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評価:
中脇 初枝
ポプラ社
¥ 1,470
(2012-05-17)
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書き下ろし&本屋大賞ノミネート作品。児童虐待をテーマとした五編からなる連作短編集で舞台は横浜近くの桜が丘という町。
それぞれの物語の視点が変わって行くところが斬新であり、重いテーマながらもラストでは前向きな光を読者に届けてくれるので読後感が頗る良い作品だと言える。
虐待されている年代のお子さんを育児されている読者がいれば、身につまされて辛い描写もあるのであろうが、男性読者の私は社会問題的な作品と捉えて読み進めました、でも最終編はちょっと毛色が違っていました(続く)
ラストは老人介護にも言及した作品で、昔母に虐待された娘が中年となり、施設に入れられる直前に二日間ほど預かることとなる話。
今の認知症となった母と昔の虐待をしていた頃の母が交互に語られます。
他の編が親や第三者による描写だったのに対して、あんなに虐待されたのにと思いつつも自分の母親であることに変わりなく、放っておけないジレンマが伝わってきます。
私的にはやはり母親に対する愛情が希薄に感じたのですが、他の話が一貫して一筋の希望が描かれているのに対して何か宿題を突きつけられた気がしました。
そこに作者の凄さを感じたのだけど読み違えかな。子供を育てた女性の方の方が読解力に長けてるのでしょうね(笑)
本作は先月に坪田譲治文学賞を受賞している、個人的にはもっと大きな賞(本屋大賞)を取ってひとりでも多くの人に読んでもらいたい作品であると願っています。
そしてポプラ社の作品、本当に素晴らしい佳作が多くて、有意義な読書を約束してくれますよね。
そうそう、作者は高校生の時に坊ちゃん文学賞も受賞しています、受賞歴を見れば瀬尾まいこさんと同じ道を辿っています。
どちらも読みやすい文章と読者に心に響く作品を書きはる点で共通していますよね、中脇初枝さん追いかけて行きたいと思っています。
(読了日3月6日)
評価9点