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2012年12月に読んだ本。
2012年12月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2641ページ
ナイス数:674ナイス

暗殺の年輪 (文春文庫)暗殺の年輪 (文春文庫)感想
単行本刊行1973年。全5編中直木賞受賞作1編と直木賞候補作3編を含むなんとも贅沢なデビュー短編集。 内容的には葛飾北斎のことを書いた「溟い海」や海坂藩作品の第一作で直木賞受賞作「暗殺の年輪」など本当に質の高くてバラエティーに富んだ作品集であるが、私がもっとも印象に残ったのは唯一直木賞の候補に上がらなかった「ただ一撃」、この作品は展開もさることながら作中に出てくる“三緒”という嫁が本当に健気で物悲しいのです。 とにかく各編、重苦しくて哀しいけど素敵な女性が描かれています。(続く)
読了日:12月29日 著者:藤沢 周平
海の見える街海の見える街感想
初出esora&書き下ろし。 人気作家を多数輩出している小説すばる新人賞受賞作家の3作目。 個人的に畑野作品はデビュー作に次ぎ2作品目に当たるのですが心地良い青春小説を書く作家だと認識しています。 海が見える市立図書館で働く20代及び30代の男女4人の姿を描いています。 本田さんに松田さんの男性陣、日野さんに春香ちゃんの女性陣、共通点があってこの4人が皆不器用で臆病なのです。 各章それぞれ視点が変わって行く構成が読者を飽きさせず、各自過去を引きずって心に傷を持っているシリアスな面も共感できます。
読了日:12月26日 著者:畑野 智美
路(ルウ)路(ルウ)感想
初出 文学界。 台湾に新幹線が走るというプロジェクトを通してその中に作者特有の優しさと郷愁感に満ちた人間模様が描かれている作品であり、プロジェクトの厳しさのリアルな描写を求めて読まれたら肩透かしを食らいます。 主人公と言って良い春香は大学生の頃台北に旅行し、そこで短時間知り合った男(人豪)が忘れられずにずっと引きずっているのですね。 引きずっていると言えば男性側の人豪も同様。 サイドストーリーも素敵です。 春香の先輩にあたる安西とアキ、高雄に住む威志と幼なじみの美青。 そしてなんといっても勝一郎の存在感。
読了日:12月23日 著者:吉田 修一
紙の月紙の月感想
初出 地方新聞 大幅加筆訂正あり、柴田錬三郎受賞作品。 作者の代表作と言われている『八日目の蝉』と同様、狂った女性を描いた犯罪小説に分類されるのであろうが内容というか読者に対するインパクトは毛色の違ったもの。 前者は誘拐犯で本作は業務上横領、前者はやってはならないことだとは分かっていながらも、多少なりとも主人公の“母性”に対する同情が芽生えるところが作者の筆力の高さを窺わせたのであるが、本作は同情のかけらも生じない。 ただ本作の方が読者に対しては身近に感じられる。転落して行く過程を楽しむべき作品だと言える
読了日:12月18日 著者:角田 光代
ことりことり感想
書き下ろし作品。小川洋子は悲しい物語を哀しくかつ美しく紡ぐ作家である。 本作は生きることの大いなる辛さとちっぽけだけどひたむきな幸せが表現された傑作です。 主人公はことりの小父さん(弟)とその兄で、世間から離れた所で小鳥たちの声だけに耳を澄ます兄弟のつつましい人生。 ポーポー語という鳥との会話しか出来ない兄、そして兄の唯一の理解者である弟。やがて兄は人生の幕を閉じます。 最も印象的だったのは図書館の司書との淡いと言っていいのでしょうね、恋の話です。 切なくてこの物語の哀しさをより深くしています。
読了日:12月14日 著者:小川 洋子
楽園のカンヴァス楽園のカンヴァス感想
初出 小説新潮。山本周五郎賞受賞作品。 素晴らしい小説に出会った時の喜びは本好きにとっては至福の瞬間ですよね。 事実、この作品を読み終えしばらくは余韻に浸ってしまい次に読む作品にとりかかることが出来なかったのです。 作中で「永遠に生きる」という言葉がモチーフとして使われています。 何回も表紙のルソーの絵(「夢」)を見ながらそこに永遠に生きているヤドヴィガを観てため息をつきました。 読者ひとりひとりにとってもこの物語は作者の息づかい、すなわち作者の情熱がひしひしと伝わって来ます。 最終的には物事を→続く
読了日:12月11日 著者:原田 マハ
下町ロケット下町ロケット感想
初出 週刊ポスト。直木賞受賞作品。他の池井戸作品同様スカッとする小説ですが、仕事に明け暮れる魅力的な男性像だけでなくもっと根本的な男としての“夢とプライド”に焦点を当てているところがポイントなのでしょう。 窮地に追い込まれながらもそれを切り抜けていくシーンは他の作品と同様だと思いますが、登場人物ひとりひとりのキャラ立ちが的確で読者にも伝わってきます。 とりわけ佃社長と対照的な現実的な若手社員の描写と最後に明らかになる社長の取った行動には度肝を抜かれました。
読了日:12月7日 著者:池井戸 潤
茗荷谷の猫 (文春文庫)茗荷谷の猫 (文春文庫)感想
9編からなる東京(江戸)を舞台とした連作短編集。 時代背景が江戸時代末期から東京オリンピック直前までにわたります。 その時代に応じて不器用に生きる人たちを描きながら、実はその人達が精一杯生きていたとわかるのは後の時代になってからです。 その時は本当に小さくて薄っぺらい出来事でも、実は時が流れると他人の目にはとっても奥行きがあるものに映ります。 木内作品、人生は儚いけど素晴らしいものであるということを教えてくれます。 背中に重いものを背負っているのは決して自分だけじゃありません。
読了日:12月3日 著者:木内 昇

