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『あと少し、もう少し』 瀬尾まいこ (新潮社)
評価:
瀬尾 まいこ
新潮社
¥ 1,575
(2012-10-22)

書き下ろし作品。
山深い場所にある市野中学校を舞台とした大きな不安を抱える中学生の気持ちと人と人とのつながりの大切さを謳った駅伝を通しての青春小説の傑作。
本作にて作者は“中学はいくら失敗しても良い場所”という暖かい気持ちのベースに基づき中学生を描いています。

大半の読者が過去のこととなっている中学時代、思い起こせば言いたいことが言えそうで言えない年頃ですよね。
中心的存在と言っていいのでしょう、部長である桝井君のある言葉にはドキッとさせられますが、それに動じない上原先生の見事な教師ぶり、頼りなさげですが数年後は立派な恩師だったと慕われるのでしょう、作者を彷彿とさせられました。
そして皆に一目置かれている桝井君、『図書館の神様』の垣内君とだぶりますよね。きっと作者の理想像なのかなと思います。
各章タスキを繋ぐ順番に一人称で語られますが、レースだけでなくこの駅伝に出場できたことのいきさつにウエートを置いて書かれています
というのはメンバー6人中、陸上部員は半分の3人、あとは寄せ集めなのです。
残り3人のメンバー入りに際して、部長である桝井君が一番苦労するわけです。
もちろんハラハラドキドキするレースシーンも楽しめ、胸を焦がすことの出来る傑作であると確信しています。実はアンカーは私たち読者なのかもしれませんね。
タイトル名のごとく作者から読者に『あと少し、もう少し』と声を掛けられているような気にさせられるところ読書の醍醐味を感じずにいられません。

今年は『僕らのご飯は〜』と本作との2冊上梓され瀬尾さんのファンの人にはハッピーな年だったのだと思います。
中学生の駅伝を描いた本作は高校生の陸上小説『一瞬の風になれ』、大学生の駅伝小説『風が強く吹いている』に見劣りしない出来だと思います。
本屋大賞ノミネート希望。

評価(10)
posted by: トラキチ | 瀬尾まいこ | 16:15 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『空の拳』 角田光代 (日本経済新聞出版社)
評価:
角田 光代
日本経済新聞出版社
¥ 1,680
(2012-10-11)

初出 日本経済新聞夕刊 2010年10月〜2012年2月。

角田さんの新境地開拓作品と呼んでよさそうなボクシングを題材とした作品。
百田さんの『ボックス!』は未読ですが(宿題ですね)、想像するにボックス!ほど熱い作品ではないであろうと思っています。
敢えて女性読者の多い角田さんはそのあたりは想定済みですよね。
だから本作は主人公を出版社に勤務する“文科系”のオトコである空也の目を通している点がこの作品のポイントであると思います。
ひたすら一般的な読者レベルに近い視点で語ることによってボクシング自体わかりやすく語られているのです。
そしてもうひとりの主人公とも言えるプロボクサー立花、彼の出自に関する詐称問題も物語の重要な部分を占めています。
あまり深く語られてなかったのですが有田に悪意がどの程度あったのか興味がつきません。
それと立花の実際とリング上での人となりの違いも魅力的ですよね。
そして何よりそうですね、夢と言ったら大きすぎるでしょうか、人生における自分探しの物語となっているところが読ませどころなのでしょう。
それは他の角田作品同様、登場人物だけではなく読者も身につまされるでしょう。

もちろん角田さんの試合の描写も予想よりも凄く的確でわかりやすいし、他のボクサーである坂本や中神、トレーナーの有田や萬羽それぞれの生きざまも素敵です。
でも私はどちらかと言えば文芸編集部希望だった主人公が隔月出版のボクシング雑誌編集部に追いやられたのにもかかわらず、自らボクシングジムに練習生として入り努力して順応することに拍手を送る物語だと思います。
私はボクシング編集の3年間で空也が成長した姿を終盤に見れたことに大きな喜びを感じました。

