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『まんまこと』 畠中恵 (文春文庫)
ドラマ化を機に手に取った。『しゃばげ』シリーズと並ぶ作者の代表シリーズであるが、本シリーズの方が正統派人情シリーズとして勝負しているところがNHK的には好都合であったように見受けられる。

町名主の跡取り息子として麻之助が主人公で身にふりかかる事件を解き明かしてゆくミステリー仕立ての連作短編集で、登場人物のキャラクターが頗る明確で読者にとってユーモア満載で温かくかつ心地よく感じられる。
現在第五作まで刊行されている本シリーズであるが、第一弾である本作では麻之助の縁談話が勃発し、彼を取り巻く人たちが一通り紹介されてゆくといった形で、仲の良い三人組の活躍と成長、サブキャラのサイドストーリー、具体的に言えば麻之助の父親の宗右衛門、清十郎の父親の八木源兵衛、両名主の子供を想う気持ちを語る編が是非読みたいなと思って本を閉じた。

お気楽な人生を歩んでいる麻之助にとって16歳の時のある出来事が彼の人生のターニングポイントとなったのであるが、本作の後半にそのほぼ全貌が明らかにされる。彼の二歳年上の憧れの人で現在は人妻であり親友清十郎の義母であるお由有に対する気持ちの表れと変化、そして寿ずとのという縁談相手との将来がどうなるか、各編それぞれの味わい深い話とともに主人公を取り巻く魅力的な人々との変化が読者にとって目が離せなくなる。
次作からはお由有のことを忘れるほど寿ずが魅力的に描かれているかを念願して読んでいこうと思っている。

評価8点。
posted by: トラキチ | 時代小説 | 19:51 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『恋歌』 朝井まかて (講談社)
評価:
---
講談社
---
(2013-09-27)

書き下ろし作品、直木賞受賞作。朝井さんは『すかたん』という作品しか読んだことがありませんでした。イメージとしては新しい時代小説の書き手という漠然としたものだったのですが、本作においてその才能を一気に開花、見事初のノミネートで直木賞を射とめました。
率直な感想を述べると、以前のユーモアをベースとした作品よりもずっと次元の違う高い位置まで上り詰めた感じがします。
直木賞の受賞パターンにもいろいろありますが、本作に関しては作家の一つの到達点であると感じます。最近の例でいえば葉室麟さんの『蜩ノ記』も同じようなタイプであるでしょう。

たとえて言えば、『永遠の0』を読んでこの小説にめぐり会えて良かったという感激した気持ちというものを持たれた方が多いと思いますが、それと同じような読者に訴えかける作品であると考えます。
樋口一葉の師として知られ、明治の世において歌塾“萩の舎”を主宰した中島歌子を主人公とした歴史小説ですが、描かれているのは商人の家に生まれた彼女が水戸天狗党の志士に恋してそして嫁ぎそして時代に翻弄されてゆく姿が中心です。

とりわけ天狗党の乱以降の投獄中以降のシーンは圧巻であり、歴史は繰り返してはならないと思われた方が大半だと思います。
運命に翻弄されつつも自分の愛を貫く姿と言えば簡単ですが、想像を絶する辛さがありひしひしと伝わって来ます。
後に彼女が成功するのは、苦労を乗り越えたからであるというのは誰にでもわかりますが、それ以前に夫の分まで前向きに生き抜こうと感じたからでしょう。
それにしても彼女の愛の強さは強固なものであり、亡き夫の支えがあったからこそ彼女の人格が向上し最後の澄のエピソードが不自然に感じないほど読者の胸の内に溶け込んだと思われます。それにしても素敵な物語を読ませていただきました。読書の素晴らしさを教えてくれる一冊だと確信しております。

評価10点。
posted by: トラキチ | 時代小説 | 21:59 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『三屋清左衛門残日録』 藤沢周平 (文春文庫)
1989年単行本発売。10年ぶりの再読。

藤沢周平の円熟の境地を示した完成度の高い15編からなる連作短編集。
主人公である清左衛門は藩の用心としての職をしりぞき、家督を息子に譲り、離れに隠居し日録を記し始めるところから物語は始まります。
特に始めはいざ隠居するも世間から隔絶された気となり、自閉的になりそうな所を徐々に打破して行く過程が見所です。
息子夫婦に対する気遣いや、昔の友達との確執。あるいは釣りや道場通いもします。
でも永年培ってきた彼の“人徳”が打破してくれます。現代に生きる我々としたら主人公に自分の定年後の理想像を見出せます。

途中から藩の藩の派閥争いに巻き込まれますが、なんといっても佐伯をはじめとする旧友との再会が読んでいて楽しい。
あとは美味しい料理を出す「涌井」のおかみであるみさに対する淡い恋心も彩りを添えています。
年を重ねることの素晴らしさを綴った作品ですがいろんな人がの人生模様が駆け足で描かれている点も見逃せませんよね。

