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『新訳 ヴェニスの商人』 シェイクスピア (角川文庫)
河合祥一郎訳。氏の訳されたものは舞台を念頭に置いて書かれているので、生き生きとした言葉が使われていて、頗る快適な読み応えを約束してくれるのが嬉しい限りである。
以前読んだ原書も訳本(新潮文庫版)を片手だったけど、良くも悪くももっと重厚で悲劇はともかく喜劇は馴染みにくかった記憶がある。

四大悲劇が有名なシェイクスピアであるが、個人的には本作も含めた喜劇(といっても4〜5作品しか読んだことがないけれど)群の方が楽しく読めると感じる。
ただ本作は喜劇のジャンルに入るのであろうが厳密に言えば喜劇でもあり悲劇でもあってそこが本作の魅力へと繋がっていると感じる。

舞台はイタリアのヴェニス、ラブストーリーを交えた法廷劇が繰り広げられます。
本作が書かれたのは1597年頃、キリスト教中心に回っていたエリザベス朝時代の風潮が如実に表れていて、現代人にとっては受け止め方が違ってくるのは致しかたがないところであろう。本作におけるユダヤ人シャイロックの取り扱われ方というか読者の受け止め方は400年の間、かなり変わったと信じたい。これは現代読者にとっては教訓的な話となっていると感じる。

逆にもうひとりの個性的キャラであるポーシャは本当にシェイクスピアの生み出した素敵な才女と言え、彼女の下した判決は素晴らしいと言えよう。指輪に関するエピソードがいつまでも脳裡に焼き付いて離れないのであるが、シャイロックに対する受け止め方とは対照的に今も昔も男たちとはこんなものであることは認めざるを得ません(笑)
男たちが不甲斐ないとゆうよりも滑稽であるのが本作のもっとも現代にも通じる普遍性を貫いた部分であろう。一度舞台で見たい胸のすく作品でもあります。

評価8点。
posted by: トラキチ | シェイクスピア | 23:54 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『あなたは、誰かの大切な人』 原田マハ (講談社)
初出「小説現代」。40〜50代の女性を主人公に据えた人生のターニングポイントを語る6編からなる短編集。作者に関してはやはり胸がすく長編作家というイメージが付きまとい、私も決してそれを否定はしないのだけど、本短編集を読んで洗練された素敵な物語が心に沁みた読者が大半であると感じるのである。
タイトル名の通り、各編の主人公、人生の半ばを過ぎ夢はあるけど残りの人生もそう多くはないということは共通している。

もっとも共通しているのは配偶者に恵まれず、決して世間一般でいう女性としての幸せを掴み取っていない点である。
作者は風変わりと言えば聞こえが悪いが個性的で、ある種孤独に強い女性にスポットを当てて、彼女の本音を描写するのが凄く長けていると感じていたが本作では一貫して描かれている。
彼女たちにはもちろん大切な人がいて親であったり、外人であったり、友人であったり、外国の母親のような人であったりするのだが、ハッとさせられることは生きて行く上で意志が強い分、大切な人に対する思い入れも強いことである。

そのあたり各編巧みに描かれているのであるが、個人的には頻繁に海外旅行をしない一読者としては夢を与えてくれるというか夢を見せてくれる編が特に気に入った。
それは登場人物がリンクしている「月夜のアボガド」とラストの「皿の上の孤独」である。とりわけ「皿の〜」は同志的な関係の男女の姿が描かれていて視力が弱くなった男の代わりにメキシコシティを訪れる主人公、まるで友情と愛情を足して2で割ったふたりの究極の関係に深い感銘を受けた。

その他親子愛を語った「無用の人」や友人との深い絆を描いた「波打ち際のふたり」などどれもがインパクトが強く、読者の大切な人に贈って欲しいという作者の願いが込められた珠玉の短編集であると捉えている。

評価9点。

posted by: トラキチ | 原田マハ | 00:01 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『あるキング』 伊坂幸太郎 (徳間文庫)
評価:
伊坂 幸太郎
徳間書店
¥ 637
(2012-08-03)

