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『そして、バトンは渡された』 瀬尾まいこ (文藝春秋)
溌溂としたテンポの良い文章で最高の感動を与えてくれる瀬尾作品の中でも、集大成的な作品であると感じる。荒唐無稽な設定の中でも読者を独自の瀬尾ワールドに没頭させるのは他の作品でも味わえるのであるけれど、本作は背中を押すというよりも私たちの心の中にいつまでもどっぷりと深く根ざす作品であると思える。

読者である私たちは、誰しも多かれ少なかれ悩みが常にありますが、瀬尾作品をを読むことによって幸せということを考え直す機会を与えられ、曲がった部分を修正してくれるような効能があると感じます。
本作品においての主人公優子と森宮さん、彼らがもし私たちが生きてきて苦しんだシーンに遭遇したらどのように対処するのであろうかとふと考えてしまいます。きっと彼らなら上手く切り抜けていくのでしょう。

親の事情で姓が何回も変わることを余儀なくされる人生の優子ですが、彼女は精一杯前向きに生きています。それは誰よりも愛情を注がれて育ったおかげで本人が実感しているからですよね。たとえ血が繋がってなくてもその愛情は本物であって尊いものです。作者は読者に子供に対する愛情はいくら注いでも注ぎすぎることはないということを教えてくれます。本作はとりわけ子育てに悩む親御さんが読まれたらというか読むべき本なのでしょう。人間であることの原点を問いただす作者のひとつの到達点に達した傑作だと言えます。機会があれば是非再読したいと思っています。

森宮さん以上に印象的なのは継母である梨花さん、他の作家が描けば彼女の打算的な側面が目につくのでしょうが、作者はほんわかとした好キャラとして描いています。優子がブラジルに実父と一緒に行かずに継母と居ることを選択したのも、梨花の強い愛情を感じ取っていたからだと思います。瀬尾作品は世知辛い世の中に警鐘を鳴らす効果がありますよね。他の作者の作品では感じ取ることのできない何かが詰まっているのでこれからもずっと読んでいきたいと思っています。

評価10点
posted by: トラキチ | 瀬尾まいこ | 03:38 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『君が夏を走らせる』 瀬尾まいこ (新潮社)
評価:
瀬尾 まいこ
新潮社
¥ 1,620
(2017-07-31)

中学生の駅伝を描いた作者の傑作である「あと少し もう少し」で不良少年ながら2区を激走した太田君を主人公と据えたひと夏の物語。
「あと少し〜」では独自の存在感を見せつけた太田君ですが、高校生となり以前のように自堕落な生活を過ごしていましたが、作者は彼に命題を与え再生を促します。
その命題とは同じ高校の二年先輩ですが中退して子供を儲けている中武先輩の1歳10か月の娘である鈴香ちゃんの子守りでした。
瀬尾作品の定石通りであるのほほんとした文章と予定調和的な展開が繰り広げられます。そう初めは嫌がっている鈴香ちゃんに悪戦苦闘する太田君ですが、徐々にバイトを忘れてかけがえのないものとなってゆきます。その姿が読んでいて情景が浮かび上がり、読者として微笑ましいことこの上なしであります。

あとサプライズとなった中学の上原先生の登場と3kmのタイムトライアルも印象的ですが、やはりママ友と仲良くなっていくコミュニケーション能力の高さは彼の天性のものだと感じます。
お互いの両親とは絶縁状態で頼めなかったとはいえ、思えば先輩が太田君に目を付けたのは人を見る目があったのでしょう。

鈴香ちゃんとの別れを名残惜しく読んだ読者は太田君の確かな成長を見届けれたことを誇りに思って本を閉じたはずであろうし、現に私は鈴香が太田君に懐くシーンが一番脳裏に焼き付いて離れませんでした。
太田君のその後を是非読みたいものです。

評価9点
posted by: トラキチ | 瀬尾まいこ | 19:25 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『春、戻る』 瀬尾まいこ (集英社)
評価:
瀬尾 まいこ
集英社
¥ 1,260
(2014-02-05)

