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『あきない世傳金と銀 奔流篇』 高田郁 (ハルキ文庫)2018.01.26 Friday
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なるほど、最初は五年後の江戸出店という目標に対して力を合わせてという感じでやっていきます。幸は決してしたたかという感じではないのですが、自然と男性陣を凌駕していくところに逞しささえ感じたりしますよね。少しずつ歯車が崩れていく過程を楽しむべき作品なのでしょうか、取りようによっては商売上手のはずの惣次が滑稽にも思えるラストですが、自分の妻の予想以上の聡明さについて行けなくなったが故の結果だと思います。
幸の良い所はやはり常に情というものを持ち合わせていて、そこを物事の判断する際に優先しはるところだと思います。惣次の度量の狭さが目立った半面、幸の今後がますます目が離せませんが、菊枝の再登場ににんまりしたことも書き留めておきたい。
夫を超えてしまったように見受けれるが惣次との関係、そして江戸出店への布石となる近江での仕事の今後の展開、次巻に取り掛かりますね。
評価9点
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『満天のゴール』 藤岡陽子 (小学館)2018.01.01 Monday
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今まで10作近く作者の作品は読ませていただいていますが、生き方だけでなく人生のゴールである死について言及しており感動度においてはトップであると言えます。
主人公は33歳で旦那に愛人が出来て離婚を要求されている女性奈緒、彼女が息子涼介を連れて京都北部の丹後半島にある実家に戻るところから始まるのであるが、彼女が看護師の資格を持っているのと
地域柄過疎化(限界集落)が進んでいるところがポイントとなっている。彼女に寄り添う健気な涼介(息子)はもちろんのこと、2人のキーパーソンである医者の三上と隣人の早川との関りがお互いの成長を促し人生に対する希望を読者が見出すことができる。
とりわけ三上と早川との関係が後半明らかになってゆく過程は感涙ものであって、お互いを思いやる気持ちは素晴らしいの一言であって、人生やはり捨てたもんじゃないと思わせてくれます。作中にでてくる医師が往診の度に貼ってくれる星の形をしたシールの話が印象的です。
作者は本作で生きることを常に肯定しています。本来、死というものは悲しいだけのものであるように考えられがちですが、死を人生のゴールとして捉え、苦しいことだけじゃないということを教えてくれます。思えば星空を見上げる機会も逸してきた人が多いと思われます。
自分自身の死を少しでも尊厳あるものにしたい、本書が読者に与えるものは大きいと思います。
少し深読みし過ぎかもしれませんが、女性読者をメインターゲットとして念頭にに置いて書かれていると考えられる本作、もし主人公に看護師としての資格がなかったら、本当に身勝手な夫とその愛人に翻弄された人生となっていたと思われますので、暗に女性の自立を促している面もあるのでしょうか。
いずれにしても、藤岡作品はいつも心に響きます。
評価9点
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『キラキラ共和国』 小川糸 (幻冬舎)2018.01.01 Monday
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全体を通して前作の各章ごとの風変わりな依頼人に対する手紙というよりも、お馴染みの登場人物たちのそれぞれのサイドストーリーというところが特徴だと言えそうです。
とりわけ鳩子が、亡くなった前妻美雪に対してあらん限りの敬意を表しているところが胸を打たれる。そしてその気持ちが例え血が繋がっていなくても、実の親子以上にQPちゃんに愛情を注いでいるところが、現実的であるかどうかは置いといて、読者に最も伝わってくるのである。
鳩子にとってはミツローさんの奥さんになるよりもQPちゃんのお母さんになることの方がプライオリティーが高かったように私には感じられ、そこが本作の最大の魅力であると思う。
こういうのを“たかが小説、されど小説”と呼ぶのであろうか。
鎌倉の四季の描写は今回も素晴らしく特に小林秀雄と中原中也との鎌倉ならではの逸話や川端康成の手紙など作者の洗練された文章と相まって心にストンと落ちてゆくし、美雪さんへの手紙に涙しそして男爵の容態を気遣う、まさに胸いっぱいの読書となりましが、それは鳩子が先代の教えを少しずつですが理解してきて成長を遂げているのが読者に伝わるからに違いありません。
評価9点
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