文庫化による再読であるが、どの程度改稿されているかは単行本を読んでからかなり年月が経っているので把握出来なかった。文庫の解説は名翻訳家として名高い柴田元幸氏が書かれていて、その洞察力の高さに舌を巻いたのであるが、この作品あたりから伊坂作品の第二期というのですか、エンターテイメント度を敢えて薄くして、実験的作品と言えば失礼かもしれないが、少なくとも作家としての自分の好きな方向性を試している部分が多く感じられる。

本作はシェイクスピアの「マクベス」という作品の伊坂さん自身の現代版として書かれているところがある。機会があったというか本作の再読を機に『マクベス』を読んでみたのだけど、これもまた違った味わいがあったので読み比べてみたら本作も一層楽しめることだと感じる。本作における野球青年である王求はある意味マクベスよりも孤独だと言えよう。ただ、彼には絶対的な親子愛があってそれが全編を貫かれているところが本作の特長だと考える。
それは彼が誕生した過程がやはり仙醍キングスの大ファンであるという両親の血を受け継いで成長してゆくとく物語の大前提が大きく、そして各章第三者によって語られますが、タイトルの年齢が主人公の年齢であって順風満帆ではない様がまるで伝記のようにも受け取れます。

その解釈としてあげられるのが、モチーフとなっている言葉であるフェアかファウルかという言葉。これは本作においては“フェアもファウルも紙一重の世界なんだよ”ということを語っているように感じ、一方『マクベス』においてはフェアとファウルは善と悪というような意味合いで描かれていると考えます。
異色作と言えばそうなるのだけど、他の伊坂作品と同様に偶然(人との出会いですね)が積み重なってストーリーが積み上げられてゆくというパターンは同じようにも感じられます。

本を閉じた瞬間、どちらも運命を受け入れた人生だったけど、王求はマクベスのように悲惨ではなく充実した人生を送ったというように感じ取りました。ほっこり感は他作品ほどないけれど充実した読書を約束してくれる一冊だと感じます。

評価8点
posted by: トラキチ | 伊坂幸太郎 | 10:10 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『新訳マクベス』 シェイクスピア (角川文庫)
評価:
シェイクスピア
角川グループパブリッシング
¥ 432
(2009-01-24)

河合祥一郎訳。ご存知四大悲劇の一つで学生時代以来の再読となる。学生時代原書も含めて10作品近く読んだ記憶があるのだが内容はおぼろげであり恥ずかしい限りである。シェイクスピアがイギリス国内だけでなく長く広く愛されているのは、その倫理観が時代を超えて受け入れれるということであると感じる。
それは本作を読んでも十二分に掴み取ることが出来、400年以上も前に書かれた作品であるということを忘れてしまうことは信じられない。

冒頭に登場し、本作を支配していると言って過言ではない魔女の"きれいは汚い、汚いはきれい。”という言葉が読者である私も支配してしまうのが印象的である。
内容自体はおぼろげにしか覚えていなかったのあるが、魔女の言葉にまるで翻弄され、その運命を委ねざるをえなくなり破滅への道をたどるスコットランド王マクベスに対して同情の気持ちを持って読み進めるのが正しい読み方がどうかはわからないが、簡潔な訳文がとっても印象的である。

今回強く感じたのはマクベスの夫人に対する愛情の強さである。他の訳者の文章では味わえたかどうか定かではないが、私的にはFair is foul,and foul is fair.の fair→right,foul→wrongだと感じているのだが、以前はfair→good,foul→badと捉えていたような気がする。その変化が訳者によるものなのか、自分自身の変化なのかはわからないがそういったことを考えながら読めるというのはシェイクスピアの奥深さもっと言えば文学の奥の深さだと感じる。

本作を手に取るきっかけとなったのは、伊坂幸太郎の『あるキング』にFair〜の言葉がモチーフとして使われていることがきっかけとなった。伊坂氏に感謝するとともに何作かシェイクスピア作品を手に取りたい衝動に駆られています。

