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『潮騒』 三島由紀夫 (新潮文庫) 1954年
評価:
三島 由紀夫
新潮社
¥ 420
(1955-12)

<品格のある恋愛小説に飢えているあなたには格好の一冊。昭和を代表する作品であるが良いものはずっと受け継いでいきたいですよね。>

三島由紀夫の決して良い読者ではない私であるが、数十年ぶりに本作を手に取って初めて手にした時よりも感動が沁み渡っているのは、やはり作者が後世に名を残す作品をその高い才能でもって書き上げた他にならない。

かつて山口百恵・三浦智和のゴールデンコンビで映画化されたのが34年前にもなる。

閉塞的な環境によって育まれる若い二人の純愛。
胸が締め付けられますよね。
とりわけ映画でも話題となったあのシーン。
言葉で読んで頭の中で映像を回顧してしまいますわ。

これは日本文学に残る名作であって、現在問われつつある“品格のある”小説ですね。

“歌島は人口千四百、周囲一里に充たない小島である。”
有名な書き出しで始まる本作、読まれた方は多いと思います。
話の内容自体は凄くベタな展開であると思われます。
すべてが予定調和で終わってしまいますよね。
逆にそこが心地よく読めるところです。

三島由紀夫のことはあんまり詳しくないのですが、この作品の新治のナイーブさなんかを見ていると、やはり大正末期生まれの三島の過ごした少年・青年時代の日本の国の栄枯盛衰がデリケートに表れているように思われるのである。
そして初江、男性読者にとってはやはり理想的な女性ですよね、とっても眩しいです。
少し余談となりますが日本語は進化したのでしょうか、それとも変化したのでしょうか。
私自身本作で書かれている言葉が決して美しい言葉とは思いませんでした。
美しい物語だとは思いますが。
だって三島さんがもし翻訳者だったら読みにくくてたまらないと思いますもの(笑)

ご存知の方も多いと思いますが、本作は三島文学の中では異質な作品として位置づけされてますよね。

私自身は太宰治も三島由紀夫も決して万人受けのする作家だとは思いません。
その非凡な才能は認めるとしても、現実問題、少なくとも21世紀に生きる私たちが手に取れば両人の作品、読み手によっては退屈な作品もあると思います。
しかしながら、本作はその“読み手を選ぶ的な部分”はとっても少ないのである。
言い換えれば“万人受けする稀有な作品”と言えるでしょう。
そして少し太宰治についてはひととおり読んでいる立場で言わせていただけたら、太宰治には三島由紀夫の“潮騒”のような作品はないのである。
しいてあげれば“走れメロス”でしょうか。

本好きにとっては真夏の風物詩となっているといっても過言ではない“新潮文庫の100冊”にセレクトされている本作。
もし未読の方がいれば是非手に取って欲しいです。
人を好きになる気持ちって本当に大切ですよね。
必ずその瑞々しい気持ちを思い起こさせてくれます。

男性読者が読めば新治、女性読者が読めば初江、それぞれヒーロー・ヒロインになり切って読んで欲しいですね。
現在のあなたの“ピュア度”を測る試金石的な作品であると信じています。
私はなんとかピュア度OKでした。
あなたのご健闘をお祈りしますね。

面白い(8)
posted by: トラキチ | 日本文学(名作) | 20:37 | comments(0) | trackbacks(0) |-
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