取る機会を得てとっても斬新な読書体験を経験することが出来た。
そして改めてお隣の国ということと、訳が素晴らしいということで私たち読者にとってはすんなりと読み取れることが出来、それはあたかも日本人の作家によって書かれたものと錯覚を起こしそうなほどであった。
表題作を含む11編からなる短編集であるが、初めに登場する表題作の「カステラ」が冷蔵庫に入るアメリカを比喩していて、表紙の写真も含めて最もインパクトが強く、一つの世界観が現われているとも感じたけれど、読み進めていくうちにもっとハッキリと作者の現代に生きる男たちの疲弊ぶりや孤独感がじわじわと読者の胸に沁み込んでくるのには恐れ入った。

ダイオウイカにハルク・ホーガン、感想を書いている今も思わずにやけてしまっています。再読すればきっともっと世界にはまり込めること請け合いの一冊です。というのは作者の最も長けているところは、重い内容を軽い語り口で描写できる点だと思います。翻訳された2人に拍手を送りたいと思います。

評価8点。
posted by: トラキチ | 翻訳本感想 | 21:36 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ストーナー』 ジョン・ウィリアムズ (作品社)
評価:
ジョン・ウィリアムズ
作品社
¥ 2,808
(2014-09-28)

原題"STONER"、春江一紀訳。第一回日本翻訳大賞読者賞受賞作。一人の地味で平凡な文学者の人生を静かに綴った作品と言えば簡単な要約過ぎるのかもしれないけれど、この物語が2015年になって日本の読者に読まれているということに関してはかなりのドラマが潜んでいる。本作が刊行されたのは1965年で約50年前であって東京オリンピックが開催された翌年である。訳者に代わるあとがきを読んで、様々な国で翻訳されたいきさつが書かれていて読者も感慨深いのであるが、最も読者の胸に突き刺さるのは訳者である東江さんの最後の訳本であって、病床につきながら一字一字精魂込めて訳されたということが読者に伝わってくるということである。

この美しい訳文は、たとえば日本人の作家が読者に読みやすい言葉を提供しているのとは180度違っていて、訳者の日本語に置き換えるに際し、まさに芸術的領域と言っても言い過ぎでないほど美しい文章で読者に対して翻訳作品でしか味わえない満足感を与えている。
まるで主人公のストーナーのに乗り移ったかのような魂を込めた訳文、心に響きます。日本語の素晴らしさに誇りを持ちたい気分です。

物語は二つの大きな戦争にまたがって語られます。貧しい農家に生まれた主人公が紆余曲折を経て文学者である人生を終えるまでが語られるのですが、決してサクセスストーリーでないところが本作の最大の魅力点だと思います。そこがアメリカ的ではないのかもしれませんが、あらゆる国の人が読んでも等身大的な作品だともいえ、言い換えれば、読者にとって年齢が高ければ高いほど、主人公の真似が出来そうだけれど出来ないということを経験しているからだと思います。

友人、妻、愛人、娘、教え子など、いろんな人と関わり人生という航路を進んで行く主人公、必ずしも彼の取った行動がすべて正しいとも思いませんが、彼には文学という彼の人生の骨格となるものがあるからこそ歩むべき道が誤ってなかったとも言い切れそうです。
本作を手に取ることによって、文学の奥の深さを再認識された方も多いかと思います。本作に出会えたことが自分自身を見失わなく、小さな幸せを探求することの大切さを教えられました。

評価10点。
posted by: トラキチ | 翻訳本感想 | 18:34 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『カオス・シチリア物語』 ルイジ・ビランデッロ (白水社)
イタリア半島西南の地中海に位置するシチリア島を舞台とする短編集。
作者のビランデッロ(1867-1936)は恥ずかしながら知りませんでしたが、劇作家としても有名であり小説家として1934年にノーベル文学賞を受賞しています。

16編からなる短編集であり書かれたのが1910年前後で約100年前、読みにくそうなイメージがつきまとうのであったが、翻訳が新しく(本作の刊行が2012年7月)文章は頗る読みやすい、訳者の努力に敬意を表したく思う。
内容的には多岐にわたり、プロローグに出てくるカラス達が散りばめられて登場しているような錯覚に陥る。
滑稽な話や深読みすれば悲しい話などもあり、本を閉じる時に大半の読者が目の当たりにしたことがないシチリア島のイメージがおぼろげに映像化出来るのであるが、人によってはくっきりと浮かぶのだろうか。
どうなんだろう、やはり時代が移ろっても人間にとって普遍的なものを描いているのでしょう、苦しくてやるせないのは自分だけじゃないと言うことを謳っているのかなと全体像的には捉えています。ほとんどの作品が第一次大戦前後に執筆されている点は忘れてはならないのでしょう。
本作のような作品集はじっくり読んで堪能すべき作品であると考えます。機会があれば再読したい。

ちなみに作者はシチリア島のカオスの出身である。
白崎容子・尾河直哉訳、<エクス・リブリズ・クラシックス>シリーズの一冊。

評価8点。
posted by: トラキチ | 翻訳本感想 | 15:11 | comments(1) | trackbacks(0) |-
『やんごとなき読者』 アラン・ベネット著 市川恵里訳 (白水社)
評価:
アラン ベネット
白水社
¥ 1,995
(2009-03-11)

 <本好きにとっては必読の一冊。
ひょんなことから読書に耽るようになったエリザベス2世。
イギリス的滑稽さとユーモアに溢れているところも楽しい。
何より読書という行為を擁護しているところが全体に滲み出てる
一冊。
微笑ましいラストには思わずニンマリせざるをえません。>


市川恵里訳。
ひょんなことから読書に耽るようになったエリザベス2世を描いた作品。
エリザベス女王が本当に凄く人間臭くって身近に感じられます。
ちょっとしたきっかけでもって何かにハマって行くということ、私たち読者も読書だけでなく身に覚えがあると思います。
ましてや、本作では私たちの大好きな読書に嵌っていくのですね。
だからどうしても心の奥底からエリザベス女王に応援しながら読んでる自分がいます。


それと、多少考えさせられたのはやはり、周りから見た読書家に対する排斥的な考えがあるということですね。
これは作者の言うところのイギリス人の上流階級の国民性も出てるのですが、これは万国共通だと思います。
良い勉強になりました。

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posted by: トラキチ | 翻訳本感想 | 20:54 | comments(2) | trackbacks(2) |-