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評価:
長岡 弘樹
双葉社
¥ 648
(2008-08-07)
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『傍聞き』や『教場』にて人気作家としての階段を着実に駆け上がっている長岡氏の五編からなるデビュー短編集で個人的には初読みとなります。
先入観というのは恐ろしいもので横山秀夫さんみたいな警察小説だとばかり思っていましたがそうではなかったです。
痴呆や少年法、会社での出世争いなど読者にとって身近な社会問題を盛り込んでミステリー仕立てで迫ってきます。
どの短編も伏線があって最終的にはストンと落としてくれるのですが、どう転ぶかは読んでいるうちは予断を許しません。
このあたり、デビュー作としては及第点を与えて本を閉じられた読者が大半で、他の作品も思わず読みたいと思わされます。
作者の良いところは、人間だれしも持っている弱さ、言い換えれば自分自身の保身みたいなものを描写するのに長けているということで、五編それぞれ同じぐらいにその要素が散りばめられているところが凄いのでしょう。
とりわけ「淡い青のなかに」や「重い扉が」に見られるラスト当たりでの子供が自分の親に対して見せる愛情がほろっと来ました。そのちらっと見せつけられ作品全体を覆っている温かいまなざしに唸らされたのは私だけでしょうか。
評価8点。