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『残り全部バケーション』 伊坂幸太郎 (集英社)
評価:
伊坂 幸太郎
集英社
¥ 1,512
(2012-12-05)

初出がラストも書下ろしも含めてバラバラなものを上手く繋ぎ合わせた5編からなる連作短編集。まるでジグソーパズルのような作品ですが、ラストがはまるかどうかは読者に委ねているあたりは伊坂さんらしいともいえる。当たり屋や脅迫という裏稼業をしている溝口と岡田のさりげない名コンビぶりが印象的である。とりわけ溝口に仕えている岡田がとっても人間臭くって、彼の幼少期の話なんかはかなり感動的だともいえる。そして伊坂作品特有のさりげないけれど重大な繋がりを見落としてはいけない。アドバルーンバイトのおじさんが若かりし頃の溝口のはずで、それを見つけてほくそ笑んでいる自分を褒めてやりたい(笑)

個人的には初めの表題作に登場する家族がその後登場しなかったのがなんとも残念である。というのもタイトル名となっている“残り全部バケーション”という言葉が凄く斬新で読者の心に根付いていて、その後の編にも関連性があるのかなとは思いましたが思ったようなひねりがなかったのが残念です。推測ですがラストの食べ歩きブログのサキは冒頭の女の子のような気がしますがどうでしょうか。それ以外の部分では二人の裏稼業に勤しむも憎めない名コンビぶりにニヤッとさせられる展開が待ち受けています。
裏切られたはずの岡田が溝口に対してそういった気持ちを出さない部分が魅力的であり、それが虐待されている子供や弓子先生を助けたりするエネルギーとなっているのでしょう。

この作品の優れたところはやはり時系列がバラバラとなっている点で、そこが読者泣かせというよりも読者が読む気力を助長しているように感じられる。あとはラストでの溝口の岡田に対しての愛情表現ともいうべき描写が印象的で、そういえば途中で抜擢された相棒役は頼りないのが多いですよね。
伊坂作品の中では楽観的でライトな作品となるのでしょうが、各編に表れる登場人物たちのアイコンが可愛く読書の楽しみを倍増させてくれています。初期の伊坂作品を彷彿とさせるお洒落な作品だと感じました。再読すれば新たなる発見がありそうですね。

評価8点。
posted by: トラキチ | 伊坂幸太郎 | 03:58 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂幸太郎 (創元推理文庫)
再読。来月仙台旅行のために仙台舞台の伊坂作品再読中。吉川英治文学新人賞受賞作品。出世作とも言える『重力ピエロ』が初めて直木賞の候補にノミネートされた時期に発売された作品であって当時の伊坂氏の躍進ぶりが読み返してみて懐かしくもある。 個人的には巷で呼ばれている区分で言えば第一期伊坂作品の中では『砂漠』と肩を並べて評価したい作品である。本作においてはウィットに富んだ洒落た会話と構成、ミステリーを読むに当たっての醍醐味を十分に味わえる内容となっている点は発売後十年以上経った今読んでも古臭さを感じない。

ズバリ本作のテーマは“熱い友情”。ミステリー部分としてとっても読者を惹きつけた要素として本作の構成の巧さがある。
“現在”と“二年前”を交互にまじえながら展開して行くのであるが読者はきっと物語の序盤から釘付け状態となるであろう。“なぜ本屋を襲撃して広辞苑を盗まなければならなくなったのだろうか!”と言う純粋な疑問を抱いて・・・
どのように2つの話が収束するのだろうかと思いつつ読み進めて行くのであるが、違和感なく伊坂さんに“心地よく騙された”というのが率直な感想である。

読み終えたあと反省したのであるが(苦笑)、会話のひと言ひと言が大きな伏線となっているところである。
やや傍観者的(?)な“現在”の主人公の椎名が少しだけど物語の終盤には成長した姿が見出せるところは微笑ましく感じられた。

あと作品全体の内容として“動物虐待問題”や“人種差別問題”についても触れており、読者に強い教訓を示唆してくれたことを感謝したい。
クールな語り口”でもたらされる“圧巻のラスト”を堪能できた方はまさに“伊坂ワールド”にドップリはまったことの証である。

評価9点。
posted by: トラキチ | 伊坂幸太郎 | 10:57 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『スケープゴート』 幸田真音 (中央公論新社)
評価:
幸田 真音
中央公論新社
¥ 1,728
(2014-10-09)

初出「婦人公論」加筆修正あり。作者の経歴や存在は知っていたものの今回初めて手に取ったのはWOWOWにて黒木瞳主演でドラマ化がきっかけとなっている。ドラマを視聴している人にとっては主人公の三崎晧子を黒木瞳に重ね合わせて読んでしまうのであるが、原作至上主義読者の私とすれば主人公=作者という読み方の方が理に適っているように強く感じる。

