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『ハブテトル ハブテトラン』 中島京子 (ポプラ社)
評価:
中島 京子
ポプラ社
¥ 1,470
(2008-12)
中島京子著作リストはこちら

<小学5年生の少年の心の溝を軽妙なタッチで描いた秀作。>

中島京子さんの2冊目は少年少女小説。
一応、一般書の分類であろうが実際は小学高学年ぐらいから読める。
ちょうど主人公の大輔ぐらいの年齢からかな。
版元のポプラ社らしい作品だと言えそうですね。

でも一筋縄ではいかないのが本作。

主人公で小学5年生の大輔が東京を離れて広島に来たいきさつが泣けるというか重要となっているのですね。
学級崩壊の状態のクラス委員を押しつけられ、その結果喋れなくなり、登校拒否となった大輔。両親の配慮から2学期だけ母親の故郷である広島県福山市の学校に転入するべく、夏休みの間に先にひとりで飛行機に乗って広島に向かうところから物語は始まる。
そう始まりは重いテーマを包括しているのである。
一応、大輔の再生いや成長の物語ということなのであろう。
印象的な人物はやはりハセガワさん。
代役で空港まで迎えに来るのであるが、彼との出会いの冒頭のシーンに度肝を抜かれた読者も多いはず。
ハセガワさんの存在なしに大輔の成長はあり得なかったと断言したいな。
後半部分で語られるハセガワさんの辛い過去も圧巻で読ませどころ。
このあたり大人の読者も意識して書かれてるのかなと思ったものである。

大輔がまるで穏やかな瀬戸内海のように周囲に順応していくシーンが心地よい。
ウメちゃん、マテオ、ノブミツ、そして大輔のことが気になるオザヒロ。
転入先の学校で個性的な友達が出来ます。
個性的と言えば担任の先生である魔女・オオガキ先生もかなりのもの。

最も印象的なシーンは今治にいる元クラスメートのサノタマミに会いに悪戦苦闘して自転車をこぐシーン。
このシーンは本作の表紙にもなっているのであるが、このシーンを通して大輔は一皮むけ見事に成長を果たしたように思える。
思わず読者も手に汗握って応援したのである。
サノタマミとのあいだにはお互いに確執があって、すれ違っているのですね。
ただ大輔の気持はかなり切ない恋心と言ってよく、読者にも確かに伝わるのですわ。
なんとか会わせてあげたいという気持ち。
最初は車で向かうのですが、途中で自転車をこぐ羽目になったいきさつは、同行していたハセガワさんらしいエピソードですね。
これも神様のはからいなのだと息をのんで読み進めましたわ。
結果は少し辛いこととなってしまいます。
まあ失恋と言えば失恋ですね。
ただ、男は失恋を通して大きく成長して行く生き物なのであると自分自身を納得させました(笑)

題名となっている“ハブテトルハブテトラン”は「すねている、すねていない」という備後弁らしいのですが、本作ではまるで“頑張れ!頑張れ!”と読者を励ましている“まじない言葉”のように感じたのである。
中島マジックにはまった証拠であろう。

敢えて難を言えば、両親の子供に対する愛情があんまり読者に伝わらなかったことでしょうか。
まあ、自分たちは東京にいたから余計にそう感じるのでしょうね。
読み違えかもしれませんが、私的には気になったので書きとめておきます。

最後に東京に戻ってくるところが賛否両論ありそうですが、まあ現実は厳しいかもしれないけど成長した大輔なら今度こそは上手くやっていくであろうと希望して本を閉じた。
そう、本作は希望の物語なのである。
読者であり大人である私たちが希望をなくしてはいけないのだ。

東京に戻って苦難にぶつかって行く大輔に思わず、前述した私なりの解釈の言葉“ハブテトルハブテトラン!”という言葉を掛けて本を閉じたのである。
この爽やかな気分、是非あなたやあなたのお子さんにも味わってほしいなと思う。

本は人を成長させるものである。
本作を通じて中島さんから再認識しました。

面白い(8)
posted by: トラキチ | 中島京子 | 17:33 | comments(10) | trackbacks(5) |-
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こんばんは。
祖父母をはじめ、広島の人たちの心の温かさに読んでる私も幸せになりました。
担任は言うに及ばずですが、両親もちょっと無責任に感じられますよね。
| なな | 2009/03/24 9:47 PM |
こんばんは。
子供向け作品ですが、大人から子供まで楽しめる小説でしたね。
温かい人たちと暮らすことで、少しずつ元気を取り戻す大輔が、よかったです。
| 藍色 | 2009/03/25 1:35 PM |
>ななさん
そうですね、両親は子供に対して本当に心配してるのかなと思われても仕方ないのでしょうね。でも結果として自立を促した形にはなりましたけど、小説の成り行きとしては少し不自然かなと思ったりもしました。
担任、信じられませんよね。

>藍色さん
小学高学年〜中学生ぐらいのお子さんがいらっしゃる人は、是非読ませてやってほしいですね。必ずプラスになると思いますわ。
| トラキチ | 2009/03/25 7:35 PM |
こんばんは。トラキチさん。
TBありがとうございました。
せっかく風景や心情など丁寧に描かれているのに、両親や先生の描き方が雑なような気がしました。
この作品はいまいち納得がいきませんでした。
| ゆう | 2009/03/25 8:04 PM |
トラキチさん、こんばんは。
この作品、ホント爽やかでしたよね。
物語に描かれなかった今後のダイスケが気になります。
どうなってしまうんだろうと。
でも、あのダイスケですからきっと大丈夫。
どんな両親でもどんな担任でも…そんなことを思います。
そういう期待を大人であるわたしたちが持たなくてどうする?って、
ちょこっとだけ思います。
| ましろ | 2009/03/25 8:13 PM |
>ゆうさん
東京の先生の描き方に難があったように思えますね。どちらかと言えば、子供が読んでという部分に重きを置いて書かれたような気がするというかそう受け取っております。
同年代のお子さんがいらっしゃる親御さんは特にゆうさんのように感じるのでしょうね。

>ましろさん
私、この作品大好きですよ、実は。
なかなかこういった作品を読む機会がないから余計に感じますよね。
両親も担任も、ハセガワさんを手玉に取った(笑)ダイスケなら大丈夫でしょう。
希望を持って本を閉じるべき作品なんでしょうね。
| トラキチ | 2009/03/25 11:32 PM |
こんにちは。
コメント&TBの返事が遅くなりました。
すみませ〜ん。

この本は中島さんらしいひねりがある話でしたね。
ハセガワさんをはじめ松永の人たちもみんな良かったし。
個人的にはサノタマミに会いに行くエピソードが好きです。
松永でいろいろな経験をした大輔なら東京に
戻ってもきっと大丈夫って思えますよね。
| mint | 2009/04/13 12:15 PM |
mintさん、こんばんは♪

サノタマミに会いに行くエピソード本当にいいですよね。
女子の大人っぽさを目の当たりにして、大輔もより成長出来たのだと思います。
東京戻ってもきっと大丈夫ですよ。
| トラキチ | 2009/04/13 7:17 PM |
トラキチさん
TBさせていただきました。

瀬戸内の海の色のように、爽やかなお話でした。
東京に戻る大輔に、心からエールを送りたいですね〜
| EKKO | 2009/04/18 5:26 PM |
EKKOさん、こんばんは♪
本当にこの爽やかさおすそ分けしてほしいです。
備後での経験からして東京では大丈夫だと信じたいですよね。

TBお互いに無理だったような(汗)
| トラキチ | 2009/04/20 1:26 AM |









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2009/03/24 9:47 PM
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