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『大きな熊が来る前に、おやすみ。』 島本理生 (新潮文庫)
<この短篇集は2年後に出版された『君が降る日』のような切ない恋愛模様を描いたものではないが、ある意味もっと身近でリアルでそして奥行きのある問題を読者に提起してくれていてハッとせざるをえない作品集ですね。そして印象的なのは文庫本の解説での名翻訳家の松永美穂さんの言葉です。なんとジュンパ・ラヒリやアリス・マンローなどの名手たちの系譜に連なる資質を備えていると語っている。ファンのひとりとして嬉しい限りですね。>

喧噪からは遠い、都会の室内劇。似たような場面が、人物の名前を変えてロンドンやニューヨークで繰り広げられているとしてもおかしくない。若い男女の気持ちの接近やすれ違いは普遍的なテーマだし、暴力にるトラウマの問題も、世界共通だろう。静かだけれどとても奥行きのある短編を書いている、アリス・マンローやジュンパ・ラヒリ、ドイツ語圏のユーディット・ヘルマンやインゲボルク・バッハマンなどの、文学の名手たちの名前が浮かんでくる。島本作品も、そんな名手たちの系譜に連なる資質を備えているのではないだろうか。
(文庫本解説より引用)

上記引用文は文庫本の解説文ですが、解説を書かれているのがドイツ人著名作家ベルンハルト・シュリンクの 『郎読者』を翻訳されている松永美穂さんの言葉である。
松永さんが島本さんの作品を読まれて解説を書かれていること自体、身近に感じられ嬉しいのであるが、さらに上記のお言葉、これは島本ファンの一人として本当にこれ以上の賛辞の言葉はないと思うのですね。

本作は他の島本王道恋愛作品とは違った趣の作品集である。
他の島本作品は今更説明するまでもないとは思いますが、たとえ叶わなくっても(叶わない方がいいのかもしれませんが)、恋愛の持つ切なさそして温もりを私たち読者にいろんな形で表してくれていますよね。
本作は私が想像するにちょっと悩んだ時期の島本さんかなと思ったりするのですね。

島本さんの内面を描く巧みさは群を抜いていると私は思うのですが、本作においては具体性を帯びた内面を描くことによって、恋愛の一歩手前というか、“生活感のある心の痛み”を読者に提示している。
本作の凄さはそうですねビターな島本理生なのですが、そのビターさも恋愛のそれじゃなくって人生のそれなのですね。
表題作は一番、読者との距離が近いんじゃないでしょうか。
たった一度のDVですが、許せるか許せないか。
普段が優しいだけに考えさせられますよね、これは。

そして印象的なのは「クロコダイルの午睡」の都築という男ですね。
無頓着というか無神経というか、そして主人公を言葉で傷つけます。
読んでてイライラするのですが、でも本人は決して悪意はないのですね、でも最後は本当に怖いです(笑)
これは主人公の弱さの表れなのでしょうが、一貫してこの作品集は弱い女性が多いですね。
他の島本作品は“弱い”というより“純粋な”というキャラが勝っていたような気がしますが。
そう考えると島本作品って奥が深いし、変化してますよね。

そしてラストの「猫と君のとなり」は少しマイルドなテイストとなっています。
志麻先輩と荻原君、しあわせになれればいいですよね。
胸を撫で下ろして本を閉じられた方も多いかも。

少し総括しますね。
他の島本作品が“切なさ≧重さ”であれば、本作は少なくとも最初の2編は“重さ≧切なさ”だといえそうです。
だから作品としての評価は分かれる作品であるような気がします。
実際私は2年後に上梓された『君が降る日』の方に完成度では軍配を上げたいと思います。


ただし本作は3編ともそれぞれに個性があり印象的ですよね。
島本さんがこういう作品を書けるのだと思われた方も多いかもしれません。
他の島本作品は胸を締め付けられるのですが、本作の特に最初の2編は他作にはない強烈さがあり、その強烈さを言葉で表してみると“決して結果としては辞めないのですが、途中で挫折しようかなという気持ちにさせられる稀有な作品集”と言えそうかなと思ったりします。
これは島本作品全般に言える、他の作家では味わえない“繊細さ”なのですが、その繊細さを超越して書かれた作品集だと言えそうです。
そしてここで使った“超越”という言葉なのですが、これが曲者で捉え方というか感じ方が読者によって違ってくるのでしょうね。

でも私たち読者は最後まで読みとおします。
そして島本理生の作品像がこの作品を読んだことによって、今まで以上にずっとずっと奥行きをもたらされたことに気づくのである。
そう、本作は島本理生にとってそして読者にとって“意義深い”作品集なのである。

面白い(8)
posted by: トラキチ | 島本理生 | 21:10 | comments(0) | trackbacks(0) |-
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