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『氷の轍』 桜木紫乃 (小学館)
評価:
桜木 紫乃
小学館
¥ 1,728
(2016-09-27)

現代作家で好きな作家を個人的に5人挙げよと言われたら必ずその中に入るであろうという桜木さんであるが、本作は桜木作品の中でもミステリー仕立てとなっているのが大きな要因であろう、少し読者の胸の内に響く度合いが少ない作品となっているように感じる。

舞台は作者十八番の北海道・釧路。いきなり身元不明の老人男性の死体があがります。捜査するのは『凍原』の松崎比呂刑事の後輩大門真由刑事。彼女の父親も元刑事であるのですが、現在闘病中であり元婦警の母親が自分の娘ではない真由を受け入れて生活しているのがポイントとなっている。
釧路→札幌→釧路→青森と事件の捜査は定年間近の片桐とと
もに追いかけてゆきます。
途中から明らかになる老人男性とある母娘との接点が作者得意の人間ドラマ風に語られて行きます。
ただ、捜査を絡めながら迫る必要性があったのかというところが母娘たちの悲しい人生をあぶりだす点において他の桜木作品ほど描かれていなかったように思えます。
あとは、殺人の動機が弱かったことにつきます。ミステリー仕立てにすることにより、主要人物の人間としての骨格がややぼやけてしまっていることが残念です。

少し難点を書きましたが、逆に桜木作品は読者にいろんな読み方を示唆してくれるのも事実であります。
たとえば両母親(真由の母の希代と行方佐知子)との比較はほとんどの読者が感じとれることだと思います。
方や自分の娘を売る母親、そして方や自分の夫が外で作った女の子を自分の実子のように育てる母親。

男性読者の私はどうしても天涯孤独の滝川老人が最も不幸に思えました。
彼が北原白秋の詩に自分の魂を込めて書いた手紙は涙を誘います。
悪意もなく報われない人生だった彼でしたが、そっとしておいた方が良かったのでしょうが、桜木作品に登場する男性はそこまで強くありません。

桜木作品、幸せの形は多様であり奥が深いのは承知の上で言わせていただけたらやはり小百合の心の内が隠されていたのが心残りだったのですが、やはりそこは読者に委ねたのでしょうか。
ひとつの作者の解答として、彼女の息子と商売を一生懸命にしている姿が読者にはくっきりと伝わったことであろうか。
やはり小百合は幸せであると信じて本を閉じざるを得なかったのが私の読み方であった。

余談ですが、本作は柴咲コウ主演でドラマ化されておりますが設定等かなり違いがあります、ドラマはドラマでそこそこ楽しめますが。

評価7点。
posted by: トラキチ | 桜木紫乃 | 19:07 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『裸の華』 桜木紫乃 (集英社)
評価:
桜木 紫乃
集英社
¥ 1,620
(2016-06-24)

初出「小説すばる」。作者の作品はコンプリートしていて、自分なりに桜木紫乃の作品像というのが出来上がっているのであるけれど、本作は新たなステップを踏み出した一作だと感じる。
作者の作品に登場する大多数の女性像はどこか不幸を背負っていて、運命に翻弄されながらも生きていく哀しい部分が読者の共感を呼んでいたのであるけれど、本作で主人公を演じるノリカは自分自身で人生を切り開いていく力強さを持っている。

ストリッパーとして生きて来た彼女も40歳となり骨折し踊れなくなり、舞台を諦めてダンスシアターを始めますが選んだ再出発の場所はストリッパーとしてのスタート地点である札幌。
札幌でのダンスシアターの一年が主に描かれているのですが、季節感が本当に出ていて素晴らしいと感じますし、いつもの桜木作品よりも前向きさが溢れていると感じます。

