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『四十九日のレシピ』 伊吹有喜 (ポプラ文庫)
ひとことでいえば読後ほっこりと温かい気持ちに浸れる作品。
現実的ではない話なんだけど敢えて現実的に考えてみると、百合子が亡継母である乙美を慕っているのはやはり百合子も子宝に恵まれなかったということが影響しているのだろうか。
良平と百合子の父娘が交互に語って物語が進行して行き、男性読者が読めば主人公は良平、女性読者が読めば百合子が主人公として読めることだと思います。
四十九日という葬式のあとの節目の儀式を通して人と人との繋がりの大切さをくっきりと描いています。
現在の自分の居場所が不安な読者には必ず背中を押してくれる作品であると確信しています。

あと個性的な井本やハルミの登場が彩りを添えています、亡き継母の人徳によって立ち直るきっかけを与えてくれたのでしょうね。
亡くなっても、そしてたとえ血が繋がってなくてもずっと大切な人って素敵ですよね。
井本やハルミにより時に笑いを誘うシーンもあるのですが、印象的なのは東京での百合子と夫の浮気相手との修羅場のシーン、そして淡い良平と乙美との出会いのシーン。
父親の娘に対する確固たる愛情が物語を通して貫かれてますが、最終章の川でのシーンで揺るぎない亡き妻への愛情が滲み出るシーンがあり最も印象に残りました。
つけ加えると最初場違いな感じの井本やハルミが最後にはとっても身近な存在となります。

作者の伊吹さんは現在まで3作品上梓されています。すべてポプラ社で本作は2作品目となります。
ポプラ社の作品ってハートウォーミングな作品が多いので注目です。
ご存知の方も多いと思いますが、本作は2年前にNHKでドラマ化、百合子役は和久井映見が演じています。映画化では永作博美が演じます。
どちらが似合っているかイメージして読むと余計に読書が楽しくなりそうですね。

評価9点
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 19:17 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『嘆きの美女』 柚木麻子 (朝日新聞出版)
評価:
柚木 麻子
朝日新聞出版
¥ 1,575
(2011-12-20)

初出 AERA-net、「ごはん日記」は書き下ろし。
ドラマ化の影響で柚木さん初挑戦しました。
男性読者からしたら傍観者的な立場で読めるので決して共感できる作品ではありませんが、まるで劇画の世界のようなストーリーの展開が楽しいです。
一言で言えば世の女性たちへの応援歌的作品と言えばいいのでしょう。
誰もがもっている“耶居子的”及び“ユリエ的”要素を見事にカタルシス一杯に描き物語が進行します。
知らず知らずのうちに耶居子が凄く成長してるのが圧巻です。

作中で食べ物のシーンがよく出てくるのですが、そうですね、本作はあまり空腹な時に読まない方がいいのかも、お腹が一杯の時に読んで心も満たしてくれる作品なのでしょう。
女性読者が読まれることを対象とした作品、ましてや本作のようなコミカルテイストの作品には必ずダメ男が登場します。ご多分に漏れずなのですが、ひとりだけヒガシという男が例外がいました。凄く作品というか主人公にというか、あるいは読者にというか(笑)光明をもたらせてくれます。おそらく作者らしい痛快なエンディングなのでしょうが高揚感を十分に味わえるところがこの作者の特徴だと思います。
それにしても女性の本性を小気味よい文章で書きはります。他作も機会があれば読んでみたいなと思っています。「キックアス」もういちど観ようかな(笑)

評価7点。
posted by: トラキチ | 柚木麻子 | 10:57 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『生きるぼくら』 原田マハ (徳間書店)
評価:
原田マハ
徳間書店
¥ 1,680
(2012-09-13)

初出 日本農業新聞。
読者にとって今度はどのような物語に浸れるのであろうという期待感がとっても大きい原田さんの作品。
それはクセのない流れるような文体と読者の心を満たせてくれる内容が伴っているからでしょう。
本作は典型的な自己再生の物語ですが、私たちが日頃当たり前のように食べている主食である“米”の大切さも謳っています。
特筆すべき点は現代日本の抱える両極の問題を描いている点ですよね。
主人公である人生の“いじめ→ひきこもり”問題と、マーサに息子と間違われる大学生純平の就職難の問題ですよね。
これらの問題をさりげなく小説の中でクロスさせて読者に対して納得した結末を提供してくれる原田さん、目が離せない作家です。

米作りが登場人物達の抱えたわだかまりを解きほぐしてくれますが、その過程が素敵です。
後半純平が人生に影響を受けて行く姿は本当に微笑ましいですよね。
多様化する価値観の下、損なわれがちな深い愛情を気づかせてくれます。
人生にとっては自分を育ててくれ、そして一見見離されたように見えた母親の深い愛情がおにぎりの中の梅干しのような存在であるということを成長した人生は気付きます。