面白い(8)
posted by: トラキチ | 角田光代 | 23:15 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ロボジー』 (2012年日本映画)
WOWOWにて視聴。

ほとんどの男性視聴者がそうであるように、ご多分に漏れず吉高由里子目当てで観たのですが内容もなかなかほのぼのしてて良かった。人が入っているはずがないという前提の下で作られているはずのロボットなのですが、ある切羽詰まった状況のために人が入ってしまいます。
でも人を騙してるって感じじゃなくなってますよね。それはズッコケ3人組のキャラが観る方をも罪悪感から解放してくれるのですね。
そしてロボット中身役のミッキー・カーチスさん、時には老人らしく老いぼれていてそして時には厚かましくて観ててハラハラしつつも心地よいです。

お目当ての吉高由里子以外は皆地味なキャストですが、それでも観終わって少しでも“観て良かった”という気持ちにさせてくれたのは吉高由里子の“キュートさ”だけではなかったということの証であるような気がする。
印象に残ってるのはラストのあるしかけはもちろんのこと、大学での講義かな、ドキドキものです。
矢口史靖監督作品らしいラストシーンは印象的である。

面白い(8)
posted by: トラキチ | DVD(国内) | 21:24 | comments(0) | trackbacks(0) |-
2012年10月に読んだ本。
2012年10月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2591ページ
ナイス数:488ナイス

