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評価:
藤岡 陽子
光文社
¥ 4,483
(2013-02-13)
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ドラマ化決定につき急遽手に取った。 最近の作品群の充実ぶりはご存知の方も多いであろうが、本作を読んでデビュー時から凄い充実した作品を書かれていたことは嬉しい悲鳴を上げざるを得ない。 内容は看護学校を舞台とした青春小説で現在の藤岡作品にも通じる生きる価値を問う作品であるが、恋愛や友情を他の作品よりも強く織り込んでいるところが新鮮にも感じられる。 主人公の瑠美はキツイ性格ながらも誠実さはピカイチの性格で大学入試に失敗して看護学校に進学するが、そこで大学生活では味わえない過酷な体験をし成長してゆく。
その成長の過程として脇を固めるユニークな登場人物達との邂逅が非常に強く、彼ら(彼女ら)も瑠美の影響を多大に受けて成長してゆく様が清々しさを超えて感動的である。 とりわけ感動的なのは親友役の千夏の存在で、そそっかしいけれど楽観的な考えで生きていた彼女が終盤に瑠美の正義感が乗り移ったかのような行動は意外でもありましたがそれ以上に圧巻でした。医療関係に携わる人の実態の凄さが露呈された形でもあるけれどやはり世の中は理不尽なことだらけなのでしょうか。
主婦ながら看護学校に通う佐伯や謎の美女遠野、素敵な恋愛模様を演出してくれる男子学生二人、彼らの人生もドラマティックです。 作者自身が看護学校を経験していて現在でも看護師として活躍していると聞きますが、近作を読むとまるで約10年前に書かれたであろう本作の主人公の意思を引き継いでいるようにも感じられます。 私たち読者も時には温かく時には厳しいまなざしで物事にブレずに対処してゆきたい。それは瑠美いや作者の願いであるはずである。
評価8点