個人的な意見の域を超えませんが、藤沢周平が山本周五郎との作風の違いは本作にて最も如実に表れていると考えます。それは主人公の人望の厚さがまるで藤沢周平自身を彷彿させている点であります。作者は“今を大切に生きなさい。そうしたらきっと光がさして来ますよと”と示唆してくれています。
読者は読み終えた後、そうですね“藤沢先生からバトンタッチされた”ような気になって明日からの活力とすることが出来るのです。平凡で誠実に生きることの尊さを学び取るのに藤沢作品に勝る教科書はないと考えます。
NHKで「清左衛門残日録」というタイトルでドラマ化されています、原作に劣らない素晴らしい出来栄えでした。

評価9点。
(読了日6月21日)
posted by: トラキチ | 時代小説 | 17:15 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ある男』 木内昇 (文芸春秋)
評価:
木内 昇
文藝春秋
¥ 1,680
(2012-09-27)

初出 オール讀物。

明治初期の社会が混沌としていた時期に、国家の転機という時代に翻弄されながらもひたむきに生きる7人の男を綴った7編からなる短編集。
この作品が最も成功している点は内容はもちろんのこと、それぞれの話の主人公に名前を与えていなくて“男”と表記している点である。
実在したのか作者の創作なのかは若干わかりづらいのですが、少なくとも具体的な名前を出さないことによって読者である私たちが主人公に成り代わって読み進めることが出来ます。
もちろんすべての“男”たちがいわゆる共感できることをしているわけではないのですが、そのあたり目線を低くすることによって感動度が増しているように思えます。
そしてそれぞれの人物が総じて“要領が悪くって社交的じゃない”ので何となく読者自身を投影して読むことを余儀なくされます。
そのあたりは暗澹とした時代、国家と言う存在の大きな時代で
それぞれの物語の結末も結構やるせない終わり方が多く、それが却って余韻が残るのです。

もっとも印象的に残ったのは「女の面」、脇役である妻と嫁との対比が秀逸です。私は洞察力の鋭い妻より健気な嫁を応援したいです(笑)
私の口から言うのも何ですがそれにしても木内さん、確かな筆力です。
無駄な言葉等一切なく、他の作家では表現できない領域の作品だと確信しています。
作者が寡作であることも含めて何度も味わって読むべき作品です。

(読了日10月29日)

評価9点。
posted by: トラキチ | 時代小説 | 17:37 | comments(2) | trackbacks(0) |-
『すかたん』 朝井まかて (講談社)
評価:
朝井 まかて
講談社
¥ 1,680
(2012-01-11)

わけあって大阪の青物問屋・河内屋で女中奉公することとなったかつて武家に嫁いで後家さんとなった江戸出身の知里を主人公とした物語。珍しく大阪を舞台とした時代物で、各章ごとにタイトル名でもある“すかたん”を初め“ぼちぼち”、“かんにん”など大阪言葉を使っていて目新しく感じます。関西人の読者には親近感を覚えずにはいられない一冊だと言える。
しっとり感にはやや欠けますがテンポよく読める作品で、作者である朝井さんは魅力的な女性を描くのに長けていると思います。主人公で江戸ッ娘の知里のみならず、志乃さんや小万さんの行動や生き方は感心せずにはいられませんし切ないです。
少し清太郎がまっすぐすぎて頼りなげでかつ滑稽な人物なように思えるのですが、それは“すかたん”と言う言葉で形容出来るから仕方がないのでしょう。そのくらいの人物でないと天国の数馬に申し訳が立たないのかもしれません。でも知里への思いやりは清太郎も負けてはいないと信じて本を閉じました。

朝井さん初挑戦しましたが文章が読みやすいですね。
時代小説は風化しにくいですが、内容の是非はともあれ、やはり山本周五郎の作品と比べたらずっと現代的です。
本作が作者の3作目の作品でもうすぐ5冊目が出ます。早くコンプリートしてどんどん追いかけたいと思っています。

(読了日10月19日)

評価8点。
posted by: トラキチ | 時代小説 | 16:16 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『笑い三年、泣き三月。』 木内昇 (文芸春秋)
評価:
木内 昇
文藝春秋
¥ 1,680
(2011-09-16)

初出 別冊文芸春秋。

直木賞受賞第1作。
昭和21年、ちょうど日本が戦後復興に入るところから物語が始まります。
主な登場人物は下記の4人。
旅回りの万歳芸人の岡部善造、活字中毒の戦災孤児の田川武雄、ひねくれ者の復員兵の鹿内光秀、そして紅一点ダンサーのふうこ。
舞台は東京・浅草のストリップ小屋、ぼろアパートでの4人の共同生活が途中から始まります。
作者はその時代を“卵かけご飯”がとっても贅沢だった時代だと表現しています。 はじめはちょっととっつきにくい登場人物にページが進みにくいのですが心配無用で、やがてそれぞれの個性的な人物たちの魅力にとりつかれます。
それぞれが夢を持って生きていることが共感の一番大きな要因だと思います。
読み始めに主人公だと思ってた善造が実はそうとも言えず、もっともまっとうな人物であることに気付かせてくれます。 個人的には光秀の勘違いの恋が滑稽でしたし、戦争孤児の武雄の意識の変化がもっとも感動的でした。