最後に人生とつぼみの幸せを願って本を閉じた方、多かったと思います。2人は血が繋がってなくて良かったですよね。
人生がつぼみに魅せられて行くのは男性読者として本当に身に沁みるほどよくわかります。
それは人生よりも苦しいはずなのにその素朴な気持ちで克服していこうとしているからでしょう。
それはまるでつぼみが自分と血が繋がっていない継父方の祖母を大事にした結果、そのご褒美として神様が将来実を結ばせてくれるものだと信じています。

(読了日2月10日)

評価9点
posted by: トラキチ | 原田マハ | 12:32 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『螢草』 葉室麟 (双葉社)
評価:
葉室 麟
双葉社
¥ 1,575
(2012-12-19)

初出 小説推理。
何作品か葉室作品を読ませてもらってますが、本作は最も読みやすくて爽やかな物語に仕上がっています。 武家の出でありながらわけあって女中として奉公する主人公である菜々の健気な性格が印象的。 父の仇を討つために、そして奉公先の主人を助けるために困難に立ち向かって行きます。 奉公先の妻である佐知とは本当の姉妹のように仲が良く、残された二人の子供にとってベストの収束のように思えます。 一番幸せなのは市之進であると確信しています。なぜなら天国の佐知も喜んでくれているからです。

本作は他の葉室作品のような実在の地名や人物も出てこず、日頃時代小説を読まれない方にもエンターテイメント性が高く、格好の入門書だと言えるでしょう。 登場人物もキャラ立ち感が強いように見受けれます。 あだ名のついている脇役が善人キャラで(笑)悪人と振り分けて描かれていて、他作のように悪人には救いをさしのべてませんので勧善懲悪的な要素が詰まっています。ただ切なさを求めれば肩すかしを食らいます。 作者の言いたいことは野菜売りのシーンで象徴される“人生、諦めずに粘り強く前向きに頑張りなさい”ということでしょう。

(読了日2月5日)

評価8点
posted by: トラキチ | 葉室麟 | 12:09 | comments(0) | trackbacks(0) |-
2013年1月に読んだ本。
2013年1月の読書メーター
読んだ本の数:9冊
読んだページ数:2568ページ
ナイス数:664ナイス