本日は、お日柄もよく本日は、お日柄もよく感想
初出「本とも」加筆修正あり。 原田さんの作品も久しぶりですが本作は極上のエンターテイメント小説に仕上がっていてタイトルのように心が晴れやかになる作品です。 幼馴染の披露宴での失態から人生が変わった主人公こと葉。その後知り合った人を通じて“スピーチライター”のお手伝いをしていきます。 たかが小説なれど、本作ほど冒頭からラストで心の内面が成長し輝いた主人公は少ないと思います。 本作は選挙小説としてもエッセンスとノウハウが詰まっていて楽しめます。フィクションでありながらかなりリアルに描かれています。
読了日:10月31日 著者:原田 マハ
ある男ある男感想
初出 オール讀物。明治初期の社会が混沌としていた時期に、国家の転機という時代に翻弄されながらもひたむきに生きる7人の男を綴った7編からなる短編集。 この作品が最も成功している点は内容はもちろんのこと、それぞれの話の主人公に名前を与えていなくて“男”と表記している点である。 実在したのか作者の創作なのかは若干わかりづらいのですが、少なくとも具体的な名前を出さないことによって読者である私たちが主人公に成り代わって読み進めることが出来ます。
読了日:10月29日 著者:木内 昇
古手屋喜十 為事覚え古手屋喜十 為事覚え感想
私にとって現役の時代小説作家の中では最も安心して読める作家である宇江佐さん、久々に手に取ってみました。江戸浅草の「日乃出屋」という名の古着屋を舞台とした6編からなる連作短編集。主人公である喜十の人柄が他の宇江佐作品の主人公ほど魅力的に映らないのが少し残念ですが、周りを取り巻く妻のおそめや隠密廻り同心で喜十に為事(仕事)を振ってくる上遠野平蔵が魅力的でカバーしている感じですね。 他の宇江佐作品よりもミステリー仕立てな面や暗い話も多いのであるが、やはり人情話的要素の強い「小春の一件」が秀逸。
読了日:10月26日 著者:宇江佐 真理
すかたんすかたん感想
わけあって大阪の青物問屋・河内屋で女中奉公することとなったかつて武家に嫁いで後家さんとなった江戸出身の知里を主人公とした物語。珍しく大阪を舞台とした時代物で、各章ごとにタイトル名でもある“すかたん”を初め“ぼちぼち”、“かんにん”など大阪言葉を使っていて目新しく感じます。関西人の読者には親近感を覚えずにはいられない一冊だと言える。 しっとり感にはやや欠けますがテンポよく読める作品で、作者である朝井さんは魅力的な女性を描くのに長けていると思います。主人公で江戸ッ娘の知里のみならず、志乃さんや小万さん(続く)
読了日:10月19日 著者:朝井 まかて
極北極北感想
村上春樹訳。極北の秩序なき地で主人公の女性メイクピースが困難や逆境を撥ね退けながらも奮闘する姿は、読者に生きることの素晴らしさを訴える。 時代は近未来なのであろうが、東日本大震災を経験した日本人にとってはフィクションなれどリアルな内容となっていて、“たかが小説”とは思えず小説に入ることを余儀なくされる。 もちろん小説なので無慈悲な世界なれど娯楽性もそこなわれていないのであるが、そのあたりは作者だけでなく村上春樹の名訳がもたらせたものであるとも言えるであろう。 (続く)
読了日:10月15日 著者:マーセル・セロー
ツナグ (新潮文庫)ツナグ (新潮文庫)感想
吉川英治新人文学賞受賞作品。決して辻村さんの良い読者ではない私ですが、本作を通して作者の確かな力量を感じ取ることが出来ました。 抽象的な表現であるが、作家として読者に1.夢を与える、2.現実を知らしめる、3.生きること(命)の尊さを教える・・・以上の3点が伝わって来ました。 5編からなる連作短編集の形をとっていますが1〜4編目にて依頼人4人が登場します。そして最終章で使者の姿(歩美)が明確となり、彼のバックボーンと1〜4話の話をより深く掘り下げることにより読者により一層の感動をもたらせてくれます。
読了日:10月11日 著者:辻村 深月
中国行きのスロウ・ボート (中公文庫)中国行きのスロウ・ボート (中公文庫)感想
7編からなる村上氏最初の短編集。発売が1983年5月なので来年でちょうど30年となる。この作品の感想を端的に示してくれる言葉が本文にあるので引用する。“「誰も読まないでしょう。三十年か四十年経っても読む価値のある本なんて百冊に一冊です」”冒頭に敢えて作者より1〜4編目と5〜7編目のあいだには一年近くのブランクがあるいう言葉があり、なんとなくであるが作品としてのバランスと言うか完成度としては差があると感じた。最初の4編はなんとなく作者自身が試行錯誤的というか内容が実験的であるような気がするのである。
読了日:10月8日 著者:村上 春樹
空より高く空より高く感想
久々に手にとった重松新刊作品。重松作品、以前は発売日に買って胸を高鳴らせながら読んでいたのが本当に懐かしく思いました。 廃校が半年後に迫ったニュータウンにある東玉川高校、通称トンタマで学ぶ高校生四人組の半年間を綴った物語。 例えば近年の重松作品の傑作と言われている『とんび』のように圧倒的な感動を求めて本作を手に取ると肩すかしを喰らうかもしれない。 重松さんの他作のようにある問題提起(たとえばリストラやいじめ)を読者に投げかけるとか、そういうスタンスで書かれた作品じゃなく、いろんな問題(続く)
読了日:10月5日 著者:重松 清

読書メーター


感想がコメントまで入り込んでいるので途中で切れています(汗)
各本の評価を記すと次のようになります。
『空より高く』 重松清 7点
『中国行きのスロウ・ボート』 村上春樹 8点
『ツナグ』 辻村深月 9点
『極北』 マーセル・セロー 9点
『すかたん』 朝井まかて 8点
『古手屋喜十 為事覚え』 宇江佐真理 7点
『ある男』 木内登 9点
『本日は、お日柄もよく』 原田マハ 8点

MONTHLY BESTは『ある男』です。

木内さんの作品は他の作家では味わえない完成度を感じます。
10月は山本周五郎一冊も読めなかったので今月は『五辦の椿』からは行っています。
今月こそ10冊以上行きたいです(汗)
posted by: トラキチ | 月刊読了本&予定本 | 19:02 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『本日は、お日柄もよく』 原田マハ (徳間書店)
評価:
原田 マハ
徳間書店
¥ 1,680
(2010-08-26)