読書メーター


感想途中で切れているのあしからず。

各作品の評価は次の通りです。
『茗荷谷の猫』 木内昇 8点
『下町ロケット』 池井戸潤 9点
『楽園のカンヴァス』 原田マハ 10点
『ことり』 小川洋子 9点
『紙の月』 角田光代 8点
『路』 吉田修一 8点
『海の見える街』 畑野智美 8点
『暗殺の年輪』 藤沢周平 8点

MONTHLY BESTは文句なしに『楽園のカンヴァス』です。
この作品は『64』も『ソロモン〜』も読んでないのですが(汗)、新刊では2012年のベスト作品です。
今日本屋大賞のノミネート作品が発表されたので、その中に入ってました。
直木賞を取れなかった憂さ晴らしをしてほしいなと思いますが、強敵が多いですね。

posted by: トラキチ | 月刊読了本&予定本 | 19:45 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『暗殺の年輪』 藤沢周平 (文春文庫)
単行本刊行1973年。
全5編中直木賞受賞作1編と直木賞候補作3編を含むなんとも贅沢なデビュー短編集。 内容的には葛飾北斎のことを書いた「溟い海」や海坂藩作品の第一作で直木賞受賞作「暗殺の年輪」など本当に質の高くてバラエティーに富んだ作品集であるが、私がもっとも印象に残ったのは唯一直木賞の候補に上がらなかった「ただ一撃」、この作品は展開もさることながら作中に出てくる“三緒”という嫁が本当に健気で物悲しいのです。 とにかく各編、重苦しくて哀しいけど素敵な女性が描かれています。

各編の女性たちを読み比べるだけでも価値のある作品集だと言えます。ズバリテーマは“女心”。ただし初めて藤沢作品を手に取られる方や時代小説初心者には他の作品の方が良いような気がします。 物悲しいと言えば全五編に統一されたモチーフというかデビュー時の藤沢さんの特徴だと言えそうです。 藤沢氏の作品は端正な文章で読みやすくわかりやすいというのが通説ですが、この作品集に限って言えば少し難解な部分も含まれていて他作よりも何回も読むことによってより味わい深いものとなるでしょう。最初から凄く高い位置を極めていたんですね。

(読了日12月29日)

評価8点。
posted by: トラキチ | 藤沢周平 | 13:29 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『海の見える街』 畑野智美 (講談社)
評価:
畑野 智美
講談社
¥ 1,575
(2012-12-06)

初出esora&書き下ろし。
人気作家を多数輩出している小説すばる新人賞受賞作家の3作目。
個人的に畑野作品はデビュー作に次ぎ2作品目に当たるのですが心地良い青春小説を書く作家だと認識しています。
海が見える市立図書館で働く20代及び30代の男女4人の姿を描いています。
本田さんに松田さんの男性陣、日野さんに春香ちゃんの女性陣、共通点があってこの4人が皆不器用で臆病なのです。
各章それぞれ視点が変わって行く構成が読者を飽きさせず、各自過去を引きずって心に傷を持っているシリアスな面も共感できます。

でも少し松田さんの話は哀しいですね。まあそれも人生なのでしょう。
ちょっと春香ちゃんのことを書きますと、初めは受け付けないなと思われた読者も多かったのだと思われます。
でも最後は愛おしく感じるのです、男性読者だからでしょうか(笑)
この作品は月並みな表現ですが、人を好きになることの素晴らしさを思い起こさせてくれます。
最後に素敵な恋が成就するかどうか楽しみにして読める作品ですがどうなるでしょうか。
本作にて、作者は集英社を離れ講談社から上梓、作者の新たな意気込みが読者に伝わるグッと来る素敵な青春小説だと言えそうです。

(読了日12月26日)

評価8点。
posted by: トラキチ | 畑野智美 | 13:15 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『路』 吉田修一 (文藝春秋)
評価:
吉田 修一
文藝春秋
¥ 1,733
(2012-11-21)