桜木紫乃が描くストリッパーは矜持に溢れていて、私たちがイメージしているものとは違って潔さが漂っていると感じます。ノリカのストリッパーとしての矜持が弟子となる2人のダンサーであるみのりと瑞穂を生き生きと描き出している点が本作の特徴であると感じます。
言い換えれば、若い二人がノリカをリスペクトする気持ちが作品全体を通して滲み出ていて、心地よいストーリーの流れを醸し出しているように思います。お若い女性読者が読まれたら、みのりと瑞穂のどちらかに自分自身を委ねて読んでみるとより味わい深く感じられますよね。
そして脇を固める竜崎や牧田、訳ありなのは他の桜木作品と同様ですが、彼らの存在なしではノリカやダンサーの成長は有りえません。
とりわけ竜崎との出会いは物語全体を構築する大きな部分であると感じます。あとはエピソード的にはノリカのファンであるタンバリンのオジサンの話が心に残りました。

本作は他の桜木作品のようなドロドロ感が影を潜めていて、やはり踊り子としての矜持が貫かれているところが素敵であると感じます。
読ませどころは、初めは2人の若い女の子に自分自身の夢を委ねていたノリカが気持を新たにしてゆく部分というか、彼女たちに覚醒されていく姿が読者に深く伝わる所だと感じます。
店を畳んだのは少し残念なようにも思いましたが、2人の若い女の子の将来のため=自分自身が踏み出すためだったのですね。
いつもの桜木作品では味わえないさっぱりとした感動を覚えました。

余談ですが、冒頭に出てくる宮越屋珈琲店ですが、本作を読み終えた直後に札幌に行く機会に恵まれました。とっても美味しいコーヒーを出すお店であります。次回以降も札幌を訪れるたびにコーヒーを飲むことになりそうです、本作を思い出しながら・・・

評価9点。
posted by: トラキチ | 桜木紫乃 | 20:46 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『霧 ウラル』 桜木紫乃 (小学館)
評価:
桜木 紫乃
小学館
¥ 1,620
(2015-09-24)

初出「STORY BOX」加筆修正あり。釧路がホームグラウンドの作者が釧路よりもっと道東である国境の町根室が舞台の三姉妹の物語で作者の繊細かつ力強い文章を堪能できる作品である。
時は昭和三十年代、他の桜木作品と毛色の違うのは三姉妹がその土地の有力者と呼ばれるべき河之辺家の出であるところでいわば貧困感が一切ないところであろうか。
主人公格で次女の珠生は三姉妹の中で最もアウトロー的な生き方をしていて、花街の世界に飛び込みその後ヤクザに嫁ぐのであるが、小説の世界とは言え夫である重之の描かれ方は職業は別として魅力的に描かれていて彼の成り上がりストーリーとして読んでもそれなりに楽しめそうである。

一方、長女の智鶴は政界入りを目指す運輸会社の御曹司に嫁ぎ、珠生とは逆に計算高い人生を進んでいるが、やはり次女が家を飛び出したから抑圧されてる面も根底にあるのであるが、次第に男性(とういか嫁いだ家庭)を翻弄してゆく姿が珠生の翻弄されている姿と対照的である。三女の早苗は2人の姉の愛憎を両睨みして生きている姿が健気なように見えるけれど実は選択肢のない人生を歩んでいて儚いと感じる。

舞台が根室なのは根室半島の前に国後島が聳えて見え、登場する男たちの出自や根室を支配する人たちとの利権に関わるところが凄くタイトル名ともなっている霧のようであり、登場人物たちの運命に翻弄されそうであっても迷いながらも自分自身の意志で生きて行こうとする姿の象徴のように感じるのである。

物語全体として、他作に漂う貧困さが滲み出ていないために決して悲しくはないけれど、終盤に明らかになる珠生の夫や夫の愛人の行く末を受け入れながらも夫の愛人の娘を育てようとする珠生に、強い夫に対する愛情を感じた。要領の悪い人生だとも言えるかもしれないけれど、三姉妹の中で一番好きな人生を選んだのも事実で後悔はしたくないのであろう。
彼女の選んだ人生を応援してあげたい気がする。
彼女の人生は儚いけれど力強い。

