Search
Calendar
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< September 2012 >>
Sponsored links
徘徊ブログ
読書メーター
トラキチの今読んでる本
あわせて読みたい
あわせて読みたいブログパーツ
最近読んだ本
トラキチの最近読んだ本
鑑賞メーター
トラキチの最近観たDVD
New Entries
Recent Comment
Recent Trackback
Category
Archives
Profile
Links
mobile
qrcode
RSSATOM 無料ブログ作成サービス JUGEM
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

posted by: スポンサードリンク | - | | - | - |-
 『浮世の画家』 カズオ・イシグロ (ハヤカワepi文庫)
原題 "AN ARTIST OF THE FLOATING WORLD"(1986)

飛田茂雄訳。イシグロの2作目にあたる作品でウィットブレッド賞受賞作。

戦後まもない日本が舞台の作品で、戦争を挟んで時代の流れとともに価値観が変わっていく世の中を主人公である元画家の小野が現実とを重ね合わしながら過去を回想する物語。
主人公に対しては家族に対する思いやりという点においては読みとることが出来たのが救いであるが、『日の名残り』の主人公のような人間としての矜持は感じなかったがそれは舞台が日本であるからかもしれないし、確固たる意志のある言葉で綴ってなく曖昧さが漂っているのも要因だろうがそれは作者の意図したものであろうが。
どちらかと言えば、周りの人々の言動により主人公の人となりが多少なりともくっきりと浮かび上がっている感じですが、それは戦争に翻弄されつつ過去の矜持にしがみついているようでそうでない人間の弱さが滲み出ているのであろう。生きることの辛さを諭した作品であろうが評価がしづらい作品であることにも間違いない。

私的には戦争と言う人に急激な変化をもたらす世界においては、今まで正しいと思っていたことが急に悪く嫌悪される評価になります。
その人の力ではどうしようもない世界の変化(戦争)の前に、主人公がとった師匠であるモリさんから離れてしまったこと(作風の変化)をいつまでも引きずっているように感じられました。
娘・紀子の縁談に関して心配しているところなどその典型例ですよね。

もっとも印象的なのは弟子であった黒田から避けられているであるシーンですね。
やはり芸術家にとっては凄く辛くて悲しいことなのでしょう。

複雑な人間の内面を描くことに長けた作者であるが、5歳までしか日本にいなかった作者はいわば日本が“第二の祖国”なのでもっとリアリティに富んだ作品もあるのでしょうが。
しかしながらバックグラウンドを例えば外国人が読むより数段理解している日本人読者には、戦争を知らない私たちにとっては本作のような作品を通して人の内面の変化を窺い知ることが出来る貴重な体験です。

少し曖昧模糊とした物語でしたがラストは救いがありますよね、孫が2人出来ることを拍手を送って本を閉じれたから良しとしたいですが、外国人読者の率直な感想を聞いてみたいと思ったりもします。

評価7点。
posted by: トラキチ | ハヤカワepi文庫 | 01:51 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『わがタイプライターの物語』 ポール・オースター著 (新潮社)
原題“The Story of My Typewriter”(2002)

絵 サム・メッサー/訳 柴田元幸。
小説というよりもどちらかと言えば画集と言った方が適切だと言える作品。
1974年以来、長年使っているオースターのタイプライターを見染めたサム・メッサーの絵が素晴らしい。ずっとタイプライターを使っているオースターの人となりと愛着が窺い知れますし、彼の性格をわかった上でメッサーがタイプライターを見染めたのは間違いないでしょう。作者とともにいろんなところ(東京、パリなど)を旅したオリンピア製のタイプライターの何枚もの絵が素晴らしいのですが、何と言ってもラストのニューヨークをバックに描かれた絵が個人的には一番気に入りました。
ポール・オースターに“ニューヨーク”、そして“タイプライター”は良く似合う。
メッサーとオースターとの絆は本作を通して深まったのでしょうが、このタイプライターでもって物語が紡がれているのかと、読者とオースターとの距離もわずか10分足らずで縮まった気がする感慨深い読書となりました。

何よりもいいのは、オースターが長年使っている理由ですね。それは古いタイプライターが壊れ新品を買う余裕がなくて友人から40ドルで譲り受けたことから始まります。
やはり今のオースターを築いたパートナー的なものとして重宝しているのでしょう、決してデジタル的なものにこだわらない律儀正しいオースターの一面を垣間見ることが出来ます。
読者も作中のタイプライターのようにオースターの作品により愛着を感じることだと思います。
オースターがタイプライターで物語を紡いでいることと彼の作品が奥が深いことと決して無関係ではないような気がしました。