初出誌の影響もあるのかもしれませんが、予想よりもずっとエンタメ的な内容で、読みやすさを重視して書かれていて、作者の専門分野の金融経済などの知識等が極力抑制された内容となっている。
大学教授から政界へとあるきっかけで進出してゆくある種のシンデレラストーリーと言えば聞こえがいいが、本作においては他の散りばめられたものが心に残るのである。たとえば主人公を取り巻く家族が少し複雑であるのだけど、良き理解者としての夫の素晴らしさや徐々に心を開いて行く娘の姿、そしてなんといっても味方となってゆく報道記者のつかさの存在ですよね。

あとはこれは晧子に対する清廉潔白性を醸し出している最たる部分だと思いますが、姉に母親の介護を任せているというわだかまりが彼女の立派な仕事を後押ししているようにも感じます。
取りようによっては痛快な話ということも言えるのでしょうが、山城と亡き父との関係などミステリアスな部分が終盤解明されて行くのですが、もし山城が倒れなかったら展開はどうなっていたのか、あるいは野党側が翻って投票などありえるのかなど要らぬ心配もしてしまいましたが、それだけ晧子に対して肩入れしていたということでしょう。
腹の黒いというか野心的な人物も出てきますが、彼らの思惑は政治の世界ではお決まりごとであってそれほどドロドロしてるとは感じずとにかく肩肘張らずに読める良書だなと感じました。女性が読まれたら直に働く女性を応援する姿勢が伝わってくると思います。

ひとつ気になるのはラストで八木沢が晧子の娘が最近僕に似てきたねというくだりがあるのですが、それはジョークで言っているのかどうかこれは少し謎でした。作者のリップサービスなのでしょうね。


評価8点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 10:40 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『キアズマ』 近藤史恵 (新潮社)
評価:
近藤 史恵
新潮社
¥ 1,620
(2013-04)

初出「小説新潮」。作者の代表シリーズであるサクリファイスシリーズの第4弾で初の長編となる。描かれるのはもちろんサイクルロードレース界であるが今回はプロの世界ではなく大学の弱小自転車部であって、主人公もお馴染みの白石から岸田にバトンが渡されるのである。

過去の3作品によりサイクルレースの魅力についての知識を得た読者にとっては、アマチュアの世界が描かれているということで少し新鮮で自分との距離感の近さが心地よい。前3作のようなスリル満点のレースシーンは影を潜めるけれど、それを補って余りあるほどの人間ドラマが楽しめるのである。
主人公である岸田の相棒役でライバルと言って良い櫻井のキャラが際立って魅力的に映る。彼が自転車を走り続けるきっかけとなったお兄さんの件が謎めいた部分を含んでいて、当初は変わった奴というイメージだったものが、終盤には魅力的な人物に変貌してゆく姿を楽しめるところが本作を読む醍醐味だと感じる。

書き忘れていたけれど、岸田の過去の出来事である友人である豊の存在も本作にとっては大きな生命線となっていることも忘れてはならないのであろう。本作は情熱を持つことの大切さを忘れてはならないという作者のメッセージが込められていて、そこから困難を乗り越えて逆境に負けない自己形成が出来るのだと強く感じた。
思えば岸田も櫻井もまだ20歳ぐらいであって、2人の夢と友情はこれからまだまだ続くのであろう。夢の続きを読める日を楽しみに待ちたいなと思っている。

評価8点。
posted by: トラキチ | 近藤史恵 | 09:11 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『奇跡の人』 原田マハ (双葉社)
初出地方「小説推理」。最新刊で新境地開拓作品と謳われた『異邦人』には少し留保をつけたのであるが、改めて本作を読んで過去の偉人をベースとした作品は読ませるなと思った次第である。

作者の初期の傑作作品である『翼をください』は爽やかさを織り交ぜた感動物語と仕上がっているが、本作は和製ヘレンケラー物語とも言える内容でやはり重苦しさは否定できないものの、コツコツと努力を惜しまずに続けることの大切さを改めて読者に教えてくれるのである。

そして作者の巧さが際立っていると感じたのは、本作の構成の妙である。冒頭(昭和29年)にて三味線名人であるキワを役人たちが訪れるところが描かれていて、そこから過去(明治20年)に遡り、安先生とれんとの苦難の日々が語られる。読者の大半がどこでれんとキワが邂逅するのであろうかと胸を膨らませて読むことを余儀なくされるのである。
その高揚感が読書の醍醐味だと強く感じた。ラストの感動度は半端なく、お互いがお互いを励みにして努力を惜しまずに生きてきた証であり友情以上のものを感じた。『翼をください』や『楽園のカンヴァス』に遜色のないエンディングだと思う。

やはり安先生の気高さと不屈の精神力が印象的であった。弱視にもめげずにれんへの指導に全身全霊を捧げた彼女の人生は、本当に幸せなものだったのであろう。
安とれん、れんとキワ、二つの出会いがなければこの物語のような大成を果たした人生は有りえなかったはずであり、人生における出会いの大切さについて再考させられた作品であります。たとえ平凡な人生であっても素敵な出会いは人生に彩を与えますよね。

評価9点。
posted by: トラキチ | 原田マハ | 19:47 | comments(0) | trackbacks(0) |-