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『武道館』 朝井リョウ(文藝春秋)
評価:
朝井 リョウ
文藝春秋
¥ 1,404
(2015-04-24)

手厳しさが魅力の朝井作品であるが、本作ほどリアルに描かれた作品はないと感じる。アイドルという夢の世界が舞台であるが現実はかなり厳しくて決して彼女たちは幸せだとは言いがたい。愛子という主人公格の女の子が等身大で描かれている。

彼女にはアイドルになるという夢があったのであるが、ずっと同じマンションで住んでいる大地という憧れの存在がいて、どのくらい好きかと言えば両親が離婚する際に父親を選ぶのであるが、それは父親がの方が好きというわけではなく、父親を選べば大地の近くに住むことが出来るが故の選択である。彼女のその気持ちは全編通して根付いていて、読者をも納得させてしまうのである。確かに恋愛は禁止という若い女の子にとって非常に苦しい状況が待ち受けているのであるし、やはり生身の人間であり青春真っ只中の女の子なのですね。個人的な捉え方かもしれませんが、アイドルは演じるものであってそれを割り切って出来る人が成功するのでしょうね。

いろんな犠牲を払ってもアイドルになりたいのかどうか、途中で挫折する人もいれば、なりたくてもなれない人がいます。ネットという簡単にバッシングが出来るメディアがある現代においては、本当にアイドルも強い精神力が必要です。ちょっと冷めた感じ方かもしれませんが、アイドルという人たちが身近に感じられる一冊です。彼女たちの女の子らしい本性を見事に描いた作者の感性に脱帽ですよね。

本作は予想通りといっていいのでしょうドラマ化されていて現在オンエアー中。少し設定がちがうのですがよりリアルになっています。NEXT YOUを演じているjuice-juiceのメンバーはどう感じているのであろうか。映像化されるとどうしてもいずれにしても多様性が当たり前の世相なので、いろんなことに悩むのは若さの特権なんだなと感じます。

評価8点。
posted by: トラキチ | 朝井リョウ | 22:40 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『星やどりの声』 朝井リョウ (角川文庫)
評価:
朝井 リョウ
KADOKAWA/角川書店
¥ 605
(2014-06-20)

2015カドフェス作品。亡くなったお父さんの愛情を受け継いだ6人の兄弟姉妹たちの物語。タイトル名となっている星やどりというのは亡くなったお父さんが命名した喫茶店の名前であって、いわば残された母親と6人の子供たちの絆の証として受け継がれている。6編からなる構成で各編ひとりずつ語り手が代り、それぞれのおかれている立場が読者に紹介され、ひとりずつ親しみを植え付けることによって読者を物語の世界の中に引き込んでくれます。

最初に登場する長男の光彦が就職活動にいそしむ立ち位置で、本作を執筆していた当時の作者を彷彿とさせると感じたのは私だけであろうか。いろんなエピソードが印象的であるが、特に双子の小春とるりとの見分けがつかないということから生じる話が微笑ましくもあり切なくもある。

現代社会は本作のように6人もの兄弟がいる家庭はほとんど見受けれないが、家族っていいなということを十分に読者に伝えることに成功した作品であり、やはり二十歳そこそこで子供たちだけでなく大人の気持ちも把握できて描写に繋げれる作者の才能は、この後『何者』により直木賞を受賞されるけれど、本作でも十分に開花していたと言って過言ではないと思います。

途中で母親が父の命日に男の人と会っているということでひと悶着あるのですが、見事に収束させてくれます。もちろんラストが哀しくもあるのですが、それは子供たちの成長の証と受け取りました。
『世界地図の下書き』と同様、手厳しさも作者の特徴だと捉えています。

評価8点。
posted by: トラキチ | 朝井リョウ | 21:54 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『スペードの3』 朝井リョウ (講談社)
評価:
朝井 リョウ
講談社
¥ 1,620
(2014-03-14)

初出「小説現代」大人の女性を描いた3編からなる連作短編集。読み終えて作者のイメージを覆すほどの意欲作だと感じました。表題作をはじめ大富豪のカードを各編ネーミングされていてこれが非常に読者にとって言い得て妙なものとなって共感を呼びます。三者三様の“アイデンティティ”が描かれていますが、とりわけ最初の編などまるで女性作家が書いたものかと思うほど心理描写が見事で巧妙さを感じました。物語は舞台女優であるつかさ(3編目の主人公です)のファンクラブ“ファミリア”を束ねる美知代が主人公。小学生の頃、学級委員として頑張っていた美知代は転校生のアキがやって来てから自分のポジションが変わるのであるが、そのアキがファミリアに突如姿を現します。女性の成長や過去へのわだかまり、そして虚栄心に優越感など見事に描かれています。

男性読者目線から見て決して痛快な話ではありませんし、住む世界の違いも感じたのも事実ですが、人間というものは簡単には変化はしないけど、あるきっかけを以て成長もし得るものなのだなとは理解できます。
少し遡りますが、一編目のラストで、名前の部分で叙述トリックが使われていて、やられたと感じ、それにより物語自体が身近なものと感じた読者が大半だと思います。

