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『モラトリアムな季節』 熊谷達也 (光文社文庫)
和也シリーズの第二作。『七夕しぐれ』で仙台を舞台に小学生五年ながら正義感溢れるビターな世界を描き出した作者が次に描く世界は、昭和五十年代に浪人生として予備校生活を仙台で始める和也で人生を模索している二年間が描かれます。

本作に至っては凄く自由奔放に書かれた印象が強く、ところどころに作家となった現在からその当時の時代を振り返ったシーンが散りばめられていて前作以上に私小説度が上がっていることが最大の特長だと感じます。
感動的なのはやはりナオミとの劇的な再会でしょう、彼女が登場しなければ小説も成り立たず、読み手の興味も削がれたことでしょう。彼女とカーコとの三角関係に悩むシーンがリアルで青春を満喫できます。

ただ和也という主人公ですが、悪く言えば少年時代(第一作)の正義感溢れる性格から優柔不断な性格に変貌されていて、浪人生の本分をわきまえていない所が目立っているような気がします。
自伝的作品なためにやむをえないのでしょうが音楽喫茶に嵌ったり、小説を書いたり、予備校をサボったり。勉強に身が入らずこれでは受験の神さまがなかなか微笑んでくれませんよね。あとは安子ネエが本作でも重要な役割を演じていますがユキヒロの登場が少なかったのが残念でもあったけれど。

先日、仙台を観光した際にカーコと分かれた勾当台公園を訪れたのであるが、若き日の作者がこのあたりを彷徨っているのをイメージしたのであるが、作品としてのインパクトや完成度は決して高くはないけれど、熊谷達也という作家をこれから何冊か読もうと思っている読者には必読書だと言えよう。なぜなら作者の仙台という街に対する愛情が詰まっているからである。

評価8点。
posted by: トラキチ | 熊谷達也 | 22:47 | comments(0) | trackbacks(0) |-
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