評価9点。
posted by: トラキチ | 桜木紫乃 | 18:24 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『それを愛とは呼ばず』 桜木紫乃 (幻冬舎)
評価:
桜木 紫乃
幻冬舎
¥ 1,512
(2015-03-11)

初出地方新聞、加筆訂正あり。桜木紫乃・・・現在新刊が出て最も読みたい作家でありタイトル名の華やかさに加え、帯の“桜木紫乃、最高傑作”という言葉がファンにとってこれまで数々の力作を披露してきた作者の力量からして、凄く期待の持てる読書を臨めたのであるが、読み終えた今となってはそれが惹句だったと個人的には解釈している。
個人的に最高傑作だと思っている『ラブレス』なんかと比べると物語の重厚感や読者に対する衝撃度がかなり落ちると言わざるを得ない。
その理由を述べると、やはり桜木作品の特長である物語に読者を引き込む吸引力が他作品よりも欠けているような気がするのである。

それは女性主人公である紗季、少し補足すると彼女は釧路出身で女優志願であるが物語の冒頭でその夢が破れる29歳の女性なのであるが、他作品に登場する女性と比べて読者にとって圧倒的に共感度が低いのである。桜木作品を読み男女比率は予想するに3対7ぐらいだと思っているが、男性読者はいいとしても女性読者にとっては器量よしの主人公はマイナスイメージが付きまとうと考えます。
そして男性主人公の亮介、彼はいろんなことに板挟みにされる苦労人として描かれているのであるが、紗季にとってそれほど魅力的に映る人物であろうか、物語の整合性を問えばきりがないけれど弱いような気がします。ただ彼が紗季になびかずに年上の愛妻章子への愛を貫いたように読めるところは、愛想がないのかもしれませんが逆に立派だっとと捉えられることも出来、唯一褒め称えたいところでもあります。

桜木作品は通常暗くて重苦しい中にも芯の通った力強さが貫かれているのですが、物語のメインでないと思われる部分にそれが注がれていたとも言えるのが残念でもあります。私の読み違えでなければ、ラストは驚愕というよりも唐突過ぎたように感じられるのであるが他の読者はどう感じられたであろうか。読者個々に読み取り方があるのであろうが、個人的には確かにサプライズな出来事であったけれど、そこに行きつく過程をもう少し克明に語ってもらいたかったとは思っている。
作者的には紗季の行動が相手に対して“愛”をもたらしたという主張だと考えますが・・・
物語の結末を読み終えて、いつものようなずしーんと胸に迫るものが足りなかったというのが本音であった、愛と狂気を取り違えているような感じである。
やはり桜木作品にはもっと根本的に“浪漫”が必要であると感じるのであるが、作者が一歩先に進んだということであろうか、次作以降もっと注目してみる必要がある。

少し難点を書きすぎましたが逆に新鮮な気持ちで読める部分もあります。それは物語が従来の釧路を中心とした限定したエリアで展開されない点があげられます。
新潟、東京、北海道とほぼ均等に描かれています。そして桜木作品に付き物である官能的な部分が皆無と言っていいのが驚きでもありました。
官能シーンはないけれど誰も真似の出来ない美しい文章は健在です(笑)

評価6点。
posted by: トラキチ | 桜木紫乃 | 23:32 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ブルース』 桜木紫乃 (文藝春秋)
評価:
桜木 紫乃
文藝春秋
¥ 1,512
(2014-12-05)

初出「オール讀物」。八編からなる連作短編集で成り上がりと形容して良さそうな一人の男を描いているのであるが、作者の作風や読者層からしてそれぞれの編に登場する女たちの物語という捉え方の方が正しいようにも思える。
前作『星々たち』と前々作『蛇行する月』でも周りの人間から見た主人公ともいうべき人物をくっきりと浮かび上がらせる作風を取っているが、読者サイドからして主人公が女性だったために本作とはかなり違った印象を受け、そのために新境地作品とも捉えることが出来ると感じる。