初出「小説すばる」、加筆修正あり。青春小説の傑作「あと少し、もう少し」以来の新刊。去年は一冊も新刊が出ず寂しい想いをされたファンが待ち望んだ卒業シーズンに送るプレゼント作品。
まずタイトル名が内容とあいまって秀逸です。他の作家が真似を出来ないほどの読みやすい文章を用いて最大の感動をもたらす瀬尾ワールド、本作でも健在というか完成度を高めていると感じます。

結婚間近の主人公望月さくらの前に突然12歳年下の奇妙な兄が登場、度肝を抜かれるというよりも瀬尾ファンタジーに入り込んだ感じで心地良く読み進めれます。
そしてなんといっても結婚相手の山田さんの描写が秀でています、作者の初期作品『天国はまだ遠く』の田村さんを彷彿とさせる度量の広い人物として描かれていて心が和みます。

終盤の展開は大体予想がついていましたが、その予定調和的で予想できるレベル以上にまとめ上げの上手さが瀬尾作品の特徴だと感じます。
決して血は繋がってないけど身内のように打ち解ける2人の描写は素晴らしく、兄の登場により結婚相手を本当に好きになる過程が読ませどころの一つでもあると考えます。
“再生”を描写するのは作者にとっては最も得意な分野であるのですが、本作は再生だけでなく新たな“出発”をも描いていて思わず主人公にエールを送りたい気分にさせられます。
旅行の話が持ち上がりますが、岡山を旅行する新婚2人の姿を目に浮かべながら本を閉じることが出来、幸せのお裾分けをされた気分であってほっこりと癒された気持ちになります。

思えば読者である私たち誰しも、多かれ少なかれ悩みが常にありますが、本作を読むことによって幸せということを考え直す機会を与えられ、少し曲がった部分を修正してくれるような効能があると感じます。
真っ直ぐに生きるということは本当にむずかしいけど、いろいろお世話になった人を思い起こしながら自分自身を見つめ直し少しでも修正出来たらいいなと思いました。

評価9点。
posted by: トラキチ | 瀬尾まいこ | 00:39 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『あと少し、もう少し』 瀬尾まいこ (新潮社)
評価:
瀬尾 まいこ
新潮社
¥ 1,575
(2012-10-22)

書き下ろし作品。
山深い場所にある市野中学校を舞台とした大きな不安を抱える中学生の気持ちと人と人とのつながりの大切さを謳った駅伝を通しての青春小説の傑作。
本作にて作者は“中学はいくら失敗しても良い場所”という暖かい気持ちのベースに基づき中学生を描いています。

大半の読者が過去のこととなっている中学時代、思い起こせば言いたいことが言えそうで言えない年頃ですよね。
中心的存在と言っていいのでしょう、部長である桝井君のある言葉にはドキッとさせられますが、それに動じない上原先生の見事な教師ぶり、頼りなさげですが数年後は立派な恩師だったと慕われるのでしょう、作者を彷彿とさせられました。
そして皆に一目置かれている桝井君、『図書館の神様』の垣内君とだぶりますよね。きっと作者の理想像なのかなと思います。
各章タスキを繋ぐ順番に一人称で語られますが、レースだけでなくこの駅伝に出場できたことのいきさつにウエートを置いて書かれています
というのはメンバー6人中、陸上部員は半分の3人、あとは寄せ集めなのです。
残り3人のメンバー入りに際して、部長である桝井君が一番苦労するわけです。
もちろんハラハラドキドキするレースシーンも楽しめ、胸を焦がすことの出来る傑作であると確信しています。実はアンカーは私たち読者なのかもしれませんね。
タイトル名のごとく作者から読者に『あと少し、もう少し』と声を掛けられているような気にさせられるところ読書の醍醐味を感じずにいられません。

今年は『僕らのご飯は〜』と本作との2冊上梓され瀬尾さんのファンの人にはハッピーな年だったのだと思います。
中学生の駅伝を描いた本作は高校生の陸上小説『一瞬の風になれ』、大学生の駅伝小説『風が強く吹いている』に見劣りしない出来だと思います。
本屋大賞ノミネート希望。

