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『柳橋物語・むかしも今も』 山本周五郎 (新潮文庫)
「柳橋物語」評価10点。

昭和21年「新青年」にて連載。
凄く胸が打ちひしがれる物語です。
この物語はやはり究極の三角関係といったらよいのでしょうか。
主人公のおせんを幼馴染として育った2人の男である庄吉と幸太がとりあうのですね。
実はとりあうという表現ほど直接的じゃないのです。
庄吉は大坂に行って、残されたのは幸太とおせんです。

おせんは将来を庄吉に誓うことによって操をたてるのですが、物語は江戸を襲った火事によって急変するのですね。

学生時代、初めて読んだ時は庄吉に告白されて彼を待ち、結果として翻弄されて生きることを余儀なくされているおせんに対して凄く同情的な気持ちになりました。

そしてその後、庄吉と再会、大きな誤解が生じ2人の間に大きな溝が生じます。
その後最終的におせんのとった行動に拍手を送ったものでした。
凄く女性としてまた人間として立派なものだと強く感じました。
その根底にはやはり拾った赤子を幸太の子供として育てていくという強い気持ちがあったにもかかわらず、読者は本当の幸太の子供ではないということを知っているからです。
おせんに対してやはり不幸な女性であるという偏見めいた見方をしてたんだと思います。
そしてそういう見方も偏見と言う言葉を使いましたが、決して無理のある見方ではない、どちらかといえば主流なのかなと思います。

今回、再読して逆に感じたのは、おせんが決して不幸な境遇だったとは思えなかったのです。
逆にこちらは少数意見かもしれませんね、とりわけ女性読者からはお怒りを買うかもしれません。
私は却って針仲間のおもんの身を持ち崩して行く姿がおせんよりも不幸なように感じました。

というのは、庄吉はこの物語の中ではどちらかと言えば悪役めいた役割を演じてますが、物語の初めの告白から江戸に戻ってくるまで、少なくともおせんに対する愛情は尋常なものではなかったはずだと私は確信しています。
そして男は結構疑い深いというか、本作にあるシチュエーションからして誤解が生じて当然だと思います。
まあそのあたり、作者の力量の確かさでしょうね。

いずれにしても、主人公のおせん、最後にはたくましく生きることを貫きます。
そのたくましさが“八百屋”を営むことによって描かれているところが作者の優しさなんでしょうね。

そのたくましさの源は死んだ幸太の愛情だけでなく、冷めきってますが過去の庄吉へのいちずな思いがそうさせたんだなと私は捉えています。

人を愛することって難しいけど素晴らしいことです。
その答えを読者なりに見つけだすことができる傑作中編だと思います。
初読の時、自分も若かったのでページをめくるのが辛かったのを覚えています。
そして今回再読して逆に清々しくさえ感じました。

つけ加えておきたいのは江戸の大火のシーン、凄くリアリティがあります。
ちょうど書かれたのが終戦直後だったので凄く生々しく感じられました。

未読の方是非手に取ってください。
作者の力量は読者を元禄の江戸の世界にいざなってくれます。


「むかしも今も」評価9点。

昭和24年「講談新誌」に連載。
こちらは「柳橋物語」よりもハートウォーミングな話ですね。
作者はいちずに人を想うことの素晴らしさを伝えたかったのでしょう。

主人公の直吉は愚直で風采の上がらない男として描かれています。
まるで作者の代表作の“さぶ”のキャラですね。
彼は幼い時に両親を亡くし、紀六という指物師の家に世話になり、まきの子守役となります。
対照的にまきの夫となる清次は美男で大店の出です。
物語としてはやはり予想通り、その美男の清次とまきが結ばれ結婚します。
だが清次の欠点が露呈されるのですね。

まきと結婚してからも博打をやめることが出来ずに落ちるところまで落ちる清次。
直吉は亡くなったまきの親父さんから後見を頼まれてるのです。

物語に“つき当たり”という言葉が出てきて重要な役割を演じています。
これは直吉とまきとが幼いころに遊んだ場所の名前なのです。
いわば2人の長年の愛情が築き上げられた場所として描かれています。
とりわけ直吉のやさしさは女性読者から圧倒的な支持を受けると思います。
そしてその優しさの根底は誠実さと義理堅さなのですね。

まきが失明した後も献身的に支える直吉の姿が印象的です。
これはなかなかできませんよ。

ラストが少しはっきりせずに読者に委ねている部分のあるのが作者の心遣いだと受け取っています。
私的には若気のいたりで、まきも清次に想いを一時的に寄せたのですが、ずっとまきと直吉との間には深い愛情がお互いに芽生えそして育っていたんだと思います。
お互いが相手をいたわっているのですね。

柳橋物語の庄吉よりも清次は悪人と言うか弱い人間として描かれています。
ちょっと救いがないですね。

この二つ物語を総括すると、結果として幸せを掴みとれそうな「むかしも今も」、逆に愛したであろう人がすでに亡くなった「柳橋物語」、作者はいわば両極端のエンディングを用意しているのですが、読者は作者の筆力に翻弄され結果として陶酔します。

そして最後には江戸時代であれ現代に通じること、そう人は人を愛さずにいられない儚いけど素敵な生き物なんだということを再認識してしまうのです。
それはホッと胸をなでおろす感覚に似ているような気がします。

私はおせんと直吉、二人の主人公の芯の強さを少しでも見習いたいなと思い本を閉じました。
posted by: トラキチ | 山本周五郎 | 21:40 | comments(0) | trackbacks(0) |-
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