評価8点。



posted by: トラキチ | シェイクスピア | 23:46 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『首折り男のための協奏曲』 伊坂幸太郎 (新潮社)
7編の短編からなる作品集であるが、連作短編集ということで作者も出版社も売り出しているんだけど、とっても繋がりが緩くてあんまり帯の贅沢すぎるという形容には同意できないことをまず語っておきたい。
もちろん、一編一編は独自の語り口というかいつもの伊坂さんというか、粒ぞろいの作品のオンパレードでやはり楽しめることは間違いのないところであって単独の短編集として売った方が良かったように感じずにはいられません。

もしくは作中の何編かで登場する伊坂作品ではお馴染みの泥棒かつ探偵である黒澤をすべてのお話で登場させることによって、黒澤さんにスポットライトを当てたお話の方がより読者が満足できたような気がします。
確かに緩やかにリンクされているところが随所に現われて来て、ニヤッとしてしまうのですが、それよりも黒澤の言動というか行動の方がより滑稽であると感じます。

自分自身の読解力不足を露呈しているようですが、いくつかのことが不明のままになってしまって、他の伊坂作品でお馴染みの上手く収れんされて行く過程を味わえるというパターンに慣れた人には消化不良かもしれません。
もっとも印象深いのは「僕の舟」、冒頭の首折り男の話で登場する若林夫妻の愛の話でここでも黒澤が大活躍するのですが、こんな切ない恋の話も書けるのですね。

あとは異色作と言ってよいであろう「合コンの話」、読んでのお楽しみですがオシボリの話だけでもうすっかり伊坂ワールドです。

余談ですが、今年は是非仙台に旅行に行きたいと思っています。その旅行をより楽しいものにするために伊坂作品読破スピードアップしたいなと思っています。

評価8点。
posted by: トラキチ | 伊坂幸太郎 | 22:36 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『トオリヌケキンシ』  加納朋子 (文藝春秋)
評価:
加納 朋子
文藝春秋
¥ 1,512
(2014-10-14)

初出「別冊文藝春秋」他。普通の人とは違う、何らかの特徴を持っているを描いた6編からなる短編集。加納作品の特長は読んでいてとっても好奇心をそそられるところだと感じていました。本作はかつてのほんわかモードの作品だけでなく身につまされる虐待なども含まれ、成長かつ変化した作者の現在を確認することが出来ます。
なんといっても闘病生活を経て復帰されて書かれた本作、厳密にいえば表題作のみ闘病前に書かれたと思われますが、一冊の本として上梓することに関しては期するところが大きかったと容易に想像されます。

ラストの「この出口のない、閉ざされた部屋で」が格別な感動を味わえる。これまでに登場した人物が再登場するところには驚かされたが、読者を前向きにさせてくれるエンディングは6編すべてに当てはまるのであるがラストの手紙は圧巻ですよね。
あきらめないで生きることの喜び→作者の経験を踏まえつつ現在出来る最高のメッセージだと感じます。

評価8点。
posted by: トラキチ | 加納朋子 | 02:05 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『水やりはいつも深夜だけど』 窪美澄 (角川書店)
初出「野生時代」。5編からなる育児や価値観をテーマとした短編集で各タイトルに植物名がモチーフとして使われている。窪作品の特長でもある露骨な性描写が影を潜め、逆にしっとりとかつじっくりと読ませる作品集となっていて作者の成長ぶりが認識できる。 他の作品と比べて派手さでは欠けるものの、共感度はもっとも高いと思われます。それは読者との距離を縮めて書かれた作品でるからであって、幼稚園児童をお子さんに持っている話が大半なだけに似たような不安な事情を抱えた人が読者本人や読者の周りに多く存在すると思います。

印象的なのは男性目線で語られる「砂のないテラリウム」、倦怠期を感じ、不倫へと走ろうとする男性が踏みとどまる過程が巧みに描かれています。こういった話は夫婦で回し読みして欲しいですね、相手の立場に立てると思います(笑)あとはラストの「かそけきサンカヨウ」も切ないです。幼児の頃に母親と離別し高校生となった主人公が、父親が再婚相手を見つけて同居し始めるのですが、相手の連れ子が幼児で自分の過去を照らし合わせてゆく姿が切ないです。