それは主人公である博人の個性が際立っていることが最大の理由である。彼は指が六本あって作中で一本をそぎ落としてしまうのですが、それがまるで不要な過去との隔絶のようにもとれるし、そのあとかた(瘤ですね)がその後の武器ともなっているようにも感じられます。
そのバランスが読者にとっては絶妙で、思わず上手いなと唸らされました。
女性が主人公の場合、どうしてもその人物が不幸か否かという読み方を主導してしまい作者の力強い文章と相まってグイグイと引き込まれるのであるが、本作は主人公である博人の出自の不幸さをバネにしてのし上がっていく様が決して綺麗ではないけど、思わず肩入れしたくなる程度に真っ直ぐに読者サイドへ到達しているところが素晴らしいと感じる。

そして各編の女性それぞれが博人と関わることによって、人生をより味わい深いものとしているようにも見受けれます。
ちょうど時代が昭和から平成に変わるところというのも本作にとっては重要なポイントで、ある程度の年齢を経た読者にとっては懐かしい楽曲が出て来たりして、その当時の釧路に思いを馳せる作者の気持ちが力強く読者に伝わるところなんかは他の作家では決して味わえない部分だと感じます。

称賛すべきと感じる所は、博人が選んだ女性が最も読者サイドからして納得できる人物であるという点である。これは私自身のひとりよがりな感想でないことを願っているのであるが、その選択が博人にとって、ある種悲哀に満ちたというよりも充実した人生を過ごしたというように読み取れたことの手助けとなっていると強く感じた。
男性一読者として、決して博人の生き方が正しいとは思わないが、力強い生き様は読者に勇気を与えていることは間違いないところでもっと自分を鍛えなければという気持ちにさせられました。

(読了日2014年12月26日)

評価9点。
posted by: トラキチ | 桜木紫乃 | 00:37 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『星々たち』 桜木紫乃 (実業之日本社)
評価:
桜木 紫乃
実業之日本社
¥ 1,512
(2014-06-04)

初出「ジェイノベル」、加筆訂正あり。桜木作品の新刊を読むごとに今度はどんな女性が描かれるか胸を膨らませて読むことを余儀なくされるが、今回も期待を裏切られなかった。前作『蛇行する月』が周りから見た一人の女性の生き様を描き、女性の幸せを問うた秀作であったのは記憶に新しいのであるが、本作は前作をより進化させ、千春という一人の女性の決して幸せとは言えないが人生であるが、周囲の人々により翻弄されてゆく姿が訥々と描かれている。前述したように決して幸せとは言えない人生であるが、まるで読者自身の不器用な部分を千春という人物に見出すことが出来る点が本作においては一番の読ませどころのような気がする。

読後感の良い作品か問われれば決してそうではないという答えが一般的なように感じるのであるが、悲劇的ということでは片付けられないやるせなさのようなものを感じ取ることが出来ればより進化した桜木作品の読者に成り得たと言えよう。女性サイドから見れば男運のない主人公ということになるのであろうが、健気とか懸命という言葉が当てはまるかどうかは別として、咲子→千春→やや子という三代に渡る生き様が描かれているのであるが、私的には女性の幸せを問うた他の桜木作品とは違って生きることの価値を見出す作品だと言えそうですね。

そして母娘だけでなく千春と関わった人物の悲哀を通して、千春という女性を認めるというか許すというか言葉では表現しづらいのですが読者自身が包容してあげることが出来れば桜木作品を堪能出来たということができるのじゃないでしょうか。奥が深いのが桜木作品の特徴ですが、厳しさを読み取ることにより優しい気持ちになることが読者にとっても明日の糧となりますよね。

評価9点。

posted by: トラキチ | 桜木紫乃 | 21:47 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『硝子の葦』 桜木紫乃 (新潮文庫)
評価:
桜木 紫乃
新潮社
¥ 594
(2014-05-28)

