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『舟を編む』 三浦しをん (光文社)
評価:
三浦 しをん
光文社
¥ 1,575
(2011-09-17)

初出 CLASSY、本屋大賞受賞作品。読み終えた今、強く感じることはこの作品は他作では味わえない充実した読書時間を約束してくれる一冊だと思います。
辞書を作る(作中ではタイトル名の“舟を編む”という言葉を使っています)ことにより情熱と言うものをお裾分けされた気分にさせられます。
そして特に感じたことは、主役のまじめを筆頭とした編纂に携わったすべての人のライフワークとも言える充実した仕事ぶり。
当たり前のように出来ているように思いがちですが、その忍耐力たるものは並々ならぬものであって、そのあたり作者は西岡という普通キャラ(一般人キャラと言った方が妥当かな)を登場させることによってより際立たせることに成功しています。
会社としては適材適所な人事なのかもしれませんが、読者側からしたらやはり天職の人っているものですよねと痛感させられます。
松本さんや荒木さんをはじめ、魅力あふれる人物が脇を固める本作ですが、何と言っても映画では宮崎あおいが演じましたが、妻役の香具矢さんの魅力に取りつかれた男性読者も多いのではないであろうか。
そして少なからず感じ取れるまじめ君の十数年間にわたる人間的成長、間違いなく香具矢さんの支えがあったからということで微笑ましいですよね。本作においてロマンス部分はマイナーなものかもしれませんが、個人的には印象に残りましたので書き留めておきます。

作者の三浦しをんさん、懐の深い作品を書きはります。本作を通して情熱や希望を持つことを忘れてはいけないと言うことを強く訴えているのですね。そして単行本の装丁、一見地味ですが根気のいる辞書作りの大変さを象徴したものだと感じます。
余談ですが、私が持っている国語辞典はかなり古いもので、最近はほとんどネットで代用しています。本作を読み終えた今、新しい最新版の国語辞典を買いたい衝動に駆られている。残念ながら「大渡海」は売っていないので他から選ばねばならない。
どこの出版社の辞書を買うかは、各社辞書を作るにあたって抱いた思い入れの強さを一番感じたものをと思っている。自分なりに少しでも吟味出来るように感じるのは本作を読み終えて得たものの大きさを表していると思ったりしています。
遅ればせながらも、辞書を引くことによって少しでも感性のアップに努めようと思っている、作者が私に与えてくれたミッションだと受け取っています。

評価9点。
posted by: トラキチ | 三浦しをん | 14:57 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『世界地図の下書き』 朝井リョウ (集英社)
評価:
朝井 リョウ
集英社
¥ 1,470
(2013-07-05)

初出 小説すばる、加筆・訂正あり。注目の直木賞受賞第一作。児童養護施設「青葉おひさまの家」で暮らす太輔を含む5人の物語。
いろんな訳があって施設で暮らすようになった子供たちですが、施設で暮らし始めてからもいろんな問題が勃発します。平和に暮らす普通の子供たちでは体験できないことを描写することによって、今の社会のいくつかの問題点を浮き彫りにしています。問題点と言う意味合いにおいては『何者』と変わらないのですが、本作の方は多少なりとも希望と言うものが読者に提供されます。読者によっては微かなものかもしれないし、あるいは大きなものかもしれません。そのあたりの読みとり方は読者に委ねているような気がします。
お姉さん的な存在の佐緒里に関してはなんとか大学行かせてやりたかった気もしますが、現実感の強い作家だと思って読むことを余儀なくされます。作者的には子供たち5人の仲間意識→連帯感→愛情が芽生え成長する姿を描き、たとえ離れ離れになったとしても、施設での出来事が彼らの今後の人生にとってプラスになることを描きたかったのでしょう。それにしてもイジメは辛いですね、作者のドライな語り口だから余計に身に沁みます。

本作を読んで、他の作家よりもずっと若い作者は人生を長いビジョンで捉えているような気がします。それはタイトル名からも理解できることで、私的には施設での経験は5人の子供たちにとって人生において“下書き”段階なのでしょう。個人的には少し中盤凡長な部分もあったと思いますがイジメっ子に対する容赦のない描写などは“現実感たっぷりのメッセージ性に富んだ作家”だと思いました。
少し前に読んだ佐川光晴さんの『おれのおばさん』と読み比べると小説のいろんな楽しみ方が味わえると確信しております。

