-
2014年間ベストテン。2014.12.31 Wednesday
-
まだ感想をアップしてないのもありますが(苦笑)、昨年に引き続き年間ベストテンを発表したく思います。
ルールは昨年同様初読の本限定でひとりの作家で一作品のみとします。
2014年間ベスト10
1 『火山のふもとで』 松家仁之 (新潮社)
2 『恋歌』 朝井まかて (講談社)
3 『翼をください』 原田マハ (毎日新聞社)
4 『海賊とよばれた男』(上・下) 百田尚樹 (講談社文庫)
5 『春、戻る』 瀬尾まいこ (集英社)
6 『私を知らないで』 白河三兎 (集英社文庫)
7 『星々たち』 桜木紫乃 (実業之日本社)
8 『手のひらの音符』 藤岡陽子 (新潮社)
9 『よるのふくらみ』 窪美澄 (新潮社)
10『彼女の家計簿』 原田ひ香 (光文社)
それでは良いお年を、来年も良い本に出会えますように。
-
『家族シアター』 辻村深月 (講談社)2014.12.26 Friday
-
読者によって好みが分かれると思われますが、個人的には年の近い姉妹が描かれている編がギュッと心を鷲掴みされたような気がして楽しめましたが女性読者にも聞いてみたいなと思ったりしています。
まずは冒頭の「「妹」という祝福」」ですね、真面目な姉とイケてる妹の対比がリアルですが、姉の結婚式に妹に送られる手紙を振り返る構成が絶妙で思わず唸らされます。
あとは最大の感動が約束される「1992年の秋空」、うみかとはるか姉妹の物語ですが逆上がりが2人のまるで友情のようは姉妹愛を育みます。
残りの編もすべてがそれぞれ上手くまとめられていますがアメリカ帰りの孫と祖父とのつながりを描いた「孫と誕生日」が秀逸でしょうか。
本作は書下ろしも含めて様々な雑誌に掲載された物語の寄せ集め的な作品に見えますが、一冊を読み終えた後のまとまりは作者の力量の高さを誇示されたような気にさせられます。ラストの短い物語は作者が敬愛する藤子不二雄ファンの夫婦の物語で、ファンサービスとして捉えたら良いのでしょうね。ディープな辻村ファンにとってはこれ以上ない締めくくりの物語であることが容易に想像できます。
評価8点。
-
『我が家の問題』 奥田秀朗 (集英社文庫)2014.12.22 Monday
-
どの編もどこの家庭でも起こり得る話ですが身につまされるというよりも面白さを感じる度合いの方が高いと思います。
滑稽さの中にも相手に対する思いやりが包まれているので夫婦で回し読みをすれば理解を深めることが可能だと感じます。「里帰り」なんかにはそのヒントが多く詰まっていると感じます。
特に印象深いのは『家日和』でも登場した夫婦が再登場する「妻とマラソン」でしょうか、これは夫役が奥田さん自身を彷彿されて読者にとって心に残る作品となりました。少し文壇を揶揄しているところがあってこれはクスッと笑えます。
いずれにしても、どんなに切実な問題でも気持ちの持ち方で軽くなるということがわかります。そこに行きつくには本作で作者が見せつける視点というか目線の違いが上げれると思います。家に帰るのが嫌になる夫目線、主人が仕事が出来るのかを疑う妻目線などなど。決して泣ける話ではありませんが心が満たされて本を閉じることが出来ること請け合いの一冊だと言えそうです。
評価8点。
-
『ふたつのしるし』 宮下奈都 (幻冬舎)2014.12.09 Tuesday
-
決して現実的な話ではないかもしれませんが、人間誰しも夢を持ってそして前向きに生きて行くと良いことがあるということを物語を通して読者に教えてくれます。
読ませどころはやはりふたりのハルがどういう接点で交わっていくかということでした。
それと有体な表現になりますが、しるしという2人の愛の証と言える子供の誕生が読者にとっても大きな喜びとなっている点でしょうか。
どちらかといえば不遇とも言える2人の生い立ちがどう絡めていくのかと思いました、女性が5〜6歳年長で少なくとも男性側よりもしっかりものですよね。
ターニングポイントはハル(温之)にとってミナとの出会いが大きかったのでしょう。自分自身、生きてゆくうえで引け目を感じていた彼がそこから旅立つきっかけとなったと思います。
余談ですが、作者の人柄が文章に滲み出ていて、たとえ遥名が不倫をしていても温之とは合わないとかいう気持ちにさせられませんよね。あと健太という友達の存在が気弱な温之にとっていかに大きかったか、終盤のしるしちゃんの語りからわかるところが微笑ましくもあり感動的でもあります。
ラストの「生い立ち記」は感動的で2人の夢が叶ったところを見届けれて心温まる読書を体験できたことを作者に感謝したいと思います。
評価8点。
-
『フォルトゥナの瞳』 百田尚樹 (新潮社)2014.12.04 Thursday
-
主人公の慎一郎は孤独ながらも純真で仕事熱心な青年であり、特殊な能力を持ち合わせていることに気づいてから、恋愛面も含めて試行錯誤を繰り返します。
どうしても不器用さが露呈されているところが読者にとっては気がかりであって、その通りの展開となっていく所が作者の術中に嵌ったようであり逆に物足りない気持ちを助長することにもなったのであるが、それは作者に大きな期待を寄せ過ぎなのかもしれません。
読み方を変えて恋愛小説として読めば、意地らしくて切なさが込みあがってくる場面が後半続出するのであるが、人付き合いが下手な主人公にこの特殊な能力を与えた運命に対してどうにかならなかったのかという気持ちが大きかった。ラストがあんな感じだから主人公の優しさが際立ったという読み方も出来るのであろうが、葵が主人公の分も幸せになれるかどうかに関しては辛い将来が待ち受けているような気がする。
評価7点。
< 前のページ | 全 [1] ページ中 [1] ページを表示しています。 | 次のページ > |