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『こちらあみ子』 今村夏子 (筑摩書房)2011.11.30 Wednesday
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太宰&三島賞W受賞作品。太宰治さんも三島さんも天国で拍手しているのではないでしょうか。それほど心に痛い物語です。あみ子は一生懸命に周りに合わそうとするのですが、どうしても馴染めずに崩壊への道へと進んでしまうのですが、残酷とも言える内容とは言えどそれを中和させる作者の柔らかい文章のおかげで、読者は痛々しくもあみ子を受け入れてしまい、自然と応援してしまうのですね。あと実母でない母親の存在感も大きいです。 あみ子の三本の歯の代償は大きかったか感じるところの大きな作品で、読者の感性を問われる一作だとも言えます。
表題作の「こちらあみ子」、簡単に言えば、あみ子は現在は祖母と一緒に暮らしているのですが、十五歳で引っ越しをするまでのなぜそうなったかが語られています。
タイトルはお読みになった方なら誰でもわかる、トランシーバーでの応答言葉ですね。
結果として話が出来なかったのですが、それだけに余計に胸が締め付けられます。
そしてただ単にあみ子だけではなくって、母親に対しても同じぐらいの共感というか同情ですかね、そう言った気持ちにさせられます。
これはそうですね、言葉でここで表現しつくせないレベルまで来ていますね。
というのは、読者側と言ったらいいのでしょうか、より母親に近いのですね。とりわけ女性読者で30歳以上の方でしたら本当にまるで自分に起こったことの感じ取ることが出来るのだと思われます。
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『ワーカーズ・ダイジェスト』 津村記久子 (集英社)2011.11.25 Friday
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少し字余り的な説得力のある文章は読者にとっても心地良く、読み終えて日頃のイライラが緩和され、辛いのは俺(私)だけじゃないという気にさせてくれること請け合いの一冊です。>
初出 小説すばる。
芥川賞作家である津村さんの作品は『ポトスライムの舟』と『八番筋カウンシル』に次いで本作で3冊目ですが、本作が一番上手く書けてるような気がします。
男女の主人公の様子が交互に書かれている本作、働いているといろいろありますよね。
ひとことで言えばそういう読者の気持ちを代弁してくれる作品です。
2人の佐藤さんの名前は奈加子と重信。
奈加子はお肌のくすみが気になり、重信は薄毛が気になっています。
2人とも不器用ですよね。
32歳の2人は会社でも微妙な位置で、奈加子は同僚のあいだとの気持ちのわだかまり、重信はクレーマーへの対応。
その2人が序盤に仕事上で出会います。
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『婚前特急』 2011ビターズ・エンド=ショウゲート (DVD)2011.11.21 Monday
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吉高由里子ファンにはこれ以上ない映画ですが、ファンでない方には退屈するかも。
私的には本作のような役でも嫌味がなくって可愛いと思います。
男を翻弄しつつも健気なところがキュートですね。
普通5人も男がいる役柄だったらちょっとひんしゅく買っちゃうけど、さすが小悪魔的な役は上手いですね。
脚本がいいです。男性視聴者に夢を持たせてくれる内容ですね。
これは観てのお楽しみですね。
親友役を杏ちゃんが演じてますがえらい性格の違う友達同士ですね(笑)
まあ、女性が観たら羨ましいという人もいるかもしれないし、または馬鹿じゃないと言う人がいるかもしれません。
ただ、そう賛否両論というか支持されるか否かが極端に分かれるところが吉高由里子の魅力というか存在感の大きさの証明だと言えると思います。
ファンの方は由里子ちゃんのファッションがいろいろ楽しめます。
ファンの方は必見、ファンじゃない方は時間があればご覧ください。
評価(8)
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『日無坂』 安住洋子 (新潮文庫)2011.11.19 Saturday
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初安住作品でしたが、まるで現代ものを読んでるような感覚でスラスラと読めてしまう読みやすさには驚きました。
軸は親子愛ですが、私は兄弟愛も凄く印象的に描かれていると感じました。
ほとんど男女の恋愛話が描かれてないのですが、読者を飽きささずに一気にラストまで読ませてくれます。
思わず自分自身の人生をみつめなおす機会を得ました。
作者に感謝です。
物語の軸は前述したように“親子愛”です。
主人公の伊佐次は江戸の老舗薬種問屋・鳳仙堂の跡取り息子として生まれ元の名は利一郎といいます。