評価(10)
posted by: トラキチ | 瀬尾まいこ | 16:15 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『天国はまだ遠く』 瀬尾まいこ (新潮文庫) <再読>
初出「小説新潮」2004年4月号。単行本 2004年6月 新潮社より。文庫化2006年11月。

(再読時の感想)

当時小説新潮を買って読み、2か月後に単行本を買ってまた読みました。
瀬尾さんの3作目の作品で、前2作はマガジンハウスからだったのですが、今回は大手の新潮社からということでその期待の大きさが窺えファンの一人として大喜びしていたのが昨日のことのようです。
その後加藤ローザ主演で映画化もされました、今回良い機会なので観てみようと思っています。

再読。自殺志願の23歳の女の子・千鶴の再生の物語。本作の田村さん、『図書館の神様』の垣内君とどちらもそれぞれの主人公が癒され再生して行くのに大きな役割を演じるのですが、本作の場合は主人公が田村さんに対して少なからず恋愛感情を抱いているのが違いとなります。
田村さんのこだわりがなく心の広いところは男性読者も見習わなくては(笑)
ラストでどうなるか気になりつつ読み進めましたが瀬尾文学の予定調和ということだと理解しています。
それは適度に距離を置くことによって物事が円滑に進むということなのでしょう。民宿のマッチに田村さんの最大の愛情が詰まってるはずです。
わずか21日間で自殺志願の23歳の女の子がこんなに変わるとは、田村さんの懐の深さがそうさせたのだと思います。
『図書館の神様』と比して、感動度では落ちますが、読者も自然と励まされて日頃の鬱屈したものをリセットしてくれる効果があるように思われます。
きっと明日への活力へとなる部分は本作の方が強いのでしょう。
とってもシンプルだけどグイグイ読者を引き込んでくれる作品ですね。

評価9点。

(初読時の感想)
2004年6月18日

本好きにとって“一心不乱”に読書に耽る時間って本当に幸せである。
それは瀬尾まいこが読者を“瀬尾ワールド”にエスコートしてくれるからにほかならない。

瀬尾まいこの小説に“トリック”という変化球はいらない。
なぜなら、直球勝負で十分に読者を魅了させることが出来るからである。

本作においては“自殺志願”の23才のOL千鶴が主人公である。

前2作品(『卵の緒』、『図書館の神様』)との大きな違いはやはり文体であろう。
テンポのいい軽やかな文体から、本作は叙情感溢れる落ち着いた文体となっている。
そのあたり少し戸惑われる方がいらっしゃるかもしれないな。
逆に一貫性のある面もある。それは“人とのふれあい”の大切さを読者に教えてくれてる点である。
彼女の小説の一番の読ませどころと言っていいんじゃないかな。

本作も自殺しようと思ってさびれた田舎の民宿に滞在した約3週間の間に主人公は自分の人生を見つめ直す。
本作においても、『図書館の神様』の垣内君のような存在の男性が登場する。
民宿の主、田村さんだ。
彼の心の広さと目に見えない気配りが、千鶴の心の中を清めてくれたのは間違いない。

でも、恋愛模様を模索するのもどうかなあと思うが、少し結末を変えて欲しかったなあと思ったりするのは瀬尾作品に魅了された証なのかなあ・・・
女性が読まれたら最後の別れのシーンの田村さんの態度、余計に惚れちゃうのかも知れません(笑)
読まれた方しかわからないでしょうが、きっとちっぽけなマッチ箱は田村さんの最大の愛情表現だったのでしょうね。

“心の機微”ってむずかしいですね。
瀬尾さんの作品を読むといつもそう感じます。
ページをめくりながら、一緒に悩み、考え、共感し・・・そして本を閉じる

正直、本作は読み終わると少し寂しい気分になる。
それはしばらく瀬尾さんの作品を読めないという素直な気持ちの表れかもしれない。

本作を読んだあと“今日からは私ももう少しひたむきに生きてみよう!”と思われる方が多いと思う。
誰も“こんな薄い本にこんな大きなエネルギー源が詰まっている!”とは予期していないはずだ。

