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『昭和の犬』 姫野カオルコ (幻冬舎)
評価:
姫野 カオルコ
幻冬舎
¥ 1,680
(2013-09-12)

直木賞受賞作品。主人公であるイクは決して両親の深い愛情を受けて育ってはいないのですが、その時々によって傍らにいる犬たちによって支えられて生きて行きます。
最終章が現代に近くて昭和の匂いがしなくて戦争の影響を受けた両親の話から高齢化社会を迎えている話まで懐古的あり現実的である。そしてあんまり深読み出来なかったのであるが、イクにとっての犬はその時々につきあっていた恋人のような感じであるとも言える。そう彼女の人生に彩りを添えているのです。
誰しも子供の頃にはわからなかったことが、年齢を経ることによって理解することができますよね、本作ではその自分の成長を振り返る過程に常に犬がいます。ほぼ半生記と言える作品でじわっとした感動は再読の機会があればその時まで置いておこうと思います。

某選考委員の言葉ではありませんが、オリンピック周期のように3〜4年毎にノミネートされて来てた姫野氏が5度目で念願が叶いました。
実は姫野作品は代表作と言って良いであろう『ツ、イ、ラ、ク』しか読んでいなくて大それたことは言えないのであるが、本作を読んで決して感慨深い読書とはならなかった、逆に難解な読書であったとも言える。姫野作品をある程度読まれた読者には集大成的かつ自伝的作品として作者または自分自身を主人公のイクに投影して、愛犬や両親との関わり具合を楽しめるのであろう。もっと言えば姫野さんの他の作品の主人公と比較することも出来ますよね。
しかしながら個人的には細切れ感が否めず、主人公と共に一喜一憂しながらページを捲ることが出来ず、やはり『ツ、イ、ラ、ク』ほどインパクトがなかったというのも事実である。事実と言えば、本作も直木賞を受賞しなければ手に取ることがなかったと思うのであるが、姫野氏の他の作品を数冊読んでから再び本作を手に取ったらまた違った感じ方が出来るのであろうか。犬への拘りがない私には姫野ワールドに入り込めず、消化不良だったのは否定できませんが、昭和の匂いを感じさせ、人生を振り返るには格好の作品であるのは評価したいと思います。

評価6点。
posted by: トラキチ | 文学賞 | 00:50 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『わたしをみつけて』 中脇初枝 (ポプラ社)
評価:
中脇初枝
ポプラ社
¥ 1,470
(2013-07-11)

再読。書き下ろし作品。本屋大賞第4位でいじめや虐待をモチーフとした『きみはいい子』も素晴らしい作品でしたが、本作は自分自身の居場所探しと医療現場の問題をクローズアップした長編作品として負けず劣らずの内容となっています。

舞台は前作同様横浜の桜ケ丘、主人公は生まれてすぐ産院前に捨てられた弥生、名前の由来は捨てられた月が三月だったからという悲惨な境遇ですが准看護師として一生懸命生きてきています。
児童養護施設についてはさほど描写はありませんが、他作家の作品よりはシビアで現実的なのがピリリと引き締まった緊張感を持った読書を余儀なくされます。
作中で2人のキーパーソンが登場、彼らの親身あふれる接し方、前向きな生き方が主人公に多大な影響を与えます、看護師長の藤堂さんと入院患者の菊地さんですね。主人公だけでなく2人の幸せをも願わずにはいられません。

作中での正看護師と准看護士との違いへのこだわりなどへの描写はリアルであり、医者と看護師との権限問題などは社会の象徴的な事柄だと感じました。
印象的なのは『きみはいい子』にて描かれた神田さんの再登場ですね。本作中においては脇役的存在ですが、主人公同様少し前を向いて生きて行くということを学んだようで胸をなで下ろした次第。
前作はいわば読者に問題提起をし何かを考えさせる作品でしたが、本作は“いい子”だった主人公の弥生や神田さんが、成長しひとつの方向性を示した作品であって感動度では前作以上のものを感じました。
これからも人生に向き合う作者の作品を愛読して行きたいなと思っています。

評価9点。
posted by: トラキチ | 中脇初枝 | 15:54 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『翔ぶ少女』 原田マハ (ポプラ社)
評価:
原田マハ
ポプラ社
¥ 1,575
(2014-01-10)

初出「asta」、加筆訂正あり。原田さんらしい作品とは言えないかもしれないが、非常にポプラ社らしい作品だと言える。現実的な要素とファンタジー的な要素をミックスさせて読者に生きることだけでなく夢を持つ大切さを思い起こさせてくれる作品であり、そうですね、小学校高学年ぐらいから読めるんじゃないでしょうかね。
だから敢えてその年代の子供たちが生まれていない時代の阪神大震災を題材としたのでしょうか、私たち大半の大人は誰しもゼロ先生のように人間が出来ていないのだけど、誰かのために一生懸命生きている姿は心を打たれます。
大人目線で読むとゼロ先生と息子の裕也先生との確執がとってもリアルであって楽しめました。