初出「本とも」に加筆修正して単行本化。

原田さんの作品も久しぶりですが本作は極上のエンターテイメント小説に仕上がっていてタイトルのように心が晴れやかになる作品です。
幼馴染の披露宴での失態から人生が変わった主人公こと葉。その後知り合った人を通じて“スピーチライター”のお手伝いをしていきます。
たかが小説なれど、本作ほど冒頭からラストで心の内面が成長し輝いた主人公は少ないと思います。

本作は選挙小説としてもエッセンスとノウハウが詰まっていて楽しめます。フィクションでありながらかなりリアルに描かれています。
伝説のスピーチライター、久美だけでなく登場する男性たちの素敵さも特筆ものですね。幼馴染で選挙に出る厚志、そして敵であり将来の○でもあるワダカマ。
2人の度量の大きさがこの物語を支配していて、そうですね男性読者の私も惚れそうだから女性読者は惚れちゃうでしょうね。
やや心残りだったのはラストが少し唐突だったかな、もう少し意地らしい恋愛模様も観たかった気もしますが私が贅沢な読者だからでしょうか。
もし選挙期間中に本作を読めば感動度がもっと増したかもしれません。
でも幸せな気持ちにさせてくれる作品であることには間違いなく、本作を読み終えた人は必ず人に対して“噛みしめて言葉を発する”ようになるのでしょう。

最後につけ加えておきたいのは、ところどころで語られる作中のスピーチ、本当に素敵で胸が締め付けられ作者の独壇場状態です。
原田さんの文章の読みやすさは定評のあるところですが本当に洗練されています。

(読了日10月31日)

評価8点。
posted by: トラキチ | 原田マハ | 18:33 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ある男』 木内昇 (文芸春秋)
評価:
木内 昇
文藝春秋
¥ 1,680
(2012-09-27)

初出 オール讀物。

明治初期の社会が混沌としていた時期に、国家の転機という時代に翻弄されながらもひたむきに生きる7人の男を綴った7編からなる短編集。
この作品が最も成功している点は内容はもちろんのこと、それぞれの話の主人公に名前を与えていなくて“男”と表記している点である。
実在したのか作者の創作なのかは若干わかりづらいのですが、少なくとも具体的な名前を出さないことによって読者である私たちが主人公に成り代わって読み進めることが出来ます。
もちろんすべての“男”たちがいわゆる共感できることをしているわけではないのですが、そのあたり目線を低くすることによって感動度が増しているように思えます。
そしてそれぞれの人物が総じて“要領が悪くって社交的じゃない”ので何となく読者自身を投影して読むことを余儀なくされます。
そのあたりは暗澹とした時代、国家と言う存在の大きな時代で
それぞれの物語の結末も結構やるせない終わり方が多く、それが却って余韻が残るのです。

もっとも印象的に残ったのは「女の面」、脇役である妻と嫁との対比が秀逸です。私は洞察力の鋭い妻より健気な嫁を応援したいです(笑)
私の口から言うのも何ですがそれにしても木内さん、確かな筆力です。
無駄な言葉等一切なく、他の作家では表現できない領域の作品だと確信しています。
作者が寡作であることも含めて何度も味わって読むべき作品です。

(読了日10月29日)

評価9点。
posted by: トラキチ | 時代小説 | 17:37 | comments(2) | trackbacks(0) |-
『古手屋喜十 為事覚え』 宇江佐真理 (新潮社)
評価:
宇江佐 真理
新潮社
¥ 1,575
(2011-09)