著者作品ではお馴染みの釧路を舞台とした作品であるが、他作品よりもミステリーテイストが強いと感じます。
桜木作品を好む読者は、その安心して身を委ねることができる骨太の作品の世界が魅力であるのでしょうが、本作が他作と一線を画している点は女性の幸せを模索しているところよりも女性の脆さを描いているといった感じで読んでしまいましたが、果たして妥当な読み方だったかどうかはあまり自信はありません。
しかしながら、他作品における女主人公ほど節子が世の中に対して真っ直ぐに生きているように思えず、そこがかわいい女性と映る所以なのか否かは凄く微妙であって読み終えた今も判断しかねるところだと感じます。

というのは彼女自身、母親の愛人だった男と結婚しつつ、もう一人の語り手である税理士である澤木との愛人関係も続けています。
読者としては他の登場人物よりもずっとまともに映る澤木に愛されているという節子の生き方に興味が湧きます。

登場する女性陣、非常に強烈です。倫子・まゆみ親子を筆頭に夫の前妻の娘である梓に主人公の母親。決してどの人物にも共感は出来ないのだけど、情熱的で逞しいという観方もできるのでしょうけど作者の女性に対する手厳しさが出ているように感じます。
裏返せば、誰もが個性的で主人公に成り得ることが出来ると思います。
読み物として冒頭の事件をどう収束させるかが興味深かったのですが、途中からはクライムノベル的要素が詰まって来て結構ハラハラさせられました。

個人的には本作における恋愛模様は小説内にとどめて欲しいし、真似もしたくはないがひとつの結論として他の桜木作品ほど力強さには欠けるとは思いますが、エンターテイメント性溢れるエンディングは多くの読者に強く余韻が残った作品であることは間違いありませんが、感動度は薄いと言わざるを得ないというのが率直な感想で少し作者の迷いというのも感じ取れたました。


評価8点。
posted by: トラキチ | 桜木紫乃 | 21:19 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『風葬』 桜木紫乃 (文藝春秋)
評価:
桜木 紫乃
文藝春秋
¥ 1,404
(2008-10)

作者の初の長編作品となる書き下ろし作品。たとえば壮大で骨太な形容が似つかわしい『ラブレス』なんかと比べたら読後の満足感は落ちるのであろうが、こぢんまりと桜木作品の魅力が満載されたというと聞こえが良いかもしれないけど、ステップアップ過程の桜木作品を楽しめる作品だと言える。
舞台は道東の釧路及び根室で2組の家族(書道教室を営む篠塚夏紀と元小学校教師の沢井優作)が描かれているのであるが、その2組の家族(それぞれの母と父)の接点がこの物語のすべてと言って過言ではないのであろう。
認知症を患っている母親の“ルイカミサキ”という言葉を聞いて夏紀が涙香岬を訪れ物語が進みだします。
拿捕事件という北海道特有の題材も使われており作者の郷土に対する深い愛情を感じずにいられません。
物語全体ミステリー&サスペンスタッチな面もあり、他の桜木作品と比べて異色と言えばそう言えるのかもしれませんし、初期作品(成長過程作品)ということだと納得が行くのでしょう。

桜木作品の特徴はやはり読んだ後に心に沁みる部分が大きいことだと思いますが、本作も運命に抗えない辛さが根底にあるのですがやはり哀しすぎるのと、あと他作では感じなかった読者として消化しきれないやるせなさを感じたのです。
原因として本作はわずか200ページあまりの作品ですが詰め込み過ぎたことがあげられると思います。
決して薄っぺらいということはないんだけど、深い愛を掴みとることが出来なかったような気がします。
気になったことを書きとめておくと優作の妻の風美、是非幸せを掴みとって欲しいです。

評価7点。
posted by: トラキチ | 桜木紫乃 | 00:12 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『起終点駅(ターミナル)』 桜木紫乃 (小学館)
初出「STORY BOX」 加筆改稿あり。著者お馴染の北海道を舞台とし「無縁」をテーマとした短編集。
桜木作品にハズレはありません。本作においてはいつもの桜木作品以上に孤独に苛まれつつも、強く生きていく人達の“再生”の姿がドラマティックに描かれています。