でもわけあって今は浅草の賭場を仕切っています。
なぜ転落したかと言うと父親である利兵衛との確執です。
利兵衛は入り婿で婚家に気を使い、逆にわが子に対しては厳しくふるまうのです。
まあ、子供が可愛くない親はないのですが子供の頃は親の苦労が子供にはわからないですよね。
そして勘当されてしまいます。
でも会ってなくても親子愛は存在します。
タイトルともなっている“日無坂”、父と息子が最後にすれ違った坂なのですが、凄いドラマがあります。
ひとことで言えばそうですね、“すれ違ったのですが、お互いの心が永遠に触れ合うきっかけとなった坂”なのです。
このあたりあまり詳しく書くと興趣をそぎますので読んでのお楽しみですね。
弟の栄次郎の存在感も凄いです。あまりに頼りないのですよ。まあ伊佐次といかに心を通わせていくかが終盤の読ませどころとなりますし、楽しめました。
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『GANTZ PERFECT ANSWER』 2011東宝 (DVD)2011.11.18 Friday
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評価:
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バップ
¥ 3,108
(2011-10-14)
さていよいよ完結編ですね。
サブタイトルはPERFECT ANSWERとなってますが、私にはそうは思えませんでした。釈然としないところも多々ありました。
でも吉高由里子は今回はサードクレジット通りの出演場面がありました。
今回はターゲットとして追いかけられます。
展開が早くて意外な方向に進みますね。
前編よりもアクションシーンも多くて楽しめるのは間違いないと思います。
途中で生きてるのか死んでるのかわかりづらいところがありますが、まあ許容範囲内でしょう。
加藤と玄野あるいは加藤と偽加藤(星人版)との戦いは手に汗握ります、それなりに。
そして人間ドラマも展開されてます。
こう言った展開は二宮よりも松山の方が一日の長がありますよね。
最後に自分なりの結論とすれば、二宮・松山ファン→結構楽しめる、吉高ファン→やや消化不良、その他の方→あんまり楽しめない。
こんな感じでしょうか、劇場に行かれた方の大半は二宮・松山ファンのはずだから、きちんとコマーシャリズムに乗って興行収入を得たそれなりの娯楽作品だということに依存はありません。
評価(7)
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『GANTZ』 2011東宝 (DVD)2011.11.17 Thursday
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吉高由里子が出てるということで観たのですが・・・
サードクレジットなのですが、実際の出番は本当に少ない。
実際のサードクレジットは夏菜ちゃんですね。
まあ、この子も可愛いのですが知名度が違いすぎるような、だから由里子ちゃんがサードクレジットなのですね。
役柄は二宮演じる玄野に恋する学生役でセクシーシーンはありません(笑)
普段漫画は読まないので原作との相違点がわからないのですが、玄野(二宮)と加藤(松山)との友情にポイントを置いて観たらそこそこ面白いかも。
それにしても、二宮も松山もともに演技派の部類ですが、アクション俳優と言う感じではないのですが、まあ人気で言えばこの2人のコンビは凄いのでしょうね。
たとえば「マトリックス」のような緊迫感があったかと言えばやはり見劣りするような気がします。
CGはそれなりに凄かったのですが、あとガンツスーツですね。
男性視聴者としたら夏菜ちゃんのガンツスーツ素敵でした。
でも、吉高由里子のを観れると思ったので残念でもありました。
まだ結論付けるのはよくないのでしょうが、二宮・松山ファンには期待を裏切らない作品なのではないでしょうか。
吉高ファンや内容を重んじて観た私は、ちょっとがっかりですがまだ前編なので一応続編も観てからの評価と思います。
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bk1から届きました。2011.11.15 Tuesday
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オンライン書店bk1にてポイントプレゼントがあったので、応援している椰月美智子さんの文庫本で代表作『しずかな日々』5冊購入しました。4冊は身近な知り合いにプレゼント予定でいます。
この作品は野間児童文芸賞、坪田譲治文学賞をダブル受賞しています。
帯の北上次郎さんの言葉が印象的です。
“読み始めてすぐ、これはただごとではないと思った。 自分はいま傑作を読んでいるのだ、という強い確信を抱いたのである。”
椰月さんの著作リストを記しますね。
実は私も3冊しか読んでません、頑張ってコンプリートしたいです。
未読の方は『しずかな日々』が良いと思います。
ハイ、傑作です!