余談ですが、本作が発売される前にTBS系の「情熱大陸」にて作者が本作のラストシーンを編集者と一緒に考慮しているシーンがありました。凄く印象的だったのですが、個人的にはやや物悲しい着地点だと思ったりします。その方が登場人物がさらに逆境に耐えて成長すると言う期待を込めた作者の温かい眼差しであると信じて本を閉じました。背負ったものの大きさに同情します、世の中シビアなのですね。

評価8点。
posted by: トラキチ | 朝井リョウ | 11:03 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『紫紺のつばめ 髪結い伊三次捕物余話』 宇江佐真理 (文春文庫) <再読>
再読、シリーズ第2弾。1作目の『幻の声』よりもさらに面白くなってシリーズの改めて成功を感じながら読めたことは嬉しい限りである。
本作においてはやはり“すれ違い”がテーマとなっている。
特にお互いが強情な故に別れてしまった伊三次とお文。
これは読者もハラハラドキドキするものなのですね。
まあ、あるきっかけで表題作にて伊勢屋忠兵衛の世話を受けることとなったお文も悪いのかもしれませんがね。
お金がない(というかこつこつやって生きている)伊三次にとってはショックでしょうね。

2編目から3編目まではより伊三次のイライラがヒートアップする展開が待ち受けている。
「ひで」では幼ななじみの日出吉の死に直面し、次の「菜の花の戦ぐ岸辺」では殺人の下手人扱いを受けるのである。
それも不破は何の庇いもないのである。
ここで悲しいかな、伊三次と不破との信頼関係が崩れる小者をやめてしまうのであるが、逆にお文との関係が修復しそうな方向性で終わるのですね。舟での2人のやりとりはとっても印象的かつ感動的。

4編目の「鳥瞰図」は、まあ言ったら後に伊三次と不破との関係の修復を図るため、作者が不破の妻のいなみに一肌脱がせたと言って過言ではない感動の物語です。
伊三次がいなみの仇討ちを思いとどまらせるのです。
最後の「摩利支天横丁の月」は、お文ところの女中のおみつと1作目で強盗をやらかした弥八との恋模様が描かれている。弥八が改心し人間的にも成長して行く姿はとっても微笑ましく、おみつとの幸せを願わずにいられません。

いずれにしても、2作目まででこのシリーズの特徴は登場人物キャラクタライズがとてもきめ細かくされているということに気づくのである。
たとえば、ある人を造型的に取り上げるのでなく、いろんな過去のいきさつや生い立ちを巧みに交えてこの人はこういうところもあるんだということを読者に強く認識させてくれる点が、素晴らしいと感じたのである。
いわば、登場人物も作中で変化→成長していっていると言い切れそうなんですね。
それだけ作者が人間の感情のもつれや人情の機微を描くのに長けているという証なんでしょうね。

評価9点。
posted by: トラキチ | 宇江佐真理 | 08:25 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『おれたちの青空』 佐川光晴 (集英社)
評価:
佐川 光晴
集英社
¥ 1,260
(2011-11-04)

初出 すばる。作者の看板シリーズと言って過言ではない「おれのおばさん」シリーズの第二弾。今回は陽介の伯母であり札幌の児童福祉養護施設魴鮄舎の運営者である恵子と、施設での一番の仲間である卓也の過去がそれぞれの中編として語られます。最初の「小石のように」はとりようによっては陽介以上に悲惨とも言える卓也の過去の出来事は読者の悲しみでもあるのですが、家出という話を交えてその後の彼の明るく生きて行く様子は勇気を与えられること請け合いで、主人公である陽介は彼によって強く支えられているのだなと言うことが最後の表題作でもわかります。