私にとって現役の時代小説作家の中では最も安心して読める作家である宇江佐さん、久々に手に取ってみました。

江戸浅草の「日乃出屋」という名の古着屋を舞台とした6編からなる連作短編集。主人公である喜十の人柄が他の宇江佐作品の主人公ほど魅力的に映らないのが少し残念ですが、周りを取り巻く妻のおそめや隠密廻り同心で喜十に為事(仕事)を振ってくる上遠野平蔵が魅力的でカバーしている感じですね。
他の宇江佐作品よりもミステリー仕立てな面や暗い話も多いのであるが、やはり人情話的要素の強い「小春の一件」が秀逸であろう。最後に捨て子が子供のいない喜十夫婦の店の前に捨てられる話があるのだが、二人の結婚への馴れ初めからしてこのまま自分たちの子にしてより夫婦の絆を深めて欲しいなと思ったりした読者も多いはずである。

小説新潮に連載されたのもですが、三カ月ごとに一話ずつ書かれている。そのあたり律儀できっちりとした作者の人柄が窺い知れる。
。季節感が滲み出ているのにも一役を買っているのであろう。

(読了日10月26日)

評価7点。
posted by: トラキチ | 宇江佐真理 | 16:55 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『すかたん』 朝井まかて (講談社)
評価:
朝井 まかて
講談社
¥ 1,680
(2012-01-11)

わけあって大阪の青物問屋・河内屋で女中奉公することとなったかつて武家に嫁いで後家さんとなった江戸出身の知里を主人公とした物語。珍しく大阪を舞台とした時代物で、各章ごとにタイトル名でもある“すかたん”を初め“ぼちぼち”、“かんにん”など大阪言葉を使っていて目新しく感じます。関西人の読者には親近感を覚えずにはいられない一冊だと言える。
しっとり感にはやや欠けますがテンポよく読める作品で、作者である朝井さんは魅力的な女性を描くのに長けていると思います。主人公で江戸ッ娘の知里のみならず、志乃さんや小万さんの行動や生き方は感心せずにはいられませんし切ないです。
少し清太郎がまっすぐすぎて頼りなげでかつ滑稽な人物なように思えるのですが、それは“すかたん”と言う言葉で形容出来るから仕方がないのでしょう。そのくらいの人物でないと天国の数馬に申し訳が立たないのかもしれません。でも知里への思いやりは清太郎も負けてはいないと信じて本を閉じました。

朝井さん初挑戦しましたが文章が読みやすいですね。
時代小説は風化しにくいですが、内容の是非はともあれ、やはり山本周五郎の作品と比べたらずっと現代的です。
本作が作者の3作目の作品でもうすぐ5冊目が出ます。早くコンプリートしてどんどん追いかけたいと思っています。

(読了日10月19日)

評価8点。
posted by: トラキチ | 時代小説 | 16:16 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『極北』 マーセル・セロー著 村上春樹訳 (中央公論新社)
評価:
マーセル・セロー
中央公論新社
¥ 1,995
(2012-04-07)

原題“FAR NORTH" 村上春樹訳。

極北の秩序なき地で主人公の女性メイクピースが困難や逆境を撥ね退けながらも奮闘する姿は、読者に生きることの素晴らしさを訴える。
時代は近未来なのであろうが、東日本大震災を経験した日本人にとってはフィクションなれどリアルな内容となっていて、“たかが小説”とは思えず小説に入ることを余儀なくされる。
もちろん小説なので無慈悲な世界なれど娯楽性もそこなわれていないのであるが、そのあたりは作者だけでなく村上春樹の名訳がもたらせたものであるとも言えるであろう。
ラストに読者にとって大きなサプライズが用意されていて、“こう来たか”と唸らされる。読者にとっても主人公にとっても希望になりえたのではないだろうか。そのサプライズにより読後感が頗るよくなったことは否定できない。
私たちの未来もそうなることを祈りながら本を閉じることを訳者も願っているのだと確信している。

ちなみに作者のマーセル・セローは『ワールズ・エンド』(村上春樹訳)で著名な旅行作家ポール・セローの次男であり本作はは全米図書賞及びアーサー・C・クラーク賞の最終候補となった。
機会があれば『ワールズ・エンド』も読破したいと思っている。

読了日10月15日。

評価9点。
posted by: トラキチ | 村上春樹翻訳本 | 16:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-