初出 文学界。
台湾に新幹線が走るというプロジェクトを通してその中に作者特有の優しさと郷愁感に満ちた人間模様が描かれている作品であり、プロジェクトの厳しさのリアルな描写を求めて読まれたら肩透かしを食らいます。
主人公と言って良い春香は大学生の頃台北に旅行し、そこで短時間知り合った男(人豪)が忘れられずにずっと引きずっているのですね。
引きずっていると言えば男性側の人豪も同様。
サイドストーリーも素敵です。
春香の先輩にあたる安西とアキ、高雄に住む威志と幼なじみの美青。
そしてやはり中年以上の読者が読まれたらやはり葉山勝一郎の存在ですね。
人豪が彼を慕っていく過程は微笑ましいの一言に尽き、勝一郎と中野の再会が一番感動的であります。

すっごく感動したかどうかと言えば微妙ですが、そこが吉田修一の魅力なのでしょう。
誰一人傷つけずに物語が進行します。映画化や中国語に翻訳して台湾の人にも読んで欲しいなと思います。
少し風呂敷を広げ過ぎるという意見もあるかもしれませんがそれは作者特有の温かい眼差しが注がれたためなのでしょう。
本当に登場人物ひとりひとりが魅力的ですよね。
最後に緩やかでありますがそれぞれの人物が繋がり、まさにタイトルどおり「路」が連なるが如くです。
作者はもっとも不幸であると言って過言ではない春香の恋人繁之でさえ、あらたなスタート地点を用意し読者に納得させます、さすがですよね。
そして私たち読者は現実に抱えているものが軽くなって気がし、爽やかで充実した読後感を得ることが出来る作品です。

(読了日12月23日)

評価8点。
posted by: トラキチ | 吉田修一 | 11:05 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『紙の月』 角田光代 (角川春樹事務所)
評価:
角田 光代
角川春樹事務所
¥ 1,575
(2012-03-15)

初出 地方新聞 大幅加筆訂正あり、柴田錬三郎受賞作品。 作者の代表作と言われている『八日目の蝉』と同様、狂った女性を描いた犯罪小説に分類されるのであろうが内容というか読者に対するインパクトは毛色の違ったもの。 前者は誘拐犯で本作は業務上横領、前者はやってはならないことだとは分かっていながらも、多少なりとも主人公の“母性”に対する同情が芽生えるところが作者の筆力の高さを窺わせたのであるが、本作は同情のかけらも生じない。 ただ本作の方が読者に対しては身近に感じられる。転落して行く過程を楽しむべき作品だと言える。

通常、主人公のように陥るまでには気付くのでしょうが作者は主人公の知り合いである3人をサイドストーリー的に綴っている。
3人ともそれぞれの事情があって、いわば主人公の予備軍的要素があるのでハッとさせられる。
読まれた人の大半が梨花が熱くなった大学生をつまらない男だと認識し、梨花の夫や梨花を信じてお金を預けたお客さんに同情、そして明日からちょっとはお金を大事に使おうと誓って本を閉じることであろう。

お金の怖さを十二分に描き切った作品と言えそうで、読んでいて次第にごく普通の女性である梨花が“自分が自分でなくなってゆく過程”が見事に描かれている。
最後にこんなことまでしておいても生きていこうという主人公の意志が見えたのであるが、この人に幸せになる権利ってあるのだろうかと少し厳しい気持ちになった。
そう言った意味では女性読者が読まれた方が共感は無理としても同情はできるのであろうか。作者の意図も聞いてみたくなった次第である。

(読了日12月18日)

評価8点。
posted by: トラキチ | 角田光代 | 10:00 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ことり』 小川洋子 (朝日新聞出版)
評価:
小川 洋子
朝日新聞出版
¥ 1,575
(2012-11-07)

書き下ろし作品。小川洋子は悲しい物語を哀しくかつ美しく紡ぐ作家である。
本作は生きることの大いなる辛さとちっぽけだけどひたむきな幸せが表現された傑作です。
主人公はことりの小父さん(弟)とその兄で、世間から離れた所で小鳥たちの声だけに耳を澄ます兄弟のつつましい人生。
ポーポー語という鳥との会話しか出来ない兄、そして兄の唯一の理解者である弟。やがて兄は人生の幕を閉じます。
最も印象的だったのは図書館の司書との淡いと言っていいのでしょうね、恋の話です。
切なくてこの物語の哀しさをより深くしています。

しばしば小川作品のキーワードとなっている別れですが、本作では死という究極の形で表現されていますが、これは読者に配慮して冒頭で語られています。
もしその配慮がなければ本を閉じる時にあまりに悲しくて、小川さん得意の哀しさが表現出来なかったのかなと思ったりします。いわば読者への配慮ですね(笑)
なぜならことりの小父さんのお兄さんの死も作中で描かれているからです。
究極の兄弟愛を描いた本作、過去の小川さんの傑作『猫を抱いて象と泳ぐ』や『ミーナの行進』と比べて、幻想的でないだけに読者にとってもそこに描かれている人生における生きがいと直面する死とがリアルに伝わってくるのです。
本作が小川さんの新たな代表作であると確信しつつも、自分も死を静かに受け入れることが出来るだろうかという疑念が当分脳裏から離れないであろうことを確信している。
小川ワールドにどっぷりですね。

(読了日 12月14日)

評価9点。
posted by: トラキチ | 小川洋子 | 08:09 | comments(0) | trackbacks(0) |-