次の「あたしのいい人」は恵子伯母さんが語られていてそうですね、ある一定以上の年齢の読者にとっては恵子伯母さんが主人公とみなして読まれている方も多いのではないでしょうか、彼女の紆余曲折しながらも自分の道を真っ直ぐに貫き通している姿は陽介始め施設の子供たちの生きる源となっていることが確認できます。新たに入所した女の子2人の話、そして陽介の母親である妹令子とのやりとりなどが語られるのですが、何と言っても別れた夫である善男の存在がいまだに彼女を根底から支えているところが窺える点が読者にとっては人間らしい一面を見せつけられた気持ちにさせられる。

本シリーズの良いところは悲しい環境に置かれながらも前向きに生きる少年少女たちを通して清々しい気分に浸れるところにつきると思うのですが、読み終えた時に一抹の寂しさも感じます。その寂しさが読者にとっては明日への糧となっているのでしょう、なぜなら私たち読者も彼らと同じ空の下に生きているのですから。なにわともあれ、最新作早く手に取りたいと思っております。

評価8点。
posted by: トラキチ | 佐川光晴 | 10:42 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『幻の声 髪結い伊三次捕物余話』 宇江佐真理 (文春文庫) <再読>
副題の“捕物余話”が示すとおり、通常の捕物帖と違って恋愛を軸とした人情話的要素が強いのが特徴である。
本作に収められている全5話のうち、もっとも感動的である「備後表」以外どの犯人も決して悪人として読者に受け入れられない点が非常に印象深い。
いわば作者の温かさが滲み出ている作品だといえるのだけど、その温かさが主要登場人物のキャラに乗り移っていると言っても過言ではないのであろう。主人公である伊三次。
床を構えない廻り髪結いを職としている25才の下戸男であるが、本業とは別に下っ引として同心、不破の手下の顔も持っている。

一話一話の捕物的要素(ミステリー度)は低いんだけど、脇役も含めてそれぞれの登場人物の生い立ちが語られ、それがいかに展開していくかがこのシリーズの楽しみであると思われますね。
あとは、気風のいいセリフの飛び交うお文と伊三次との関係も含めて目がますます離せなくなるのですね。
あらためて読み返してみると、不破の妻のいなみがとってもいい味を出しているんですね。最後の「星の降る夜」の伊三次を諭すシーンは「備後表」でおせいと一緒に畳を見に行くシーンと並んで本作の中ではもっとも印象的で感動的なシーンと読者の脳裡に焼き付くであろう。

シリーズ第1作を読むのは実は5回目です。全11作中第6作までしか読んでないので決して良い読者とは言えないのですが、初期の頃の展開は他のどの時代小説よりもスリリングな印象が根強く、そして時代小説の面白さを教えてくれた記念碑的と言うかパイオニア的な作品なのです。
伊三次がこの世に出てもう16年経つのですが、若い伊三次を楽しめるので自分も若返った気にさせられました。
デビュー作なれど全5編の構成もすこぶる良い。
最初の3編は伊三次・お文・不破の主要登場人物の生い立ちをそれぞれの視点から事件をまじえて読者に披露する。

男性読者の立場からして伊三次を弁護したいと思う点を最後に書かせていただきたい。
恋人であり深川芸者であるお文に比べて頼りないのかもしれないが、その欠点を補って余るほどの長所が彼にはある。
そう彼の“一所懸命生きていこうとする”姿がお文の胸を打つ。
いや読者の胸を打つと言ったほうが適切であろう。
普通“健気”という言葉は男性には使わないのであろうが、伊三次にはあてはまるような気がするのである。 
このあたり、作者の宇江佐さんの女性読者を意識した気配りは賞賛に値する。

評価8点。
posted by: トラキチ | 宇江佐真理 | 23:11 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『なごり歌』 朱川湊人 (新潮社)
評価:
朱川 湊人
新潮社
¥ 1,680
(2013-06-28)

初出 小説新潮。
昭和40年代に東京郊外に出来た虹ヶ丘団地を舞台とした7編からなる連作短編集。
舞台は違うのですが『かたみ歌』の続編と言って良いノスタルジックホラー作品であり昭和の郷愁感を体感できます。
朱川作品は初期の頃、ちょうど直木賞を受賞された前後はよく手に取りましたが随分ご無沙汰してました。
どのような作品であるかはある程度予期出来るので、過去の作品のようなインパクトは薄かったのは否定できません。
しかしながら、少なくともこの系列の作家としては自他共に認める第一人者であることは間違いなく、安心して物語に入り込めることも間違いありません。