震災を通していろんなことを経験し、大半の方にとって人生において苦しくて辛くて悲しい事柄なんだろうけど、本作ではその悲しみを通り越して誰よりも強い絆というものが描かれて、実際それに近い現実というものがあったのだということをひとりの読者として信じたい気持ちになります。
逆に本作のゼロ先生のような“命の恩人”的な人がいなくて、その後不遇の人生を送られている方のことを考えると心苦しい気持ちにもなる。

“羽”のシーンは賛否両論あって、必ずしも賛成派ではないのだけど、大切な人を想う気持ち=三兄妹の幸せの象徴だと思います。
原田マハさんの作品としては異色な作品に分類され、感動度ではさもあれ、胸の高鳴る他作と比べて今一つという見方もあるのだと思いますが、児童向けに書かれた逆境に負けずに成長を遂げたストーリーとして読めば必ず子供たちとって心の糧となる作品であると思います。

そして大人読者にとって総括すると、タイミング的には古い題材なのかなと思って読み始めてたのだけど、街の復興だけでなく見事に3兄妹の心の復興も描かれていて、あれから3年経ったばかりの東日本大震災のことを忘れてはならないと肝に銘じた読書であった。

評価8点。
posted by: トラキチ | 原田マハ | 22:54 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『手のひらの音符』 藤岡陽子 (新潮社)
評価:
藤岡 陽子
新潮社
¥ 1,470
(2014-01-22)

書き下ろし作品。前作『ホイッスル』に続き2作目の藤岡作品ですが、じっくり書き下ろされたのが功を奏し、読者が登場人物を自分の人生に照らし合わせることが出来る感動度の高い物語となっている。
タイトル名となっている『手のひらの音符』の“音符”という言葉がとっても示唆的な含みのある言葉だと考えます。笑顔、生きがい、夢、希望、愛、人生、青春、あるいは現実、いろんな意味合いが込められていて読者それぞれが当てはめる言葉が違って然りの。

主人公である水樹は45歳独身の服飾デザイナーであるが、会社の経営方針で転職を余儀なくされそうな状況であるのだが、貧しかった子供時代に共に生きた幼なじみの信也と音信不通になったままでいる。
恩師の病気をきっかけとして現在と過去を交錯させつつ語られていくストーリーと言えば簡単ですが、彼女ら(彼ら)を取り巻く家族、兄弟、友人、そして恩師たちの存在がとてつもなく大きいのですね。
信也以外にも憲吾という同級生も登場、彼の存在感も絶大であって主人公にとっては人生は信也の方、仕事は憲吾の方に影響を受けたと言っても過言ではないともいえましょう。
圧巻は信也の兄と弟、3兄弟の話です。彼らの兄弟愛には胸を打たれますし、あとは恩師の遠子先生の生徒たちに与えた影響の大きさも読ませどころですね、ラストもちょっとびっくりでしょうか。

本作は主人公の幼少期や学生時代、貧しかったり苦しかったりした場面が多いのが特徴で、そういった経験が主人公の岐路に立った今、前を向かせてくれる勇気を与えてくれているのでしょう。
ここで語るにはもっと奥が深いものがありますが、私は誠実に生きたものがちっぽけかもしれないけど幸せを掴むのであるというメッセージを作者から受け取りました。
、主要登場人物のそれぞれのいろんな誠実さが溢れた本作、ある一定の年齢以上の方(40歳ぐらいかな)が読まれればは心に響き勇気づけられる物語であると確信しています。是非未読のあなたも感じ取って欲しいなと思っています。

評価9点。
posted by: トラキチ | 藤岡陽子 | 21:14 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『消えた女 彫師伊之助捕物覚え』 藤沢周平 (新潮文庫)
再読。藤沢周平が海外のハードボイルドミステリーのファンであるということはある程度氏の作品を読まれてる方なら知っていることですが、一般的には時代小説の大家として知られている彼の作風からして意外なイメージがつきまとうのであろう。
もっとも藤沢氏の得意としているしっとりと胸に沁みる人情をからめた時代小説にはハードボイルド調な作品は必要ないのかもしれません。
なぜなら本作の作風は藤沢氏の本質とは少しかけ離れた部分と言えなくもないのである。しかしながら彫師伊之助シリーズを読めば、彼がいかに海外ミステリーの影響を受けていたかが否がおうにも理解でき、そして彼の才能の深さを改めて知ることができるのである。
そう言った意味合いにおいては、たとえば池波正太郎や司馬遼太郎よりも幅広い作風の持ち主ということも再認識出来る読書となったのです。