ふくわらいふくわらい感想
初出「小説トリッパー」。 この作品は新たな西さんの代表作と言える作品だと思う。 それは奇想天外な設定であるにもかかわらず、読者に作家としての言いたいことをしっかりと伝えているから。読者は他の西さんのどの作品よりも、もっと言えば他の作家のどの作品よりも心に留めておくこととなるでしょう。私的には作者は本作を通して“自分の殻に閉じこもっては行けない”ということを伝えたいんだなと思っています。 様々な愛の形を読者に提供してくれています、このあたりもう少しじっくり読み込めたらもっとグッとくるのかもしれません。
読了日:1月31日 著者:西 加奈子
神去なあなあ夜話神去なあなあ夜話感想
初出「読楽」加筆修正あり。『神去なあなあ日常』の続編。続編というより後日談というか番外編ですね。 神去村の起源や秘密が明かされて行きます。 前作では臨時雇いだった主人公勇気は、本作では正社員として働いています。 当初、神去村や林業に対して反抗的だった勇気、本作ではそう言った態度や姿は微塵もなく、既に神去村にしっかりと溶け込んでいて、ある意味安心して読めます。 その反面、前作で描かれたお仕事小説的な要素はかなり影を潜めています。 前作では“林業”に、本作では“神去村”にスポットをあてて書かれています。
読了日:1月28日 著者:三浦 しをん
神去なあなあ日常 (徳間文庫)神去なあなあ日常 (徳間文庫)感想
三浦しをんさんお得意のお仕事小説で温かい気持ちに浸れる作品である。 物語の主人公は高校を出たてのフリーター志願の勇気という名のいわば現代っ子。その彼がなんと神去という名の三重県の山奥の村にて就職する、職業はなんと“林業”。 本作の成功の大きな要因は主人公勇気の語り口であろう。一年過ぎてから過去を振り返るように語られているのであるが、読み進めていくに連れて、彼の成長ぶりを否応なしに実感することが出来る。 そこが読者にとっても圧巻であり捲るページを止めることが出来ない。
読了日:1月26日 著者:三浦しをん
終わらない歌終わらない歌感想
『よろこびの歌』の続編で彼女たちの三年後が描かれている。 高校2年生から大学で言えば2回生の年代へ、前作は少女だった登場人物達が大人へと成長する時期に差し掛かった時期に当たる。 前作においては玲をはじめ皆、どことなくやる気が失せてたり何かを引きずっている状態の女の子たちが合唱を通じて心を開き合って行く過程が見事に描かれていたのであるが、本作では夢を追いかけているのだがその中で壁に打ち当っている状態が描かれている。 メインの話としては、念願かなって音大に進学したがもがき苦しんでいる玲と、彼女の親友で(続く)
読了日:1月24日 著者:宮下 奈都
よろこびの歌 (実業之日本社文庫)よろこびの歌 (実業之日本社文庫)感想
『終わらない歌』を読む前に再読。宮下さんの作品はほぼすべて読んでいるけどこの作品が一番好きです。 初読の時よりも玲の母親の気持ちがわかりました。本作は平凡な女子高(私立明泉高等学校)の2年生のクラスメイトたちが描かれています。 全7編からなる連作短編集で最初と最後が御木本玲という、親が著名なヴァイオリニストで、娘である玲が音大の付属高校を不合格になって明泉高校に入学するところから始まります。 夢が途絶えられて、落ち込み気味で入学してきた玲ですが合唱というチームでなし得る行事によって心を開いていくのですね。
読了日:1月21日 著者:宮下 奈都
何者何者感想
書き下ろし作品、直木賞受賞作。ツイッターを題材とした5人の若者達の就活に関わる物語。 主人公拓人のみならず皆個性派ぞろいだけど、意外と相手の心を探り合うのですね。 自分の学生時代はもちろんツイッターもなく就活という言葉もなかった。 時代は変わり価値観も多様化しているのだけど、今も昔も生きてくことだけでなく時代に順応していくことは本当に難しい。 5人が切磋琢磨して苦しい就活を乗り切る青春物語であろうと思われた読者もいるであろう。 だけどタイトル名からしてちょっとは捻りがあるはずだろうと思った方の方が多いかな
読了日:1月18日 著者:朝井 リョウ
のろのろ歩けのろのろ歩け感想
初出 オール讀物。北京、上海、台北を舞台とした三編からなる中編集。 主人公はすべて日本人女性でそれぞれ、雑誌編集者、駐在員の妻、失恋したOLという立場で現地を訪れます。 やはり最初の北京が舞台の「北京の春の白い服」がもっとも印象的ですね。恋人のアメリカ人とのやりとりも含めて北京の都市としての年月を経た移り変わりが見事に描かれています。 二〜三編目はいずれも現地の若い男とめぐり会うのだけど、彼らの実態というか人となりが上海と台北という都市のイメージを表しているといったら深読みしすぎでしょうか。
読了日:1月14日 著者:中島 京子
千鳥舞う千鳥舞う感想
初出 「問題小説」「読楽」、加筆改稿あり。 博多を舞台とした女絵師・里緒の悲恋の物語。 この作品は長編小説というより連作短編集の形態をとっています。 10編からなりますが主人公の里緒が手掛ける“博多八景”のタイトルがずらりとならびます。 本作の特徴は女性が主人公のために他の葉室作品よりもしっとりと繊細に描かれている点でしょうか。 江戸と博多、離れ離れになった外記との行く末が物語全体を支配しているのですが、各編ごとにそれぞれの絵を描くにあたり、物悲しい男女や親子関係が描かれています。
読了日:1月11日 著者:葉室 麟
蜩ノ記蜩ノ記感想
初出 小説NON 加筆訂正あり。直木賞受賞作品。 いつまでも心にずっしりと残る小説というのも数少ないだけに、そう言った作品に新年早々出会えました。 ズバリ本作のポイントは“武士としての矜持”というところになるのでしょうが、私たち読者も自身の“人間としての矜持”についても深く考えざるをえません。 藤沢周平と同様、作者も実に風景描写が上手く読む者を和ませて、そして時にはドラマティックに誘ってくれます。 潔く生きるって本当に難しいですよね、でも秋谷これほど充実した人生はなかったのではないでしょうか。 (続く)
読了日:1月4日 著者:葉室 麟

読書メーター

感想途中で切れていてごめんなさい。

各作品の10段階評価は次の通りです。
『蜩ノ記』 葉室麟 10点
『千鳥舞う』 葉室麟 9点
『のろのろ歩け』 中島京子 8点
『何者』 朝井リョウ 8点
『よろこびの歌』(再読) 宮下奈都 9点
『終わらない歌』 宮下奈都 8点
『神去なあなあ日常』 三浦しをん 8点
『神去なあなあ夜話』 三浦しをん 7点
『ふくわらい』 西加奈子 9点