ある一定以上の年齢の読者が読めば、懐かしいあの人やあの歌、そしてあの事件が必ず登場し思わずニンマリしてしまいます。
朱川作品を手に取ると今の時代の方が自由で平和なのかもしれませんが、あの頃(昭和の時代ですね)の方が希望があったなと言うことがわかります。

ただ、私の読解力不足かもしれませんが、主人公自体が分散されていて、物語の肝心な部分が少し曖昧というか焦点がぼやけている感じかな、読者にとっては印象深さがない物語だとも言えるような気がします。
その要因としては登場人物ひとりひとりの魅力が乏しい点があげられると思います。まあそれよりも、マリア事件の真相も含めていかに登場人物が連鎖していくかを楽しむべき作品なのでしょう。
私的には作中に出てくる“ゆうらりと飛ぶ飛行機”が作者の言いたいことの象徴なのかなとは受け取っていますが、他の読者の意見も聞いてみたい不可思議な物語でしたが、その不可思議感がに身を委ねれるところが朱川作品の魅力なのでしょうね。

評価7点。
posted by: トラキチ | 朱川湊人 | 08:42 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『永遠の0』 百田尚樹 (講談社文庫)
戦争が終わって既に68年が経とうとしている。子供の頃、父母から戦争当時小学生だった父母の話をよく聞いたし昭和生まれの自分にとっては最もメモリアルな出来ごととは認識しているものの、やはり漠然としたことであり、少なくとも身につまされる出来事として体内に消化できない国民であり続けたのも事実である。それは私自身の身内に幸いにも戦死した人間がいなかったということも大きな要因となっているのであろう。
話は本作に戻るが、本作を通して太平洋戦争のわかりやすい流れはもちろんのこと、それ以上にひたむきに生き抜くことの尊さを多くの読者は身を持って学ぶこととなる。戦記物の作品と言うよりも骨太な人間ドラマと言った方が的を射ているのである。
それはたとえば歴史の教科書などを通しての堅苦しいものではなく、宮部久蔵という勇敢な人の生きざまの真実を知れば知るほど、もっと言えばページを捲れば捲るほど、現代に生きる私たちの心の奥底まで伝わってくるのである。
本作を読み進めるに連れて明らかになってくる祖父の姿、それは日本人である私たちが持っている普遍的な愛に満ちた生きざまであると思える。

この小説の素晴らしいところは他の小説では味わえない、深い愛に満ちた世界を体感できるところだと確信している。
私は神風特攻隊で亡くなったほとんどの方は、国の為と言う大義名分はさておいて、大同小異宮部久蔵同じような気持であったと思う。
現代の平和な私たちの暮らしは彼らが偉大な“志”を持ったからである、歴史は繰り返してはならない。そして人生は向き合わなければならない。

作者は今年本屋大賞を受賞してますます脚光を浴びているが、デビュー作である本作が代表作であることには変わりないはずである。本作が世に出されたのは2006年、健太郎と慶子姉弟が戦争の生き残った人達を訪ねて祖父のことを数人に聞いて回るのであるが、少なくとも生存者の年齢からしてタイミング的にラストチャンスぐらいのことだと思われる。
だから私たちがこうしてこの作品が上梓され、手にとって感動出来ると言う幸せを噛みしめたい。
人生はタイミングである、このことは少しネタばれになるがラストで人生を託した健太郎側から見ると実の祖父から養祖父との関係がズシリと脳裏に焼き付いて離れない。
少し抽象的に述べますが、本作の核心は私的には誠実な人間から誠実な人間に見事バトンタッチされたことであると認識している、これは圧巻。

映画化が決定されているみたいですが、是非劇場で観たいなと思っている。

評価10点。
posted by: トラキチ | 百田尚樹 | 00:32 | comments(0) | trackbacks(0) |-