評価8点。
posted by: トラキチ | 柴田元幸翻訳本 | 11:36 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ストーリー・セラー』 有川浩 (新潮社)
初出 Side:A アンソロジー「Story Seller」、Side:B 書き下ろし。

妻が作家(書く側)で夫がそのパートナー役(読む側)である2組の夫婦の悲しい物語。
悲しいと書きましたが結末が悲しいだけで、それよりも愛に満ち溢れているシチュエーションを楽しむべき話だと思います。
とりわけ、2人の出会いや好きになって付き合うまでに至った過程の描写が印象的で胸に突き刺さります。
読者は笑って泣いて恋を堪能できます。
このあたりベストセラー作家の有川さん、読者のツボを押さえていますね。
常に読む側の人の意識を念頭に入れて書かれています。
そしてテンポの良い文章は現在この人の右に出る人はいないんじゃないかなと思います。

sideAとsideBとに別れていますが前者は作家である妻が病気になり、後者はパートナーである夫が病気になります。
個人的にはAのカップルの方が2人の愛情が深かったように感じれました。妻の祖母宅で義父に対して妻をかばう旦那さん、男性読者ですが惚れちゃいますね(笑)

内容的には死が主題ではなく、愛というか夫婦愛が主題です。
ただ涙を誘われるほど感動的ではなかったです、それは最近山本周五郎の作品を多く読んでいるからかもしれませんが(笑)
それよりも相手を大切にする気持ちを感じ取り、そしてもっと言えば作者が読者を大切にする気持ちを感じ取るべき作品だなと理解しています。

作家は読者に夢を売っています。
この作品の中では妻と夫というくくりですが、読みとる私たちはそう捉えるべきだと思います。
本作の装丁などもプレゼント包装しているかのごとく仕様ですよね。
だから本作は作者の読者に対する日ごろのお礼も兼ねたメッセージ的作品(プレゼント的?)と言えば少し深読みしすぎでしょうか。
決してそうではないはずです。
とにかく作者の心地よさは絶品だと感じざるをえない読書でした。

評価8点。
posted by: トラキチ | 有川浩 | 09:39 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『つるかめ助産院』 小川糸 (集英社文庫)
2010年集英社より単行本刊行、2012年8月文庫化。

NHK火曜ドラマ原作。ドラマほど主人公のキャラは立っていませんが却って読者に訴えかけるところが強いような気がします。
小川さんの作品はすべてを失った人が再生して行くというパターンが多いのですが、本作もそれに近い感じで物語が始まります。
まりあ自身、両親の顔も知らずに捨てられた過去があり里親に引き取られます。
そしてなんとか好きな男性と結婚するのですがその夫が失踪してしまいます。
夫を探しに南の島までやってきたまりあ、そこで彼女は自身の妊娠を告げられます。

物語はタイトル通り助産院での話なのですが(南の島での)主人公まりあがつるかめ先生はじめパクチー嬢や長老、サミー、エミリーなど、過去を引きずっても強く生きている周辺の人に触れ合って再生して行く過程が心なごみます。
周りの人にいろんな辛いことを告白して行くことによって気持ちが軽くなっていきます。
私はまりあと里親お互いの心が通い合ったシーンがもっとも感動的でした。

そして本作、印象的なのはへその緒という言葉が何回も出てきます。そう愛だけでなく命の尊さも謳った作品なんです。

妊娠・出産という貴重な体験を通して成長したまりあ、男性読者として女性の大変さを改めて思い知った作品でもあります。

ラストシーンで小野寺君がかなり唐突に出て来たときは驚きました。賛否両論ありそうですが、小川さんらしい結末ですね。人生幸せに越したことはありません。お裾分けして欲しいですね(笑)

評価8点。
posted by: トラキチ | 小川糸 | 15:38 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『マーティン・ドレスラーの夢』 スティーヴン・ミルハウザー著 (白水uブックス)
原題"MARTIN DRESSLLER The Tale of an American Dreamer"(1996)

