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『一人っ子同盟』 重松清 (新潮社)
評価:
重松 清
新潮社
¥ 1,728
(2014-09-22)

初出「yomyom」、加筆修正あり。昭和四十年代、今よりも一人っ子が少ない時代に生きた小学六年生の男女と小学四年生の男の子たちの物語。
今では一人っ子というのも少なくないけれど、当時はクラスに2〜3人以内だったような気がする。重松読者の大半は重松氏に近い年代の世代だと思われるので自分たちの子供時代を懐かしがりながら、当時わからなかった大人の事情を顧みることが出来る。
兄を亡くした主人公ノブ、母親が再婚して揺れているハム子、そして親が亡くなって親戚に引き取られているオサム、三人それぞれ不幸を抱えているのであるが、やはり実の親が2人揃っているノブよりもハム子やオサムの方が大変だなと思いつつ読んでいたのであるが、重松氏らしい着地点を示してくれるのは流石とか言いようがないのであろう。
ただ、平成の世においてもハム子のような家庭のケースがより多くなっているように感じられ、子供たちの事情をより理解し、暮らしやすい社会の実現を切望したいと思う。

本作はフィクションとはいえ、昭和の郷愁感が漂った作品で重松氏と同年代の登場人物がその後いかに成長し、立派な大人となったのであろうかという気持ちにさせられる。それは昭和を知っている読者にとってはかつて身近にいた三人の仲間に似た彼(彼女)を想い起させるとともに、作中の親世代の人物の気持ちがとってもよくわかったのは時の流れというものであろう。
そしてこれから結婚し、子供をもうけて人生を歩んでゆくお若い読者には本作を手に取って是非人生の予習をしてもらいたい。彼らが今後ぶち当たる辛いことは本作を手にすることによって辛さを緩和してくれるであろうと確信しています。

評価9点。
posted by: トラキチ | 重松清 | 21:41 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『傍聞き』 長岡弘樹 (双葉文庫)
評価:
長岡 弘樹
双葉社
---
(2011-09-15)

このミス第二位にランクインした作者の四編からなる第二短編集。表題作が日本推理作家協会賞短編部門受賞作品であるが、他の三編どれもが勝るとも劣らずの出来栄えであり読み終えるのがもったいないような気持にさせられた読者も多かったのではないであろうか。

内容的には専門的職業(救急隊員・刑事・消防隊員・更生保護施設長)についている人の苦悩・矜持・人間らしさを描いていて、前科のある人間に対しての先入観に対してやはり今一度考えさせられる内容となっている。
作者の長けたところは、無駄のない文章の中に散りばめられた伏線を鮮やかに回収するところが、読者にとって快い読後感を約束させてくれます。そしてどの話にも人間の弱さ・儚さに基づいた愛情が垣間見える所が素晴らしいのでしょう。

四編ともタイトル名にヒントが隠されていてるのであるが、個人的には子持ちの女性刑事を描いた表題作「傍聞き」がやはり印象的ですね、これは読んでのお楽しみですが親子の愛情が確認できジーンとなりました。あとは冒頭の「迷走」、ハラハラドキドキ小説を読んでこんなスピード感を味わえるとは作者に脱帽です。

評価8点。
posted by: トラキチ | 長岡弘樹 | 18:12 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『遊佐家の四週間』 朝倉かすみ (祥伝社)
評価:
朝倉かすみ
祥伝社
¥ 1,696
(2014-07-24)

初出「Feel Love] 加筆訂正あり。久々の朝倉作品ですが男性読者特有の読込不足を露呈した結果となったような気がします。
ごく普通のというかありふれた遊佐家に妻である羽衣子の昔からの友人のみえ子が四週間同居し、それによって遊佐家家族4人が距離を縮めて行く話なのですが、対照的な2人(羽衣子とみえ子)の登場により残りの3人(夫。長男。長女)が心を開いていく過程が読ませどころなのでしょう。ただ決して痛快な話ということもなく、過去を引きずっていて読んでいてつらい部分もあってそのあたりが読者にとっては評価が分かれるのかもしれませんね。

印象的なのは長女で不器量ないずみの恋が語られていて、その行方に関しては思わず応援してしまいました、年の差カップルの幸せが微笑ましくて陰のキューピット役となったみえ子のおおらかな性格が私たち読者にも受け入れられている象徴となっているような気がします。

