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『海賊とよばれた男』(下) 百田尚樹 (講談社文庫)
第10回本屋大賞受賞作品。少しまとめにくい感想となったことをご容赦願いたいと思います。下巻は本作のクライマックスとも言える日章丸事件の模様と鐵造の晩年が描かれているのであるが、事前にイランに交渉に行った正明や武知、タンカーの新田船長、凄いのは鐵造だけではありません。鐵造の情熱が周りの人たちに乗り移ったのでしょう、決して目先の損得に拘っていませんよね。人こそ立派な企業の財産なのです。
本作を通して学んだことは、鐡造の逆境に負けない部分はもちろんのこと、現代風の言葉を敢えて使わせていただいたら“何事にもブレない気持ち”が肝要であるということである。
もちろん、解説の堺屋太一さんじゃないけど、それぞれの立場で言えば外資導入になびいた国内石油会社やセブンシスターズもっと言えば官僚たちなどを決して非難しようとは思わない。
彼らの方がより自分に近い人間に近いとも言える。
鐵造という人物を客観的に見ると、英雄と変わり者も紙一重なのかもしれず、裏を返せば本作自体側面的過ぎるかもしれませんが、小説というのは読者にとって現実を知る機会でもあり夢を見る機会でもある。
少なくとも、鐵造のように利権にとらわれずに生きるのは普通は出来ませんよね。

正義を貫くのは本当に難しいのだけど、常に広い視野と志を持って挑戦して行く姿は読者の脳裡にいつまでも焼き付いて離れません。そして私たち読者は戦争や戦後の復興を違った側面から学ぶ機会も得たが、私たち現代に生きる日本人に欠けているのは愛国心なのだということにも気付いたはずである。
物語全体を支配している実年齢に違わぬ若々しさが特徴である鐵造が年老いてゆくに連れ、少しずつ弱音を吐いて行くシーンが人間らしくって印象的である。
いろんな感動シーンが散りばめられているが、やはり感慨深いのはラスト付近の恩人である日田と前妻ユキの死であろうか。日田なしで国岡商店はあらず、そしてユキの信念なしで国岡鐵造という大きな人物はありません。
物悲しい発想かもしれませんが、離縁を通じて鐵造はより成長したのだと信じたいし、離れてても愛を貫いたのでしょう。
やはり愛にはいろんな形があるのですね、いい勉強となりました。人間にとって時に美談というのは必要である、それに努力が伴っていれば余計に・・・

評価9点。
posted by: トラキチ | 百田尚樹 | 20:54 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『海賊とよばれた男』(上) 百田尚樹 (講談社文庫)
第10回本屋大賞受賞作品。帯に“すべてのビジネスマンに捧ぐ。”と書いてありますが、こういう作品を読むと自分の器や度量の小ささを再認識せざるをえないのが情けなく感じるのですが(苦笑)、裏を返せば本作が読者にもたらすインパクトの大きさを物語っている。
出光興産の創業者をモデルとしたいわばノンフィクションと歴史経済小説を足して2で割ったような作品なのであるが、主人公である国岡鐵造の圧倒的な存在感が否が応でも読者に高揚した読書の時間を与えてくれる。もちろん百田氏の少し説教臭いけど熱い文章がより鐵造を魅力的な人物に仕立て上げていることは間違いない。

上巻では焼け野原となった敗戦後すぐの日本において国岡商店を再建させようとする鐵造(一章)と彼の生い立ちから青春時代、そして戦争へと突入する機関の活躍を描いた時期(二章)とが描かれています。
三点ほどサプライズがあったので書き留めておくと、まず鐵造に一緒に乞食になってもいいと資金を提供した日田の存在ですね、彼への感謝の気持ちが鐵造の人格と国岡商店の社風の根底を貫いているような気がします。
次は先妻ユキとの離縁ですね、後妻の多津子も献身的で出来た人間なのですが、そのまま支えあって欲しかったなという気持ちもありますよね。最後は言わずもがなですがあの宮部の登場。百田氏の読者サービスの一貫なのでしょうが大変な時代を生きていたのだなという気持ちが倍増された読者も多いはずです。(→続きは下巻にて)
posted by: トラキチ | 百田尚樹 | 13:48 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『おれたちの故郷』 佐川光晴 (集英社)
初出「すばる」。著者の代表シリーズの第4弾で最新刊ですが本作で第一部は完結みたいです。
タイトルにもなっている陽介たちの“故郷”である児童養護施設魴鮄舎(ほうぼうしゃ)にたいして閉鎖問題が浮かび上がります。
動揺する陽介そして卓也、そして恵子おばさんはどう思っているのか、捲るページが止まりません。
読みやすい文章とページ数の薄さが若干物足りなさを感じるのは私だけでしょうか、まあ主人公と同年代の人が読めば最も肥やしになっるような話なので仕方ないですがあっという間に読み終えてしまいました。

今回の読ませどころはバレーボールをやめると言い出した卓也と恵子との再会のシーンでしょうか。これは本当の親子以上の意地の張り合いと裏に潜むお互いの愛情を読み取ることが出来ました。それとバレーボールの応援シーンですね。勇気が湧いてきます。
これがあるから署名が集まり、魴鮄舎の存続も可能になるのでしょう。ちょっとしたことで挫けることに慣れた読者の代表である私にはカンフル剤となる作品でした。
ほぼオールスターキャスト登場ですが、陽介の父親の影が薄いような気がしました。大竹君のことも気になりますので続編希望します。