“主人公以上に読者の心も浄化される”から瀬尾まいこのファンって幸せである。

きっと読者と瀬尾作品との関係って作中の千鶴と田村さんとの関係に等しいと言えるんだろう。

海も山も木も日の出も、みんな田村さんが見せてくれた。おいしい食事も健やかな眠りも田村さんを通して知った。魚や鶏を手にすることも、讃美歌を歌うことも、絵を描くことも、きっと田村さんが教えてくれた。そう思うと、胸が苦しくなった。
ここで生きていけたら、どんなにいいだろう。きっと、後少し、後1ヶ月だけでもここで暮らしたら、私はもっと確実に田村さんのことを好きになったはずだ。田村さんと一緒にいたいと、もっと強く思えたにちがいない。・・・・(本文より引用)


嬉しい情報があります。
『卵の緒』に収録されてる「7's blood」がNHKでドラマ化されるらしい。
文芸雑誌での連載も増えてきている。
瀬尾さんのさらなる活躍を願ってるファンの数が増える事を願ってやまない。
posted by: トラキチ | 瀬尾まいこ | 22:47 | comments(2) | trackbacks(0) |-
『図書館の神様』 瀬尾まいこ (ちくま文庫) <再読>
初出2003年12月、マガジンハウス社より。
「雲行き」は『鳩よ!』(2002年5月号、マガジンハウス)に掲載。
2009年7月ちくま文庫にて文庫化。

(再読時の感想)

再読。懐かしく読めました。。過去の事件にて心に傷を負い、悩まされつつ海の近くで高校の講師をしている22歳の主人公清(きよ)の再生&成長小説。
瀬尾さんお得意パターンですね。
そしてその心の傷がラスト付近での三通の手紙により主人公の成長と相まって見事に洗い流されます。
その感動的で胸のすく展開が瀬尾文学の真骨頂と言えるのでしょう。。
かつてこんなに心が洗われる小説があったでしょうか。清が垣内君に感謝したように読者が作者に感謝したい気分にさせられます。
なにわともあれ、読者の体内にスッと入り込めるテンポの良い文章が心地よいです。
そして少し自慢話ですが(笑)、作中に出てくる山本周五郎の『さぶ』の話、私自身が詳しく知っているので得意げにニヤリとして読めました。
逆に川端康成の作品などは読んでみようかなという気持ちに強くさせられます。
自然と読者にも刺激を与えてくれる作品ですね。
少し余談ですが、デビュー作の『卵の緒』と本作はマガジンハウスから単行本が出ていますが前者は新潮文庫、本作はちくま文庫ですね。
『卵の緒』は夏の風物詩になっている“新潮文庫の100冊"に選ばれています。本作も新潮文庫から出ていれば選ばれてたのになとファンのひとりとして少し残念に思いました。
文庫版にはボーナストラックとして単行本未収録の短編「雲行き」が収録されています。解説の山本幸久さんの文章も楽しく読めます。私は夏目漱石の『夢十夜』読み返さなくっちゃ。

評価9点。

(初読時の感想)2003年12月21日

まさに、“人生の分岐点となる1冊”なのかもしれません。
デビュー作の『卵の緒』で独自の瑞々しいタッチでその才能を世間に知らしめた瀬尾さんの第2弾ですが、デビュー作以上にその持ち味を発揮してるような気がする。

過去のトラウマや不倫に悩みつつも地方の高校で講師として働く清(きよ)。
顧問となった文芸部において柿内君と知り合い、文学にも馴染む事によって彼女の人生観は変化していく・・・

瀬尾さんの描く主人公ってしっかり物のようで気弱な人物が主流となっている。
本作は浅見さんとの不倫に悩む姿は少しリアルな面もあって、前作(『卵の緒』)より深い踏み込みを感じた。
あいかわらず食べ物の描写のたとえなんかは絶品で、楽しく読めることは間違いのないところだと思う。
主人公の一年を通して成長して行く姿が私にはいいクリスマスプレゼントとなりました。

