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『幻の声 髪結い伊三次捕物余話』 宇江佐真理 (文春文庫)
“主人公は髪結い床(店舗)を持たない廻り髪結いの町人・伊三次(いさじ)で、北町奉行所同心・不破友之進(ふわ とものしん)の小者としての裏の顔を持つ。芸者の恋人・お文(おぶん)と所帯を持って髪結い床を持つ夢を叶えるため、仕事に励みながら、小者として様々な事件の解決の糸口を見つけていく。”(ウィキより引用)

早いもので作者の宇江佐さんが亡くなられて早や二年が過ぎ去りました。デビュー作であり直木賞候補作であった本作を改めて読むと、思い出のアルバムをめくっているような感覚となる。本作が出て既に20年の日々が過ぎ去り、直木賞候補として6度ノミネートされ(歴代トップタイの回数)、惜しくも直木賞の受賞は叶わなかったけれど、亡くなる直前まで上梓を重ねられ都合67作品(内髪結いシリーズは16作品)私たち読者を楽しませてくれました。各作品のクオリティの高さは個人的には藤沢周平のそれに匹敵するものだと思っています。思うに作者も直木賞を受賞されなかった悔しさをばねとして頑張ってこられたように思うのである。
本作が時代小説全体に残した功績は甚大であると思います。それは読者層も含めて数年前の“みをつくしシリーズ”にも繋がっていると思います。一番の特長はどちらも市井物でありチャンバラ(武術)シーンがないことが上げられると思われます。
みをつくしシリーズは完全に主人公に読者が乗り移って読み進め、感情移入する作品として成功しましたが、本作は主人公の伊三次だけでなく恋人役(のちに妻となります)お文(おぶん)をはじめとするサブキャラクターが伊三次以上に魅力にあふれている点で、各編主人公が変って行き読者を楽しませてくれます。
作者は、「(このシリーズは)編集者がもう要らぬと言わない限り、書かせていただくつもりである」「伊三次とともに現れた小説家なので、伊三次とともに自分の幕引きもしたいと考えている」と述べているほどで、いわば作者のライフワーク的作品とも言え、登場人物の成長や変化が作者だけでなく読者の変化をも気づかせてくれるところが凄いなと読み返しながら強く感じました。

シリーズ序盤は共に25歳の伊三次とお文の恋模様が気になりますが、基本的には恋だけでなく泣けて笑えます。
とりわけお文のキャラが素晴らしく、そのいじらしさは圧巻で可愛く思わない男はいないと思いますし、シリーズの成功の最大のポイントとなっているのでしょう。
ディープな宇江佐ファンなら他の作者の作品の女性と比べてみて楽しむこともできるでしょう。

気風の良い江戸っ子言葉が再読しても印象的であり、天国にいる作者とお文を重ね合わせて読むと本当に目頭が熱くなる読書となりました。
少しずつ再読して、何年たっても読み継がれて行けるように少しでも尽力したいと思っています。

評価9点
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posted by: トラキチ | 宇江佐真理 | 22:45 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『砂上』 桜木紫乃 (角川書店)
評価:
価格: ¥ 1,620
ショップ: 楽天ブックス

札幌近郊の江別市を舞台としたビストロで細々と働きながら作家を目指す40女の柊令央を描いた物語。
本作の出来栄えの優劣は読者によってかなり隔たりがあると思いますが、やはり直木賞という一つの到達点に達した作家だからこそ書ける作品であると思います。

出版業界とりわけ文芸の不況を露呈した作品ともいえますが、桜木作品をコンプリートしている読者とすればなんといってもプロとしてひとかどの作家になるまでの作者の過去の苦悩が主人公に乗り移った感がします。
現実を読者にこれでもかと露呈しながらもちっぽけだけれど夢や希望を見出せるのが桜木作品を読む醍醐味だと感じていますが、本作は作者の原点回帰であって読者にとってはやや消化しずらい内容のように感じた。

編集者である小川乙三の何度も書き直しさせるシビアさが読者にとってスパイスの効いたものとなって、主人公を追い詰めつつも成長させたところが唯一の読み応えであったとも言える。生半可な気持ちでは作家にはなれないという戒め的作品であり、一語一語魂のこもった言葉は桜木作品を読む醍醐味であり他の作家では味わえないことは再認識した。

評価7点
posted by: トラキチ | 桜木紫乃 | 21:52 | comments(0) | trackbacks(0) |-
『若葉の宿』 中村理聖 (集英社)
評価:
価格: ¥ 1,728
ショップ: 楽天ブックス

作者は小説すばる新人賞を受賞されており、本作が受賞後の二作目の作品となる。

京都の町家旅館の娘として生まれた主人公の若葉の成長物語であるが、父親を知らず祖父母に育てられいつか自分を置いて失踪した母親に会えるかどうかという希望を捨てずに現実にもがきながら生きてゆく様が読者に伝わってきますが、シャキシャキした女性読者が読まれたら多少イライラするかもしれませんが、男性読者は可愛く思えそうなキャラとも言えます。

京都特有の町家旅館で生まれ育った女の子の成長物語ですが、古い伝統を重んじつつも新しいものに徐々に変更していかなければならない葛藤が描かれています。伝わるのはやはり、祖父母の孫に対する愛情であり挫けそうになりながらも立ち向かって行く姿が儚げで胸を打たれます。

京都の宿泊施設の実態がわかる内容であり、祖父の口利きで入った老舗旅館に勉強として働きに出る若葉ですが苦労が絶えません。友達である舞妓や板前見習いの慎太郎に背中を押されて一皮むける姿が清々しい読書となった。母親との再会ができたかどうか、凄く巧みなエンディングにやられた気持ちになった。

評価8点。
posted by: トラキチ | 現代小説(国内) | 21:04 | comments(0) | trackbacks(0) |-