悲惨な状況におかれつつもなんとか希望を見出し前を向く姿が痛々しいけど切なく読者に伝わります。作品集のタイトル名どおり、それぞれの主人公たちが過去を振り返りつつも清算を行い、そして新たなスタート地点に立つ物語群なのですが、人によっては本当に残りわずかである人もいます。残りわずかである人ほど読者にとっては感動度の増す物語として吸収することが出来るような気がします。そして桜木作品を読んだ喜びというか満足感の結果として凄く体内にポカポカとして消化して行ってるような気持ちにさせられます。

とりわけ印象的なのは表題作の国選弁護士である鷲田弁護士と依頼人の心を通わす過程、そしてラストの32型テレビをプレゼントされたひらがなしか書けないたみ子さん、人生に覚悟は必要ですよね。あとは二つの物語で主役を張る若い新聞記者の山岸里和、紺野との確執や恋人圭吾との行く末も気になりますね。
釧路や札幌以外のスポットも出てきて、地名を地図で場所を調べるとより充実した読書を楽しめるような気もします。

余談ですが、時代小説の大家である山本周五郎や藤沢周平の作品を読み進めようと思っていても、私自身の心の中で葛藤が始まりどうしても桜木作品の未読のものを優先して手に取ってしまいます。
それは2人の作家と同じように読者の心に訴えかける作品を著者が世に送り出していると私自身が判断しているからである。これからも読者の心を揺さぶり人生の糧になる作品をずっと書き続けて行ってもらいたいものだと切に願っています。

評価9点。
posted by: トラキチ | 桜木紫乃 | 15:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『誰もいない夜に咲く』 桜木紫乃 (角川文庫)
桜木さんの独立した短編集は初めて読みますが、長編及び連作短編同様ひしひしと読者に訴えかける内容は健在です。桜木作品は本作で6作品目となりますが、どの作品を手にとっても並みの作家ならそのどれもが代表作と言えそうなクオリティの高さが味わえます。決して爽快感を味わえる読書とならないことはわかりながらもむさぼるように読む桜木作品。やはりその魅力はひたむきに生きる人間というものを他の作家よりも深く描けているからだと思います。

さて本作ですが全7編からなりますが、桜木作品のご多分に漏れず北海道が舞台となっています。異色なのは冒頭の「波に咲く」で嫁不足に悩む農村で中国人の女性を嫁とした男性主人公が描かれています。嫁の花海の芯の強さももちろんのことストーリー展開は本作中もっとも面白かったし男性をも巧みに描いていることに舌を巻かれた読者も多いだろうと思います。あとの6篇は女性主人公が続きますが冒頭の花海から引き継いだような力強い女性のオンパレード。3編目の「プリズム」がもっとも救いのない話でぐったりさせられますが各編の女性の生きざまを比べて読むとどっぷりとした読書を楽しむことができます。誰もがしたたかさとは縁遠い女性たちなのが桜木作品の特徴でもあると思われ唸らされます。
その中でも書き留めておきたいのはラストの「根無草」の主人公の母親の生きざまのすさまじさ。これはもう客観的に見て物悲しい人生なのですがドラマティックを通り越して力強すぎます。彼女の芯の通った生きざまが最後に娘であり主人公でもある六花の未来を明るくしたエンディング、印象に残りました。さて読み残しが少なくなってきた桜木作品、なんだか寂しくなってきました(苦笑)

桜木作品を読むと幸せと不幸せは背中合わせというか紙一重だということにハッとさせられ、そのハッとさせられるところが桜木作品が読者を虜とする所以であると思います。
尚、本作品集は単行本『恋肌』を大幅に加筆修正を施し「風の花」を追加して文庫化されたものだそうです。

評価9点。
posted by: トラキチ | 桜木紫乃 | 09:02 | comments(0) | trackbacks(0) |-