瀬尾さんのいいところは他の女性作家にありがちな“現実離れしすぎた描写”じゃなくって、“新鮮な発想によってもたらされる瑞々しい描写”だと思う。
誰もがちょっとした気持ちの持ちようで叶うようなことを読者に教えてくれる点は称賛に値する。
あと、文体が溌剌としていて非常に読みやすい点も歯切れが良く好印象だ。

そう、タイトルに図書館って書いてあるけど決して図書館で借りないでいつも本棚に飾って読み返して欲しい作品だ。
本好きな人のというか小説好きな人の考えを瀬尾さんが代弁してくれてるシーンを引用したく思う。

文学を通せば、何年も前に生きてた人と同じものを見れるんだ。見ず知らずの女の人に恋することだってできる。自分の中のものを切り出してくることだってできる。とにかくそこにいながらにして、たいていのことができてしまう。のび太はタイムマシーンに乗って時代を超えて、どこでもドアで世界を回る。マゼランは船で、ライト兄弟は飛行機で新しい世界に飛んでいく。僕は本を開いてそれをする。(本文より引用)


今回は驚くべき感動の結末が用意されている。長編ならではのはからいだ。
最後のせつない手紙にジーンと来た人のすべてが、明日からの前向きな生活を迎えられることを願って書かれたと信じてやみません。

愛する女性がいる人は是非プレゼントしたい作品です。自信を持ってオススメします。
posted by: トラキチ | 瀬尾まいこ | 16:31 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『僕らのご飯は明日で待ってる』 瀬尾まいこ (幻冬舎)
初出 GINGERL。

瀬尾さんの最新刊です。単なる青春・恋愛小説かなと思いきや、一筋縄ではおさまりません。 そうですね、生き方と言うか価値観を問う再生小説と言ったら良いのでしょう。 えみりには悪いのだけど、えみりとのつき合いを通して葉山と上村の絆がより深まったと言えるのでしょう。 そう二人は、どんな困難にも耐え抜ける最強のカップルなのですね。 最終章は本作を読んだ読者のハッピーエンドを祈りつつ、作者が二人に試練を与えてくれたのでしょう。 私は理想の夫婦像を二人の中に垣間見ました。 生きるってちょっと苦しいけれどそれ以上に素晴らしいものですよね。

瀬尾さんが他の作家さんより秀でているところはやはり誰よりも読みやすい文章で最大限の感動を読者にもたらすところだと思うのです。
そして登場人物たち、ちょっと個性的なんだけど凄く前向きなんですね。
上村も葉山もえみりも皆、もがきながら前向きに生きています。
とりわけ上村も葉山も読んでいる時はその足りない部分に少しですがイライラします。
そして登場人物を励ましながら読書を進めることを余儀なくされます。
本を閉じた時には立場が逆転、そうです、まるで作者から読者が背中を押されたような気持ちにさせられるのですね。

瀬尾作品は読者にとってポカリ派やアクエリアス派のように嗜好の分かれるものではありません。
なぜなら飲み物で形容すると他のものでは同じように喉を潤すことができないからです。
その作品に流れる世界観はそれ以外の作家とは一線を画する独自のブランド品なのです。
淡々とした文章ですが忘れてはならない何かを思い起こさせてくれ、読者に対する説得力は凄まじいですよね。

最終章の展開は特に女性読者が読まれたら身につまされることだと思います。
私的には少し辛かったのですがお互いの絆が深まったのも事実ですよね。
そして体育祭の米袋ジャンプで仲よくなったふたりを思い出し、本当に成長した姿に胸をなでおろします。
生きることの喜びを感じずにはいられない、瀬尾作品ずっとずっと読んで行きたいと思っています。

評価9点。
posted by: トラキチ | 瀬尾まいこ | 08:25 | comments(2) | trackbacks(0) |-
『おしまいのデート』 瀬尾まいこ (集英社)
評価:
瀬尾 まいこ
集英社
¥ 1,260
(2011-01-26)