端正な文章とテンポの良い展開、本作はシリーズ第一作にあたり捲るページを止めることができません。まず主人公である伊之助の立ち位置が藤沢氏らしい。決してキャラが立っているわけではないのであるが、主人公なりに凄くこだわりがありそれが読者に伝わるのである。
それは岡っ引きであったという過去をもっているが、妻を亡くしたいきさつからして心に傷を持っていて決して彼自身岡っ引きとしての復帰は考えていず、十手を持たずに昔のよしみで副業というか趣味で頼まれた失踪した女を探す捜査に乗り出すのである。
本業にシワ寄せが来て、読んでいてヤキモキさせられますがこれも読ませどころなのでしょう。なにわともあれ、女性の描き方が秀逸です。消えたおよう、幼馴染のおまき、そしてもっとも不幸で哀れなおうの。
深く読めば高麗屋を取り巻く話なんかはやるせないのだけど、おまきと伊之助との意地らしくも仲睦ましい姿や、素手で渡り合う伊之助のアクションシーンなど贅沢な読書を堪能できる上級エンターテイメント作品です。藤沢作品の凄いところは一度目より再読の方が面白いということに尽きます。再読すればいろんな発見があって主人公に対してもより理解が深めることができます。それだけ噛みしめて読めたということでしょうか、自分を褒めてやりたいです(笑)

評価9点。
posted by: トラキチ | 藤沢周平 | 21:39 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ポースケ』 津村記久子 (中央公論新社)
評価:
津村 記久子
中央公論新社
¥ 1,575
(2013-12-09)

書き下ろし作品、芥川賞受賞作『ポトスライムの舟』の続編。前作の5年後が描かれている本作は現実に苦しむ人たちを群像劇的に描いています。前作の主人公ナガセは脇役となり舞台は友人ヨシカが営むカフェ、各編主人公が入れ替り立ち替わり登場し読者にとって混乱しそうなほどなのであるが、その混乱の心地良さが津村作品の特徴だとも言える。なぜならそれぞれが読者の気持ちを代弁していてほどほど以上に現実的であってそしてほっこりさせてくれるのである。

もっとも印象的だったのは子供のいないピアノ講師の美冬の話で無料体験教室を利用している麻衣子ちゃん、彼女のその後が気になります。
いずれにしても、人生谷あり山ありでそれは読者である私たちも同様なのですが、本作にはくつろげるカフェがあって、その存在が登場人物個々の人生の拠りどころとなっているところがとってもうらやましく感じられます。

嬉しかったのは前作でまだ小さかった恵奈ちゃん、彼女が成長しまた再会できた喜びは大きく、読者にとってまるで作者が5年間の間に成長したという証しとでもというふうにも思える作品でした。
本作にていろんな女性の視点から描かれた人生観が読者の心を和ませます。それは作者の芥川賞受賞後、5年を経て幅の広い作風への転換へのひとつの到達点を示したものであると捉えています。

評価8点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 23:26 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『恋歌』 朝井まかて (講談社)
評価:
---
講談社
---
(2013-09-27)

書き下ろし作品、直木賞受賞作。朝井さんは『すかたん』という作品しか読んだことがありませんでした。イメージとしては新しい時代小説の書き手という漠然としたものだったのですが、本作においてその才能を一気に開花、見事初のノミネートで直木賞を射とめました。
率直な感想を述べると、以前のユーモアをベースとした作品よりもずっと次元の違う高い位置まで上り詰めた感じがします。
直木賞の受賞パターンにもいろいろありますが、本作に関しては作家の一つの到達点であると感じます。最近の例でいえば葉室麟さんの『蜩ノ記』も同じようなタイプであるでしょう。

たとえて言えば、『永遠の0』を読んでこの小説にめぐり会えて良かったという感激した気持ちというものを持たれた方が多いと思いますが、それと同じような読者に訴えかける作品であると考えます。
樋口一葉の師として知られ、明治の世において歌塾“萩の舎”を主宰した中島歌子を主人公とした歴史小説ですが、描かれているのは商人の家に生まれた彼女が水戸天狗党の志士に恋してそして嫁ぎそして時代に翻弄されてゆく姿が中心です。

とりわけ天狗党の乱以降の投獄中以降のシーンは圧巻であり、歴史は繰り返してはならないと思われた方が大半だと思います。
運命に翻弄されつつも自分の愛を貫く姿と言えば簡単ですが、想像を絶する辛さがありひしひしと伝わって来ます。
後に彼女が成功するのは、苦労を乗り越えたからであるというのは誰にでもわかりますが、それ以前に夫の分まで前向きに生き抜こうと感じたからでしょう。
それにしても彼女の愛の強さは強固なものであり、亡き夫の支えがあったからこそ彼女の人格が向上し最後の澄のエピソードが不自然に感じないほど読者の胸の内に溶け込んだと思われます。それにしても素敵な物語を読ませていただきました。読書の素晴らしさを教えてくれる一冊だと確信しております。

評価10点。
posted by: トラキチ | 時代小説 | 21:59 | comments(0) | trackbacks(0) |-