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評価:
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河出書房新社
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(2013-06-21)
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ドラマ『すいか』で独自の世界を構築してデビューした脚本家(夫婦みたいですね)の小説デビュー作で本作で本屋大賞2位を受賞したことはまだ記憶に新しい。
ひと言で言えば脚本家として成功している木皿ワールドを文章にて読者の満足できるレベルで体現したものだと言える。読者は小説を読みながら、頭の中で映像イメージを描きながら読む進めることが出来、いわば斬新な読書体験を満喫できるわけである。
内容はタイトル名の由来がとってもドラマティックであることはもちろんのこと、登場するひとりひとりの人物が憎めない人たちばかりであり、とはいえ、決して楽観的ということもなく、さりげなくではあるがひとりひとり背負ったものがあって、それを作者は巧みに読者に語っている。とりわけ夕子の章は秀逸であり、その息子であるカズキに彼女の魅力が受け継がれたのだと思ったりする。
子供もいないのに亡くなった夫の父(ギフ)と同居しているというテツコが主人公格で、いきなり荒唐無稽な設定に慌てふためいている暇もなく、各編で代わる代わる語り手が代り物語に整合性を深めてきます。
それはやはりすべての人が愛情に満ちていて、その結果としてテツコがギフと暮らしているということに納得が出来るからだと思います。そして最後のテツコの心情が代るのはこれは見事乗り越えると言っていいのでしょう、やはり感動的です。今後のテツコの幸せを願って本を閉じました。
ご存知のように本作はBSプレミアムで昨年ドラマ化されています。脚本も予想通り作者が担当しているので、原作に沿ったドラマだと言えます。個人的にはキャスティングにやや不満が残りますが、プリンセスプリンセスの名曲「M」が効果的に使われていて素晴らしい出来だったと思います。2015年8月1日より再放送されますので未視聴の方は是非ご覧ください。
評価9点。