その反面、良妻賢母で幸せな家庭を目指していた羽衣子にとっては現実を突きつけられた形とも取れる。実際は仮面をかぶった家庭だったのがみえ子の力によって心が開かれ食卓が明るくなってゆくのですね。昔と同様みえ子の力を借りた形となったのが羽衣子にとってどうゆう気持ちだったろうかと少し複雑な気持ちで本を閉じたのであるが、果たして2人の間に熱い友情は存在するのだろうか、女性読者の鋭い読み取りを参考にしたいと思っている。

評価7点。
posted by: トラキチ | 朝倉かすみ | 14:56 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『優雅なのかどうか、わからない』 松家仁之 (マガジンハウス)
初出「Casa BRUTUS」。前作『沈むフランシス』の北海道から舞台を東京・吉祥寺に移した作者3作目の作品であるが、前作よりも心地よい読書を約束してくれる出来栄えには思わず胸を撫で下ろした次第である。
その背景として、主人公である匡を出版社勤務の40代後半の男性を据えた点が大きいと思います。まるで作者自身を彷彿とさせる優雅な話の展開に捲るページが止まりません。
ただ作品内には介護問題という現代社会において避けて通れない問題が大きく盛り込まれていて、私たち一般の優雅でない(苦笑)男性読者にとっても考えさせられる作品でもあります。

そして前作と違ったところは主人公サイドから見て恋愛対象の相手が素敵であるところですよね。匡にある時は頼りにし、適度に距離を置こうとする佳奈は男性読者として可愛げがあります。可愛げがあると言えば猫のふみもキャラ立ちしていて少し深読みかもしれませんが、介護問題と相まって命の尊さを謳っているようにも感じられました。
本作の特長でもあると思うのですが、物事をしっかりと静かに受け止めて行くという点が貫かれていると感じられます。古い日本家屋を改造したり、後半は息子の同性愛を受け入れたり、その根底には主人公自身“優雅さ”が漂っているからであると強く感じました。そして元妻との離婚問題についてもあまり語られていないのだけど、読者にとってあまり問題ではない所が作者の凄さだと感じます。

読み終えた誰もが匡にとって元妻よりも佳奈の方が似つかわしいと思われることであると確信しています。何故なら、佳奈とは精神的にも“優雅”であり続けられると感じますから。
少し余談であるが、作中に谷崎潤一郎の逸話や太宰治の玉川入水の場所なども語られていてまさに作者の独壇場です。そして前作同様本作の表紙も斬新で、主人公の好きな女優ミア・フェローの表紙が使われていてインパクトの強い読書となりました。早く次の作品が読みたいです。

評価9点。
posted by: トラキチ | 松家仁之 | 00:50 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『沈むフランシス』 松家仁之 (新潮社)
評価:
松家 仁之
新潮社
¥ 1,512
(2013-09-30)

初出「新潮」。デビュー作『火山のふもとで』で数多くの読者を虜にした待望の2作目の作品。作者の作品は他の作家とは違って静謐な文体に精緻な内容が特徴であると感じます。デビュー作では地味な内容ながら読者にとって印象深い読書をもたらせてくれたのであるが、本作においては少し小ぢんまりした印象となったことは残念であった。
北海道を舞台とした圭子と和彦との恋愛を描いた作品であるが、主人公圭子サイドから見て和彦がそんなに魅力的な男だったのかという疑問符は拭えず、他の読者にお聞きしたいくらいである。まあ表紙の犬の写真がとってもミステリアスでかつ洗練された文章も健在。しかしながら、読む前に抱いた期待の大きさからしてはまるで和彦の正体のように謎めいています。

読んでいく過程においては、やはり圭子は和彦に騙されているのではないかという疑念が絶えず読者サイドにあり、それは読み終えた今となっては読み続ける大きなモチベーションとなっていたのであろうが、一つの結論として圭子自身、かつて幼少時代に過ごした土地とはいえ北海道の片隅の町に東京から身を隠すように移り住むこと自体、風代りな人物というか自ら数奇な運命を選択しているのが、時には同情的な気持ちにもさせられるし、逆を考えれば和彦に惹かれるひとつの要素にもなっているとも考えられる。とにかく私自身は決して正しい読み方がどうかわからないが、圭子が和彦に惚れる必然性というか整合性を念頭に置いて読み過ぎてしまい、あんまりすっきりした気分で本を閉じれなかったことは後悔している。