あとはふうこさんですね。女性としてはどうかわかりませんが、人間としては魅力的だと言っておきます(笑)
主要登場人物それぞれ少なくとも私の希望通りに物語を集結させてくれるあたり作者の筆力の高さが窺い知れるものだと言えそうです。
作者はいろんな価値観の人生があって、それぞれを肯定かつ応援しています。それは現代に生きる私たちにも通じていてまるで読者の背中を押してくれているように感じられますね。
もちろん、現代に生きる私たちも悩みは多いのですが本作に登場する人々ほど大きなものを背負っていません。

それはやはり国家自体が背負った戦争というものの代償の大きさだと思います。
いわば、私たちの悩みは“こうして日本が成長し豊かになったがゆえに生じた悩み”なのでしょう。
だから前述した“卵かけご飯”を食べる当時の贅沢なシーンが凄く生々しく感じられます。
それは私たちが贅沢になりすぎて忘れてしまったものが大きいということだと思います。
それを作者は個性豊かで夢があって逞しい登場人物を交えて読者に知らしめてくれたのだと思います。

「漂砂のうたう」同様、見事な時代考証は参考文献の多さからも窺い知れますが本作の方が救いが多く万人受けする内容だと思います。

最後に私たちが本作のような作品を読めることは日本が見事に復興したことの証しだと思います。
小さなことにくよくよしてはいけない。
必ずそう思わせてくれるそれほど本作は読者に元気をくれる一冊です。

評価9点。
posted by: トラキチ | 時代小説 | 19:54 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『日無坂』 安住洋子 (新潮文庫)
評価:
安住 洋子
新潮社
¥ 420
(2010-11)

<過去を振り返り悔むよりも、明日を見つめることの大切さを教えてくれる一冊>

初安住作品でしたが、まるで現代ものを読んでるような感覚でスラスラと読めてしまう読みやすさには驚きました。
軸は親子愛ですが、私は兄弟愛も凄く印象的に描かれていると感じました。
ほとんど男女の恋愛話が描かれてないのですが、読者を飽きささずに一気にラストまで読ませてくれます。
思わず自分自身の人生をみつめなおす機会を得ました。
作者に感謝です。

物語の軸は前述したように“親子愛”です。
主人公の伊佐次は江戸の老舗薬種問屋・鳳仙堂の跡取り息子として生まれ元の名は利一郎といいます。
でもわけあって今は浅草の賭場を仕切っています。
なぜ転落したかと言うと父親である利兵衛との確執です。
利兵衛は入り婿で婚家に気を使い、逆にわが子に対しては厳しくふるまうのです。
まあ、子供が可愛くない親はないのですが子供の頃は親の苦労が子供にはわからないですよね。
そして勘当されてしまいます。
でも会ってなくても親子愛は存在します。

タイトルともなっている“日無坂”、父と息子が最後にすれ違った坂なのですが、凄いドラマがあります。
ひとことで言えばそうですね、“すれ違ったのですが、お互いの心が永遠に触れ合うきっかけとなった坂”なのです。
このあたりあまり詳しく書くと興趣をそぎますので読んでのお楽しみですね。
弟の栄次郎の存在感も凄いです。あまりに頼りないのですよ。まあ伊佐次といかに心を通わせていくかが終盤の読ませどころとなりますし、楽しめました。
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posted by: トラキチ | 時代小説 | 20:43 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『漂砂のうたう』 木内昇 (集英社)
評価:
木内 昇
集英社
¥ 1,785
(2010-09-24)

<人生逃げてたら駄目だよと読者に教えてくれます。 学ぶべき点が多い有益な一冊。>


第144回直木賞受賞作品。時代小説と幻想小説を融合したような作品。舞台は明治十年の根津遊郭 。人間って儚いけど力強い生き物なのですね。 臨場感のある描写が見事で作者の筆力の高さを証明しています。主人公である定九郎と龍造との生い立ちの違い、生きざまの違いを対比して読むことによってこの物語の奥行きの深さを味わえると確信しております。 メインテーマはやはり“自由”になるのでしょう。あと女性がたくましいのですね。

少し主人公である定九郎に焦点を当てて書きますね。
江戸から明治へと時代は変わっているのですが、人間は変わりにくいのですね。
ましてや身分が武士から身分を隠して立番として働く身となれば。

女性の読者が読まれたら定九郎のような男にはイライラすると思います。
でも私はそうは思いませんでした。他の登場人物よりも個性はないけど人間らしい面はあると思います。
私はその不器用さがなんとも言えず魅力的に感じました。
現代に生きる私たちに通じる部分が多く、この物語で成長したとまでは言い難いですが、わずかな希望をつかみ取ったとは言えると思います。
だから、これから苦しいことにぶち当たった時に自分を定九郎に置き換えて読んでみる、すなわち初心に帰るということですね。
少し読み違えかもしれませんが、こういう読み方もあるんだなと思ってください。
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posted by: トラキチ | 時代小説 | 22:04 | comments(0) | trackbacks(0) |-