MONTHLY BESTはベタですが『蜩ノ記』です。
葉室作品は5冊ぐらいしか読んでませんが、いずれ山本周五郎や藤沢周平と並び称される資質を持っていると思います。
あとは西加奈子さんですね、『ふくわらい』読者によっては受け付けられないかもしれませんがそれほど強烈な小説です。
良い意味で奇想天外さが常識の域を超えていてすこぶる心地良い読書を約束してくれます。他の作品も読んでみたいなと思っています。
posted by: トラキチ | 月刊読了本&予定本 | 21:45 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ふくわらい』 西加奈子 (朝日新聞出版)
評価:
西 加奈子
朝日新聞出版
¥ 1,575
(2012-08-07)

初出「小説トリッパー」、キノベス1位作品、本屋大賞候補作品。
この作品は新たな西さんの代表作と言える作品だと思う。
それは奇想天外な設定であるにもかかわらず、読者に作家としての言いたいことをしっかりと伝えているからだと思います。
そして読者は他の西さんのどの作品よりも、もっと言えば他の作家のどの作品よりも印象深い作品として心に留めておくこととなるでしょう。
私的には作者は本作を通して“自分の殻に閉じこもっては行けない”ということを伝えたいんだなと思っています。
そして様々な愛の形を読者に提供してくれています、このあたりもう少しじっくり読み込めたらもっとグッとくるのかもしれません。

例えばもっとも印象的な人物であるプロレスラー守口、彼は敗者の象徴的な人物として一見描かれているように見えますが、実は違います。
定にとって最も重要であることを気づかせてくれたのです、それは亡き父母の愛情です。

主人公である定だけでなく、登場人物すべてが個性的というかアブノーマルな面々ばかりですが、唯一普通(ノーマル)だったと言える小暮しずかと友達になれたということが最もリアルに主人公を成長させた証しだと捉えています。

それにしても作中の会話文、本当に楽しいですよね。読者をも昇華させてくれるラストも含めて有意義な読書を約束してくれる一冊だと確信しています。
映画公開された「きいろいゾウ」とは180度違ったいわば“黒西加奈子”的作品ですが、作者の本来の作家としての資質は本作のような作品でより発揮出来るのだと思う。本屋大賞取れるかもね。2013キノベス1位作品、本屋大賞候補作品。

(読了日1月31日)

評価9点。
posted by: トラキチ | 西加奈子 | 20:51 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『神去なあなあ夜話』 三浦しをん (徳間書店)
評価:
三浦 しをん
徳間書店
¥ 1,575
(2012-11-28)

初出「読楽」加筆修正あり。 『神去なあなあ日常』の続編。続編というより後日談というか番外編ですね。

神去村の起源や秘密が明かされて行きます。
前作では臨時雇いだった主人公勇気は、本作では正社員として働いています。
当初、神去村や林業に対して反抗的だった勇気、本作ではそう言った態度や姿は微塵もなく、既に神去村にしっかりと溶け込んでいて、ある意味安心して読めます。
その反面、前作で描かれたお仕事小説的な要素はかなり影を潜めています。
前作では“林業”に、本作では“神去村”にスポットをあてて書かれています。

本作では人と人との信頼関係を重要視して作者は書かれています。
その反面、前作で感じた林業を通じての青春、本作ではほとんど感じなかったのは少し寂しい気がしました。
個人的には楽しみにしていた直紀の恋物語がやや薄っぺらく感じたのですが、やはり根本的に二人がつり合っていないようにも感じられたのですね。
逆に清一とヨキの過去の両親の死にまつわる話や、ヨキとみきの馴れ初め、周りの人が山太のためにクリスマスを催す話は印象的でした。

(読了日1月28日)

評価7点。
posted by: トラキチ | 三浦しをん | 20:26 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『神去なあなあ日常』 三浦しをん (徳間文庫)
三浦しをんさんお得意のお仕事小説で温かい気持ちに浸れる作品である。
物語の主人公は高校を出たてのフリーター志願の勇気という名のいわば現代っ子。その彼がなんと神去という名の三重県の山奥の村にて就職する、職業はなんと“林業”。 本作の成功の大きな要因は主人公勇気の語り口であろう。一年過ぎてから過去を振り返るように語られているのであるが、読み進めていくに連れて、彼の成長ぶりを否応なしに実感することが出来る。 そこが読者にとっても圧巻であり捲るページを止めることが出来ない。