柴田元幸訳。ミルハウザーの作品は3作品目になりますが長編は初めてで、ピュリツアー賞を受賞作品と言えども少し評価が微妙というのが率直な感想。

19世紀末に葉巻き店主の息子として生まれ、20世紀初頭のニューヨークにて驚異的なホテルを次々と建てアメリカンドリームを成し遂げたマーティン・ドレスラーのお話なのだが、伝記風に淡々と語っているので心情が薄くて感情移入しにくかった感じですね。もちろんミルハウザー特有の精緻で緻密な面(とりわけホテルに関する具体的な描写)も織り込まれているのですが。

登場する女性たち(とりわけ3人の親子)影響と言うか翻弄されている主人公の苦悩と、仕事面におけるサクセス・ストーリーとがあんまり上手くマッチングしてるように感じられなかった。もちろん作者はそこにカタルシスを感じさせようとしたのであろうが・・・
主人公の成長と言うか成功に関して必ず良い意味での影響を及ぼしたであろう女性たちなのですが、存在が希薄で物足りなく感じるのです。
妻としての姉キャメロン、パートナーとしての妹エメリン。少しマーティン自身、女性を軽く扱い過ぎたのでしょうか、配慮が足りないと言うかちょっとわかりづらいですね。
主人公が誰かを一途に愛した方がインパクトが強かったような気がします。それと上り詰めるに連れ、パートナーとなるべき人が離れて行ったことも残念でした。
まあ現実はこんなのでしょうが。

夢を叶えた物語なのであろうが、日本人的な感覚で読むとマーティンの成功よりも人生の儚さを感じたところの方が大きい。失敗を恐れてはならないというよりも、有頂天になってはいけないということを教えてくれた物語であったような気がする。
個人的には主人公は経営者としてよりも職人としての道を進む資質に長けていたような気がします。

少し余談ですが、最後のあたりは丹念な描写シーンが多く訳者の柴田さんの淀みない翻訳の独壇場であったような気がする。作者もこういうふうに訳して貰えたら嬉しいだろうなと感じた。
ただ少なくともやはり読者を選ぶ作品なのかもしれませんね、ミルハウザー自体少しそういう傾向があると思いましたが本作は特に感じました。
ピュリツアー賞受賞作品ですが短編集『イン・ザ・ペニー・アーケード』よりは完成度は落ちるような気がします。
デビュー長編で評判の良い『エドウィン・マルハウス』が未読なのでこちらでリベンジしたいなと期待しています。

評価6点。
posted by: トラキチ | 柴田元幸翻訳本 | 15:55 | comments(0) | trackbacks(0) |-
2012年8月に読んだ本。
8月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2417ページ
ナイス数:339ナイス