少し否定的に書きましたが、恋愛小説というくくりで読めばそれなりの余韻に浸れ、そこそこ満足の行く作品ではないかと考えます。それと性描写をこんなに美しく書ける作家、他にお目にかかれません。北海道ならではの四季の移ろいの描写の確かさなど、うっとりと読ませてくれる作家として今回は少し留保をつけましたがこれからも追いかけて行きたいと思っています。

評価7点。
posted by: トラキチ | 松家仁之 | 23:31 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『私を知らないで』 白河三兎 (集英社文庫)
書下ろし作品。2年前に発売後、話題となった作品であるが評判通りの読み応え十分の作品であった。
物語の大半は3人の男女(慎平→転勤族・高野→イケメン・キヨコ→美人で貧乏)の中学生の時期で青春そして恋愛小説なのかなと当初読みはじめてたのですが、もっと深いものがありました。そうですね友情を含んだ家族小説というくくりで良いのでしょうか。
読者を唸らせるのはやはり孤立した少女、キヨコに対する思いの変化に尽きると思います。不幸な境遇であるとはわかりつつもひたむきさに欠けた振舞いの目立つキヨコに対し、同情的な要素はなかったのですが、物語が深まってゆくにつれて明らかになる事柄が読者にとってまるでキヨコ=愛おしいものの象徴のように感じられます。
それはやはり主人公である慎平に対する気持ちにも繋がっていると感じられますよね。初めは頼りなげだったのがやがて何とかしてあげてという気持ちにさせられます。そのあたり対照的な高野の存在が物語を引き締めていますよね。

冒頭が少しわかりづらいなと思って読み始めましたが、タイトル名の由来もわかり、読了後再び冒頭に戻りウサギのシーンに戻ると物語の全容がより明らかとなりその構成の妙が絶品であることに気づき、切なさが頂点に達します。

そして側面的に見れば、大人の事情について考えざるをえません。やはり普通に生きている私たち読者も日常生活において偏見を持ちすぎたり、配慮や思いやりが欠けているところが多いのではないかと作者からの警告のように感じられました。
作者の白河さんは覆面作家、私の勘では男性だと思うのですがウィットに富んだ読みやすい文章、そして斬新的な作風、他の作品も手に取りたいと思わずにいられない実力作家だと感じます。

評価9点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 06:21 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『百瀬、こっちを向いて。』 中田永一 (祥伝社文庫)
4編からなる青春恋愛小説集。乙一名義の本は結構読んだことがありますが、中田名義では初読みとなります。表題作が映画化されたので実は長編作品だと思っていましたが、4編とも甲乙つけがたいレベルだったので得をした気分です。
全体的な物語のトーンは切なくてほろずっぱいけれど前向きな気分で本を閉じれます。それは各編の主人公それぞれが目立たなく不器用で後ろ向きな青春を送っていて、そこが読者に共感を呼ぶところだと感じます。恋をするのも、そして失恋をするのも人間を成長させますよね。
学生時代から数十年経た読者が読まれても、青春とりわけ学生時代が懐かしく感じること請け合いで、先生やクラスメイトどうしてるのだろうかとアルバムを見返したい気分となります。

表題作の宮崎先輩には共感できませんが(苦笑)友達の田辺と主人公との関係は男性読者としては嬉しい限りです。「なみうちぎわ」は最も現実的でないですが最も感動的です。ミステリーテイストが盛り込まれている「キャベツ畑〜」は作中の勘違いが切なく読者は恋することの喜びに浸れます。
最も印象に残ったのはラストの綺麗な主人公がブスメイクをする「小梅が通る」でしょうか、いつバレるかハラハラして読むことを余儀なくされますが、主人公柚木と山本との気持ちの通じ合いはもちろんのこと、柚木と地味な女友達2人との交流に胸を熱くさせられた読者は多いと感じます。鈍感な山本君は滑稽ですがね(笑)

評価8点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 05:47 | comments(0) | trackbacks(0) |-