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『優雅なのかどうか、わからない』 松家仁之 (マガジンハウス)
初出「Casa BRUTUS」。前作『沈むフランシス』の北海道から舞台を東京・吉祥寺に移した作者3作目の作品であるが、前作よりも心地よい読書を約束してくれる出来栄えには思わず胸を撫で下ろした次第である。
その背景として、主人公である匡を出版社勤務の40代後半の男性を据えた点が大きいと思います。まるで作者自身を彷彿とさせる優雅な話の展開に捲るページが止まりません。
ただ作品内には介護問題という現代社会において避けて通れない問題が大きく盛り込まれていて、私たち一般の優雅でない(苦笑)男性読者にとっても考えさせられる作品でもあります。

そして前作と違ったところは主人公サイドから見て恋愛対象の相手が素敵であるところですよね。匡にある時は頼りにし、適度に距離を置こうとする佳奈は男性読者として可愛げがあります。可愛げがあると言えば猫のふみもキャラ立ちしていて少し深読みかもしれませんが、介護問題と相まって命の尊さを謳っているようにも感じられました。
本作の特長でもあると思うのですが、物事をしっかりと静かに受け止めて行くという点が貫かれていると感じられます。古い日本家屋を改造したり、後半は息子の同性愛を受け入れたり、その根底には主人公自身“優雅さ”が漂っているからであると強く感じました。そして元妻との離婚問題についてもあまり語られていないのだけど、読者にとってあまり問題ではない所が作者の凄さだと感じます。

読み終えた誰もが匡にとって元妻よりも佳奈の方が似つかわしいと思われることであると確信しています。何故なら、佳奈とは精神的にも“優雅”であり続けられると感じますから。
少し余談であるが、作中に谷崎潤一郎の逸話や太宰治の玉川入水の場所なども語られていてまさに作者の独壇場です。そして前作同様本作の表紙も斬新で、主人公の好きな女優ミア・フェローの表紙が使われていてインパクトの強い読書となりました。早く次の作品が読みたいです。

評価9点。
posted by: トラキチ | 松家仁之 | 00:50 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『沈むフランシス』 松家仁之 (新潮社)
評価:
松家 仁之
新潮社
¥ 1,512
(2013-09-30)

初出「新潮」。デビュー作『火山のふもとで』で数多くの読者を虜にした待望の2作目の作品。作者の作品は他の作家とは違って静謐な文体に精緻な内容が特徴であると感じます。デビュー作では地味な内容ながら読者にとって印象深い読書をもたらせてくれたのであるが、本作においては少し小ぢんまりした印象となったことは残念であった。
北海道を舞台とした圭子と和彦との恋愛を描いた作品であるが、主人公圭子サイドから見て和彦がそんなに魅力的な男だったのかという疑問符は拭えず、他の読者にお聞きしたいくらいである。まあ表紙の犬の写真がとってもミステリアスでかつ洗練された文章も健在。しかしながら、読む前に抱いた期待の大きさからしてはまるで和彦の正体のように謎めいています。

読んでいく過程においては、やはり圭子は和彦に騙されているのではないかという疑念が絶えず読者サイドにあり、それは読み終えた今となっては読み続ける大きなモチベーションとなっていたのであろうが、一つの結論として圭子自身、かつて幼少時代に過ごした土地とはいえ北海道の片隅の町に東京から身を隠すように移り住むこと自体、風代りな人物というか自ら数奇な運命を選択しているのが、時には同情的な気持ちにもさせられるし、逆を考えれば和彦に惹かれるひとつの要素にもなっているとも考えられる。とにかく私自身は決して正しい読み方がどうかわからないが、圭子が和彦に惚れる必然性というか整合性を念頭に置いて読み過ぎてしまい、あんまりすっきりした気分で本を閉じれなかったことは後悔している。

少し否定的に書きましたが、恋愛小説というくくりで読めばそれなりの余韻に浸れ、そこそこ満足の行く作品ではないかと考えます。それと性描写をこんなに美しく書ける作家、他にお目にかかれません。北海道ならではの四季の移ろいの描写の確かさなど、うっとりと読ませてくれる作家として今回は少し留保をつけましたがこれからも追いかけて行きたいと思っています。

評価7点。
posted by: トラキチ | 松家仁之 | 23:31 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『火山のふもとで』 松家仁之 (新潮社)
評価:
松家 仁之
新潮社
¥ 2,052
(2012-09-28)

初出「新潮」、讀賣文学賞受賞作品。新潮クレストブックスの企画者そして編集者として名高い松家氏の作家としてのデビュー作。
ずっと手に取ろうかと迷っていたのですが、読み終えた今、もっと早く読んでおけば良かったと思っています。
とにかく丹念に書かれた美しい文章に引き込まれた読書となりました。

時は1982年、バブル期の少し前に当たります。主人公の坂西は大学の建築家を卒業したてで尊敬すべき「先生」の設計事務所で働き始めるのですが、その事務所が夏の時期には浅間山のふもとの通称“夏の家”に移動するのですね。そこでの仕事においてのコンペティションと先生の姪に対する淡い恋心が見事に描かれているのですが、やはり読んでのお楽しみということにしておきましょうか(笑)
建築関係に関する知識が乏しいために、すべてが読解出来ずに流し読み的な部分があったことも認めるけれど、作者が何を読者に伝えたいかということはかなり明確に伝わってきて、読み終えた後ジーンと来る作品です。ある一定以上の年齢の人が読まれたら、過ぎ去りし過去の自身の恋模様を本作の私や恋人役である麻里子と比べて読むと凄く懐古的な気分に浸れる作品でもあります。

最後に30年後の姿が描かれ、読者も現実に戻ることを余儀なくされ、少し残念で儚い気持ちにもなったけど、それ以上に現在の主人公が幸せであるのも事実であって、その事実は物語の主要部分である1982年当時に、誠実に生きたからこそ培われたものであると思います。
登場人物もいろんな人生を歩んでいきますが皆が先生の教えを忘れずにいるところが胸を打つところですね。
少し読み取り不足かもしれませんが、読者の背筋を真っ直ぐに直してくれる作品であると思います。再読できる日を楽しみにしたいなと思っています。

評価10点。
posted by: トラキチ | 松家仁之 | 00:11 | comments(0) | trackbacks(0) |-