どの話も他の窪作品のような衝撃的な内容ではないのですが、誰もが抱え持って仕方のない事情を上手に読者の体内に消化させていると思います。 地味かもしれませんが、本作のような内容の作品を上梓し続ければ読者は進んで作者の作品を手に続けるであろうと考えます。

評価8点。
posted by: トラキチ | 窪美澄 | 18:27 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『たった、それだけ』 宮下奈都 (双葉社)
評価:
宮下 奈都
双葉社
¥ 1,296
(2014-11-12)

初出「小説推理」。6編からなる連作短編集。ある一人の犯罪に手を染めた男性の家族と周囲の人々を描いた作品であるが、姿を晦ませた男性のミステリアスな部分を残しつつも、残された人々の暗くて閉ざされた姿が、まるで混とんとして不確かな現代社会と相通じるものと感じられます。やはり背負って生きている娘のルイちゃんのパートが最も感動的だと言えると思います。転校を余儀なくされ、親にも気を使い、学校ではいじめられますが、その後寛大な男の子と出会うことで前途が開けてゆくのが胸のすく思いですね。

ラストは作者の良さが十二分に発揮されたと感じます。いろんな過去を引きずっていても、明日を見据えて生きて行くことの大切さを教えてくれます。ルイちゃんの名前(本当は涙と書きます)のことが言及されているが微笑ましくもあり少しジーンと来たのであるが、読者である私たちも嬉しい涙を流せる人生を送りたいものですね。

評価8点。

(読了日2014年12月31日)
posted by: トラキチ | 宮下奈都 | 10:37 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『ブルース』 桜木紫乃 (文藝春秋)
評価:
桜木 紫乃
文藝春秋
¥ 1,512
(2014-12-05)

初出「オール讀物」。八編からなる連作短編集で成り上がりと形容して良さそうな一人の男を描いているのであるが、作者の作風や読者層からしてそれぞれの編に登場する女たちの物語という捉え方の方が正しいようにも思える。
前作『星々たち』と前々作『蛇行する月』でも周りの人間から見た主人公ともいうべき人物をくっきりと浮かび上がらせる作風を取っているが、読者サイドからして主人公が女性だったために本作とはかなり違った印象を受け、そのために新境地作品とも捉えることが出来ると感じる。

それは主人公である博人の個性が際立っていることが最大の理由である。彼は指が六本あって作中で一本をそぎ落としてしまうのですが、それがまるで不要な過去との隔絶のようにもとれるし、そのあとかた(瘤ですね)がその後の武器ともなっているようにも感じられます。
そのバランスが読者にとっては絶妙で、思わず上手いなと唸らされました。
女性が主人公の場合、どうしてもその人物が不幸か否かという読み方を主導してしまい作者の力強い文章と相まってグイグイと引き込まれるのであるが、本作は主人公である博人の出自の不幸さをバネにしてのし上がっていく様が決して綺麗ではないけど、思わず肩入れしたくなる程度に真っ直ぐに読者サイドへ到達しているところが素晴らしいと感じる。

そして各編の女性それぞれが博人と関わることによって、人生をより味わい深いものとしているようにも見受けれます。
ちょうど時代が昭和から平成に変わるところというのも本作にとっては重要なポイントで、ある程度の年齢を経た読者にとっては懐かしい楽曲が出て来たりして、その当時の釧路に思いを馳せる作者の気持ちが力強く読者に伝わるところなんかは他の作家では決して味わえない部分だと感じます。

称賛すべきと感じる所は、博人が選んだ女性が最も読者サイドからして納得できる人物であるという点である。これは私自身のひとりよがりな感想でないことを願っているのであるが、その選択が博人にとって、ある種悲哀に満ちたというよりも充実した人生を過ごしたというように読み取れたことの手助けとなっていると強く感じた。
男性一読者として、決して博人の生き方が正しいとは思わないが、力強い生き様は読者に勇気を与えていることは間違いないところでもっと自分を鍛えなければという気持ちにさせられました。

(読了日2014年12月26日)

評価9点。
posted by: トラキチ | 桜木紫乃 | 00:37 | comments(0) | trackbacks(0) |-