『純愛モラトリアム』講談社 (2010/11)
『恋愛小説』講談社 (2010/11)
『市立第二中学校2年C組』講談社 (2010/08)
『ダリアの笑顔』光文社 (2010/07)
『フリン』角川書店 (2010/05)
『坂道の向こうにある海』講談社 (2009/11)
『ガミガミ女とスーダラ男』筑摩書房 (2009/09)
『るり姉』双葉社 (2009/04)
『枝付き干し葡萄とワイングラス 超短編を含む短編集』 講談社 (2008/10)
『みきわめ検定 超短編を含む短編集』 講談社 (208/10)
『体育座りで、空を見上げて』 幻冬舎 (2008/05) 文庫化(2011/06)
『しずかな日々』 講談社 (2006/10) 文庫化(2010/06)
『未来の息子』 双葉社 (2005/04) 文庫化(2008/02)
『十二歳』 講談社 (2002/04) 文庫化(2007/12)
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『きことわ』 朝吹真理子 (集英社)2011.11.14 Monday
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第144回芥川賞受賞作品。芥川賞作品なので短いですが、じっくりと腰を据えて読まなければ少し難解かもしれません。
というかこの作品の良さがわかりづらいと思います。なぜなら現実と過去の出来事が25年間の歳月を越えて語られるのですが、どこまでが夢でどこまでが現実がわかりにくいからです。
それてにしてもひらがなを多用した文章、作者の気品の高さの表れでしょうか、登場人物も柔らかく感じられます。
夢をみる、みないという表現が作中で使われテーマとなっていますが、私的には貴子と永遠子の四半世紀ぶりの再会そのものが夢を叶えたと読むべきだと思います。
2人を断ち切ったのも、再会させたのも春子なのでしょうね。
内容自体は本当に単純な話です、それを作者が味付けしてるわけですね。
葉山の別荘を引き払うことになって25年ぶりに再会する貴子と永遠子。
当時貴子が8歳で永遠子が15歳の7歳差でこの差がお互いの記憶の差を如実に物語っております。
そして再会の現在、15歳だった永遠子は40歳に。8歳だった貴子は亡くなった母・春子の享年と同じ年になっています。
永遠子の娘の百花が、くしくも25年前の貴子と同じ年齢であるということも物語に影響を与えていますね。
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『漂砂のうたう』 木内昇 (集英社)2011.11.12 Saturday
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第144回直木賞受賞作品。時代小説と幻想小説を融合したような作品。舞台は明治十年の根津遊郭 。人間って儚いけど力強い生き物なのですね。 臨場感のある描写が見事で作者の筆力の高さを証明しています。主人公である定九郎と龍造との生い立ちの違い、生きざまの違いを対比して読むことによってこの物語の奥行きの深さを味わえると確信しております。 メインテーマはやはり“自由”になるのでしょう。あと女性がたくましいのですね。
少し主人公である定九郎に焦点を当てて書きますね。
江戸から明治へと時代は変わっているのですが、人間は変わりにくいのですね。
ましてや身分が武士から身分を隠して立番として働く身となれば。
女性の読者が読まれたら定九郎のような男にはイライラすると思います。
でも私はそうは思いませんでした。他の登場人物よりも個性はないけど人間らしい面はあると思います。
私はその不器用さがなんとも言えず魅力的に感じました。
現代に生きる私たちに通じる部分が多く、この物語で成長したとまでは言い難いですが、わずかな希望をつかみ取ったとは言えると思います。
だから、これから苦しいことにぶち当たった時に自分を定九郎に置き換えて読んでみる、すなわち初心に帰るということですね。
少し読み違えかもしれませんが、こういう読み方もあるんだなと思ってください。
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『七人の敵がいる』 加納朋子 (集英社)2011.11.07 Monday
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初出 小説すばる。
七編とエピローグからなる連作短編集。
初めはずうずうしくて嫌な女性だなと思ってた主人公で出版社勤務の陽子ですが、正論を押し進めていく姿に自然と応援してる自分がいます。 見事に作者の術中に嵌ったのですが、世の中やはり遠慮ばかりしてては駄目ですね。作者は七人敵がいても、八人味方を作ればいいという楽観的な考えで厳しい世の中を渡って行こうと読者に処世術を教えてくれています。女性が読まれたら陽子のカッコよさに惹かれること請け合いです。
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