“なあなあ”という言葉に象徴される神去村の気質と普段読者にとって縁遠い臨場感あふれる林業の舞台、まさにしをんさんの独壇場ですね。 四季の移ろいをテンポの良い文章で綴られているので、自然と勇気と直紀の恋も応援したくなります。 続編もすぐに読んでみたい気にさせられたのは私だけじゃないはずであろう。 きっと神去村の住人になりきったより成長した勇気に出会うことが出来るのでしょうね。

実際は勇気のような順応性のある青年は少なくなったのでしょうね。本作にて作者の素晴らしい功績はやはり林業の大切さ、素晴らしさ、大変さをわかりやすく描いているところだと思います。 実はしをんさんのお父さんがモデルとなった村の出身でお祖父さんが林業に従事されてたみたいです。

(読了日1月26日)

評価8点。
posted by: トラキチ | 三浦しをん | 20:02 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『終わらない歌』 宮下奈都 (実業之日本社)
評価:
宮下 奈都
実業之日本社
¥ 1,365
(2012-11-17)

『よろこびの歌』の続編で彼女たちの三年後が描かれている。
高校2年生から大学で言えば2回生の年代へ、前作は少女だった登場人物達が大人へと成長する時期に差し掛かった時期に当たる。
前作においては玲をはじめ皆、どことなくやる気が失せてたり何かを引きずっている状態の女の子たちが合唱を通じて心を開き合って行く過程が見事に描かれていたのであるが、本作では夢を追いかけているのだがその中で壁に打ち当っている状態が描かれている。

メインの話としては、念願かなって音大に進学したがもがき苦しんでいる玲と、彼女の親友でミュージカル女優を目指している千夏が関わった話でまあ読んでのお楽しみなのですが、胸のすくラストが約束されています、まさに心にしみる宮下ワールド、玲や千夏の歌声が聞こえて来ますよ。
千夏はカレーうどんが美味しいうどん屋の娘で前作からとっても印象的な女の子なのですが、とっても一生懸命なところが胸を揺すぶられます。
どちらかと言えば玲の背中を押している役割を演じていると言っていいでしょう。
あと、サイドストーリーとしては北陸での話ですね「コスモス」、語り手が28歳の女性が担当していて物語をよりふくよかなものとしている。
全体を通してもっとも感じ取らなければならないところは、高校生たちだった彼女たちがずっと繋がっているということ、それを読者も共感し自分自身にも当てはめてみると明日からは少し世界が広がるのだと思います。

個人的には前作の『よろこびの歌』と含めてこの2作のシリーズを宮下作品の代表作だと捉えている。
少し余談であるが、あまり本を読まない人にオススメの作家を教えて欲しいと言われたら原田マハ、瀬尾まいこ、そして宮下奈都を勧めている。
3人とも温かい作品を書く作家で読者に切なさと夢を提供してくれていると私は捉えています。

(読了日1月24日)

評価8点。
posted by: トラキチ | 宮下奈都 | 19:47 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『よろこびの歌』 宮下奈都 (実業之日本社文庫) <再読>
『終わらない歌』を読む前に再読。宮下さんの作品はほぼすべて読んでいるけどこの作品が一番好きです。
初読の時よりも玲の母親の気持ちがわかりました。本作は平凡な女子高(私立明泉高等学校)の2年生のクラスメイトたちが描かれています。
全7編からなる連作短編集で最初と最後が御木本玲という、親が著名なヴァイオリニストで、娘である玲が音大の付属高校を不合格になって明泉高校に入学するところから始まります。
夢が途絶えられて、落ち込み気味で入学してきた玲ですが合唱というチームでなし得る行事によって心を開いていくのですね。

とりわけ、高校生ぐらいの多感な年代の頃って隣の芝生は青く見えがちですよね。
本作が成功している大きな要因は、各編ごとに視点が変わっているところですね。
上述した“隣の芝生は青く見える”ところが読者である私たちに本当によく理解できます。
これはあたかも、私たちがそれぞれの編の主人公に乗り移ったかのように感じられるのですね。
それぞれの個性的な人たちが持っている、それぞれの悩みがリアルで思わず誰もが持っている“心の中の膿”を出したい衝動が本当によくわかるのですね。

この作品を読んでいて、誰もが似たようなことで悩んでいるということを理解しつつ、そしてあの人にもこんな悩みがあったのだと思わず納得し、そして時にはニンマリさせられてしまいますよね。
それぞれの悩みは、希望がありそして夢へと繋がる悩みなのですね。
悩みことによって心の成長を得ることができますよね。
“人生失敗を恐れてちゃ何も出来ない。”
作者の一番訴えたいところはこの点だと私は思います。

(読了日1月21日)

評価9点。
posted by: トラキチ | 宮下奈都 | 19:37 | comments(0) | trackbacks(0) |-