2編目はアキが主人公を務めますが必死で自分を変えようとする姿が印象的ですよね。ラストは距離感が遠かったつかさとの距離が近づきますし、作者得意のメッセージ性の強さが表れた編だと感じました。
この編を読むと朝井作品だなと判別し易いと思います。ただ時系列的に読みづらい部分もあったのも確かですし、読者にとっては好き嫌いの分かれる作品だと思いますが、作者のターニングポイント的な作品として数年後語られていることは間違いないと感じます。

評価8点。
posted by: トラキチ | 朝井リョウ | 23:32 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『世界地図の下書き』 朝井リョウ (集英社)
評価:
朝井 リョウ
集英社
¥ 1,470
(2013-07-05)

初出 小説すばる、加筆・訂正あり。注目の直木賞受賞第一作。児童養護施設「青葉おひさまの家」で暮らす太輔を含む5人の物語。
いろんな訳があって施設で暮らすようになった子供たちですが、施設で暮らし始めてからもいろんな問題が勃発します。平和に暮らす普通の子供たちでは体験できないことを描写することによって、今の社会のいくつかの問題点を浮き彫りにしています。問題点と言う意味合いにおいては『何者』と変わらないのですが、本作の方は多少なりとも希望と言うものが読者に提供されます。読者によっては微かなものかもしれないし、あるいは大きなものかもしれません。そのあたりの読みとり方は読者に委ねているような気がします。
お姉さん的な存在の佐緒里に関してはなんとか大学行かせてやりたかった気もしますが、現実感の強い作家だと思って読むことを余儀なくされます。作者的には子供たち5人の仲間意識→連帯感→愛情が芽生え成長する姿を描き、たとえ離れ離れになったとしても、施設での出来事が彼らの今後の人生にとってプラスになることを描きたかったのでしょう。それにしてもイジメは辛いですね、作者のドライな語り口だから余計に身に沁みます。

本作を読んで、他の作家よりもずっと若い作者は人生を長いビジョンで捉えているような気がします。それはタイトル名からも理解できることで、私的には施設での経験は5人の子供たちにとって人生において“下書き”段階なのでしょう。個人的には少し中盤凡長な部分もあったと思いますがイジメっ子に対する容赦のない描写などは“現実感たっぷりのメッセージ性に富んだ作家”だと思いました。
少し前に読んだ佐川光晴さんの『おれのおばさん』と読み比べると小説のいろんな楽しみ方が味わえると確信しております。

余談ですが、本作が発売される前にTBS系の「情熱大陸」にて作者が本作のラストシーンを編集者と一緒に考慮しているシーンがありました。凄く印象的だったのですが、個人的にはやや物悲しい着地点だと思ったりします。その方が登場人物がさらに逆境に耐えて成長すると言う期待を込めた作者の温かい眼差しであると信じて本を閉じました。背負ったものの大きさに同情します、世の中シビアなのですね。

評価8点。
posted by: トラキチ | 朝井リョウ | 11:03 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『何者』 朝井リョウ (新潮社)
評価:
朝井 リョウ
新潮社
¥ 1,575
(2012-11-30)

書き下ろし作品、直木賞受賞作。ツイッターを題材とした5人の若者達の就活に関わる物語。
主人公拓人のみならず皆個性派ぞろいだけど、意外と相手の心を探り合うのですね。
自分の学生時代はもちろんツイッターもなく就活という言葉もなかった。
時代は変わり価値観も多様化しているのだけど、今も昔も生きてくことだけでなく時代に順応していくことは本当に難しい。

5人が切磋琢磨して苦しい就活を乗り切る青春物語であろうと思われた読者もいるのかもしれない。
だけどタイトル名からしてちょっとは捻りがあるはずだろうと思った方の方が多いかな。
しかしラストの30ページは圧巻でこう来たかと唸らされた。
ズバリ作者が一番言いたいことは“自分を見失ってはいけない”ということ。
おそらく若い読者の方は目を背けずに読めるのであろうかというほどリアルです。
就職氷河期の時代だからこそ言えるのだろうけどね、それと匿名であるが故の功罪ですね。
事態は本を読むことのようにたやすいことではないことは読者の誰もがわかっているのですが。

あと本作は学生時代を遥か昔に終えた読者でさえ働くことの意義を今一度見つめなおす機会をも与えてくれている。
作者の鋭い観察眼が結実した作品であり、仲間を持つことの意義をもう一度考えずにはいられない。
それにしても生き抜くって難しいですよね。タイトルの意味を考えれば考えるほどそう思わざるをえない読書となったのですが、そう言った試行錯誤自体が、この作者の真骨頂のような気がする。
そうです、問題提起に長けた作家だと思います。誰にでも宿されている悪意ではないのだけど妬む気持ちっていうのですかね。
上手く描かれていたと思います。
そしてちょっと余談ですが、本作にはもうひとつの読ませどころだと思われる三角関係に近い恋が描かれています。
瑞月の気持ちが男性読者ですがもっとも共感できたのですが、少し作者の理想的な女性像が投影されているような気がしました。


(読了日1月18日)

評価8点。
posted by: トラキチ | 朝井リョウ | 19:49 | comments(0) | trackbacks(0) |-