余談ですが、先日札幌旅行を楽しんだのですが、魴鮄舎が所在するであろう付近を訪問する機会を逸してしまいました。
次回訪問の際は4冊読み返し、そして陽介の3年間の成長を感じ取ってから付近を訪れたいと思います。

評価8点。

posted by: トラキチ | 佐川光晴 | 20:55 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『翼をください』 原田マハ (毎日新聞社)
評価:
原田 マハ
毎日新聞社
¥ 1,836
(2009-09-16)

初出「本の時間」。総じて読まれた人の評判が良いということは知っていたものの、原田作品の中では文庫化もされていないし2009年の作品でかつ分厚めということで手に取るのは後回しにしていたのであるが、作者の才能が全面的に開花された作品だと感じずにいられない大作かつ傑作である。
史実でもある“ニッポン号”の世界一周の話をベースとして、作者得意のロマンティック&サクセスストーリーと言ったら良いのでしょうか。創作部分の構成の妙が本当に素敵で非の打ち所がない作品に仕上がっている。

エイミーのモデルであるイアハートの話は知っていましたが、ニッポン号の話は全然知らなかった。アメリカでかなり歓迎されたことやあるいはヨーロッパの航路を変えざるを得なかったところであるとか、リアルでもあるのですが、読み進めていくうちに戦争に対してもう少しなんとかならなかったのかという気持ちにもさせられました。
小説内では8人目の乗組員の役割を演じるのはエイミーですが、実際は読者が8人目の乗組員と言ってよいのでしょう。力が入ります(笑)エイミーの行動が読者の期待する方向にほぼ取られたところが作者の本作に対する思いいれの強さと出来栄えの良さを反映しているものだと感じます。

フィクションでしか語れない感動というものがあると思うのですが、私たち読者も本作を通して大きな翼(勇気)をもらえたと思います。世の中平和になりましたが山田を含めた乗務員とエイミーとのヒューマンドラマが、戦争が勃発する直前に起こったとはある意味残念なことですが、彼らが戦闘機として飛行機が使われることを最も嫌がっていたということが良く伝わった。この作品の価値を一層高めることとなっている。

余談ですが、本作の版元である毎日新聞社が自社文庫がないことが文庫化が遅れている原因だと感じますが、一人でも多くの人に手に取って欲しい作品です。
自社(ニッポン号のモデルは毎日新聞社である)の偉業を知らしめることにもなるのであるから1日も早い文庫化を望みます。

評価10点。
posted by: トラキチ | 原田マハ | 15:51 | comments(2) | trackbacks(0) |-
『マスカレード・ホテル』 東野圭吾 (集英社文庫)
東野作品は直木賞受賞以前はコンプリートしていて応援していたのですが、受賞後は自分自身の天邪鬼ぶりを露呈するようで恥ずかしいのですが、読む機会が激減し今回約5年ぶりに東野作品を手に取ったのであるが、率直な感想として氏のリーダビリティの高さを再認識した次第であります。

決して読後に余韻が残ったりあるいは有意義な読書体験のできる作品ではないですが、サクサク読みやすい文章が相まって、読んでいるときに謎が気になって捲るページが止まらなくなるのは健在で、かつて貪るように東野作品を読んだ若かりし自分を思い起こしました(笑)

氏の代表シリーズと言って過言ではない加賀刑事やガリレオシリーズほどキャラは立ってませんが、ホテルマンに潜入する新田刑事とホテルウーマンの山岸尚美との掛け合いが適度に楽しくて、緊張感を持続しながら読み進めれるところが全体構成の巧さが際立っている。
そして犯人(X4)が誰であるかはかなりのサプライズで、読み進んでいるうちに想像していた人とは大半の読者が裏切られる形で終わり、そのやられた感が快感でもある。

それにしてもホテルマンって大変ですよね、ホテルマンのお仕事小説としても実情が把握できたので今後ホテルを利用する時は敬意を払いながらもホテルマンのサービス精神を採点したいなと思ったりします。
続編(前日譚か)がもうすぐ文庫書下ろしで出るので東野氏のサービス精神に感謝したいなと思う。

評価8点。
posted by: トラキチ | 東野圭吾 | 20:55 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『まぐだら屋のマリア』 原田マハ (幻冬舎文庫)
再読。人間誰しも持っている悲しみをいかに乗り越えていくかを読者に知らしめてくれる作品。
物語は主人公と言っていい紫紋が死を決意し尽果という地に辿り着き、まぐだら屋のマリアと出会うところから始まります。
お馴染みの作者のテンポの良い文章も相まって、マリアと女将との関係を中心にミステリー仕立てでページを捲る手が止まりません。
途中で出てくる弟分と言ってよい丸弧も含めて読んでいる途中で最も訳ありなのはマリアであることが次第に分かってゆきます。

感動的なのはやはりマリアがまぐだり屋を切り盛りしている理由が明らかにされるところでしょう。かなり重い話なのですが、作者が書けばどこか清々しさが漂ったものとなっているところが凄いです。
実際いろんな贖罪のパターンがあると思いますが、究極の“贖罪”を見せつけられ心が動かされます。女将の気持ちもわかりますが、与羽が少し善人として描かれすぎなような気もしました。

印象的だったのは物語にとっても季節感が表れていることで、四季の移ろいとともに登場人物が再生されそして成長します。
そして待っている人がいる限り私たち読者も努力しなければならないということを教えられ、感動とともに心地よい余韻を残し本を閉じることが出来ます。
紫紋の母親の気持ちを理解できる度数がこの本を読んでの印象に比例することだと思います。

評価8点。
posted by: トラキチ | 原田マハ | 20:27 | comments(0) | trackbacks(0) |-