見えない誰かと (祥伝社文庫)見えない誰かと (祥伝社文庫)
再読。ハートウォーミングで癒しの作家、瀬尾さんの第1エッセイ集。 エッセイを読むとその作家のひととなりがよくわかり、読者との距離感が縮まります。 本作も瀬尾さんの身近なことや過去のことなどが小説と同様、テンポの良い文章で綴られ、読者を幸せな気持ちにいざなってくれます。 代表作『図書館の神様』の原型とも言える「図書室の神様」の話が一番印象的ですが、すべてにおいて小説同様、人と人との繋がりを大事にしているのだと改めて痛感。 最後の採用試験に合格したあとでの話、嬉しくて思わず読者も小躍りしたい衝動に駆られます。
読了日:08月31日 著者:瀬尾 まいこ
見知らぬ場所 (新潮クレスト・ブックス)見知らぬ場所 (新潮クレスト・ブックス)
再読。小川高義訳。今や超寡作と言って過言ではないラヒリの3作目で2008年クレストブックスにて刊行ですが最新作にあたる作品。 ちなみにこの作品で第4回フランク・オコナー国際短篇賞を受賞しています。 2部構成からなり第1部は独立した短編で5編からなり、第2部は3編からなる連作短編といって良い構成。 1部の短編の特徴は『停電の夜』ではインドとアメリカどちらにも視点をおいた作品が多かったのですが、本作は移住した二世の話が主流となっているところが月日の流れを感じさせます。 デビュー作ほど祖国に対する愛情は感じられ
読了日:08月24日 著者:ジュンパ ラヒリ
オラクル・ナイトオラクル・ナイト
柴田元幸訳。『ブルックリン・フォリーズ』のように楽しくは読めないけど物語の緻密さはこちらに軍配があがります。 読者の背中を押してくれると言うより、人生の奥の深さを教えてくれる一冊だと言えそう。 作者得意の物語内物語が展開され、それぞれの人物に作者の人生観が反映されているのでしょう、登場人物をメモしながら読みました(笑) ラストの物悲しさは特筆もの。いつまでも読者の脳裏に焼き付いて離れませんが、主人公であるシドニーを中心として読み進めるとやはり彼の再生の物語だったのだと納得のいく読書に帰結して本を閉じれるの
読了日:08月19日 著者:ポール オースター
天国はまだ遠く (新潮文庫)天国はまだ遠く (新潮文庫)
再読。自殺志願の23歳の女の子・千鶴の再生の物語。本作の田村さん、『図書館の神様』の垣内君とどちらもそれぞれの主人公が癒され再生して行くのに大きな役割を演じるのですが、本作の場合は主人公が田村さんに対して少なからず恋愛感情を抱いているのが違いとなります。 田村さんのこだわりがなく心の広いところは男性読者も見習わなくては(笑) ラストでどうなるか気になりつつ読み進めましたが、瀬尾文学の予定調和ということだと理解しています。 それは適度に距離を置くことによって物事が円滑に進むということなのですね。
読了日:08月15日 著者:瀬尾 まいこ
図書館の神様 (ちくま文庫)図書館の神様 (ちくま文庫)
再読。過去の事件にて心に傷を負い、悩まされつつ海の近くで高校の講師をしている22歳の主人公清(きよ)の再生&成長小説。 瀬尾さんお得意パターンですね。 そしてその心の傷がラスト付近での三通の手紙により主人公の成長と相まって見事に洗い流されます。 その感動的で胸のすく展開が瀬尾文学の真骨頂と言えるのでしょう。 かつてこんなに心が洗われる小説があったでしょうか。清が垣内君に感謝したように読者が作者に感謝したい気分にさせられます。 なにわともあれ、読者の体内にスッと入り込めるテンポの良い文章が心地よいです。
読了日:08月13日 著者:瀬尾 まいこ
アンダスタンド・メイビー〈下〉アンダスタンド・メイビー〈下〉
下巻に入って、過去のいろんなことが露わになり、上巻で感じた黒江に対しての少なからずの不快感は緩和されたけど払拭までには至らなかった。 ただ読者によっては払拭されたことであろうとも思われる。それは読者の性別・年齢・環境、もっと言えば考えや読解力によって違うと思います。 作者の読者層が広がっているのも事実かなと思います。たとえば今までの作品になかった子供の育て方に関して考えることを余儀なくされた作品でもありますし、カルト宗教問題にも触れていますよね。彌生君のような“神様”のような人は別として(笑)
読了日:08月11日 著者:島本 理生
アンダスタンド・メイビー〈上〉アンダスタンド・メイビー〈上〉
島本さんのヒロインは男性読者として、いつもその恋を応援したい気持ちを持ちながら読んでしまうのだけど、本作の主人公黒江はついていけない部分が多く、その家庭環境を斟酌しても同情の余地が少ない。 物語が進むにつれて選ぶ男が悪くなっていく感が強く、第2章ではかなり転落してしまいます。下巻は師匠によって救いがもたらされるのでしょうか、それとも彌生君との復活があるのかな。手紙に入っていた過去の写真の真相も気にはなりますよね。 とにかく胸が締め付けられる展開を希望(笑)。ただし島本作品の文章の美しさは折り紙つき。
読了日:08月06日 著者:島本 理生
樅ノ木は残った (下) (新潮文庫)樅ノ木は残った (下) (新潮文庫)
決して難解ではないが登場人物が多すぎて頭の整理が常に必要となる読書であったことは間違いない。わが身を犠牲にして伊達藩を守り抜いた原田甲斐、その潔さと男らしさの象徴として樅の木(伊達藩)は残ります。 この作品は作者にとってはもっとも長い長編小説であるだけでなく、歴史小説として大きな挑戦を施しています。 歴史的事実を変えずに解釈を変えたのです。それは悪人だと思われていた原田甲斐を敢えて違った描き方への挑戦です。 時には人間らしく時にはストイックに甲斐を描くことにより大きな感動を読者に与えてくれます。
読了日:08月03日 著者:山本 周五郎

2012年8月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター


MONTHLY BESTは予定通り(笑)、『樅の木は残った』(上・中・下全三巻)です。
今月は山本周五郎五冊ぐらい読みたいですね。
posted by: トラキチ | 月刊読了本&予定本 | 17:14 | comments(0) | trackbacks(0) |-