<「ランクアップ丼」だけでも読んでほしい、瀬尾ワールド炸裂の短編で恩師に対する凄い恩返しが描かれてます。>

初出 小説すばる。

瀬尾さんの文学って独特の“タッチの文学”だと思います。
これは誰もが真似出来ない領域に達していて、“平易な文章で最高の感動”を与えてくれます。
簡単に淡々と書かれていますが、結構読者に突き刺さる物が大きくて、かつ心がほっこり温かくなるのですね。
そうですね、日頃私たちが忙しさにかまけて忘れがちになっている大切なもの、人と人とのつながりを再認識せざるをえません。

本作は5編からなるデートをモチーフとした短編集ですが、デートという意味合いも通常私たちが連想する男女間のそれじゃなくって、人と人との繋がりのためのものって感じですね。
男女間の恋人同志のデートは1編もありません、ここが瀬尾さんらしいですね。
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posted by: トラキチ | 瀬尾まいこ | 20:33 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『僕の明日を照らして』 瀬尾まいこ (筑摩書房)
評価:
瀬尾まいこ
筑摩書房
¥ 1,470
(2010-02-10)

<2年ぶりの新刊は本当の“優しさ”とは何かを問う中学生隼太の成長物語。
テーマはDVなのですが重苦しくなくってジーンと来て暖かな気持ちで本を閉じることが出来ます。
平易な文章で最大限の感動を呼び起こす“瀬尾ワールド”、これがある限り寡作でもファンはずっと新刊の発売を待ち続けますよね。それにしてもいろんな愛情がありますよね、いい勉強となりました。>


僕は誰にも誓っていない。だけど、病める優ちゃんを誰よりもたくさん知っている。イエス・キリストは愛が大事だって言ってるし、きっとマザーテレサとかリンカーンとか、世の中のすごいって言われているような人も愛が全てだって言ってる。愛が尊いことなのは僕にだってわかる。愛がどういうものなのかはわからない。だけど、もし人を許すことが愛ならば、僕は優ちゃんを誰よりも愛している。アクエリアス1リットルで、トイレに直行してしまう器の小さい僕だけど、その容量の全てを使って、優ちゃんのどんなことでも許してしまえる。
(本文より引用)

坪田譲治文学賞を受賞した『戸村飯店青春100連発』以来、約2年ぶりの待望の新刊。

従来の瀬尾さんの作品パターンは主人公の“再生”物語がメインだったのですが、前作は趣を変えて“成長”物語に変貌したのですね。
そして本作はもっと贅沢になり、主人公の隼太(中学2年生)の成長物語を見守りながらも隼太の母親の再婚相手であり隼太にとっては新しい父親である優ちゃんの“再生物語ともなっています。
いわば、1冊で瀬尾作品を2冊読んだ感覚にさせてくれる作品なのです。
わずか230ページあまりの中に読者に大きなメッセージを与えてくれる小説、滅多にお目にかかれません。

中学校教諭でもある瀬尾さんにしたら、主人公はまさに自分自身の教え子と同年代ですね。
ですから、本当に自分の生徒たちに読んでもらいたいという想いが文章に乗り移っている感じがします。
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posted by: トラキチ | 瀬尾まいこ | 20:01 | comments(2) | trackbacks(1) |-
第24回坪田譲治文学賞受賞!
本屋大賞では残念な結果に終わりましたが、瀬尾さんの『戸村飯店青春100連発!』が第24回坪田譲治文学賞を受賞しました。

この賞は岡山市出身の小説家・児童文学作家、坪田譲治を顕彰する趣旨から大人も子供も共有できる作品が選考基準。過去1年間(平成19年9月〜20年8月)に全国で刊行された単行本の中から、作家や文学者らの推薦による96点を選出し、4作品を受賞候補に絞って1月下旬の選考委員会で最終決定されたらしい。
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posted by: トラキチ | 瀬尾まいこ | 15:40 | comments(2) | trackbacks(0) |-